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息遣い『僕と彼女の四季巡り』  作者: 珀武真由
15/34

 夏─向日葵

おはようございます。いつもありがとうございます。

 気がつくと花が中心になっているので、違う物に目を向けたいかな……と。

 考察中────

 今回もおつき合いの程よろしくお願いします。

 



 大きく黄色いのを空に向け、我が物顔で咲く。

 ───向日葵。


 母の庭で背を伸ばし咲く向日葵はいつも上を向く。

 しかし夏も終盤。

 もう終わりかと、観念した向日葵(ヤツ)はシュンと顔を垂らせていた。

 

「はいっ、これだけあれば美味しく作れるかな?」

「さぁ、初めてだし種の皮剥きも」

「ああ、皮剥き……面倒だけどやるか」

「えっ?」

「エッ?」


 彼女と僕のあいだに咲く

 ──ひまわり──。


 大きい顔をまっすぐ空に向ける

 向日葵─。


 このひまわりのように互いの顔はきちんと、向き合えてるかな?

 それとも隠した心(タネの重さ)を下げる?


 見せ合う羞恥心(こころ)


「仲良さげやね、熱い。暑い」


 二人向き合い話していると、野次を飛ばす母がいた。母の冷やかしに彼女は照れた。

 僕はくすっと笑み、切った向日葵を数本彼女に見せ開かす。

 枯れている物、黄色い花びらを付けている綺麗な物の両方を。

 咲いている方を彼女に渡すとポカポカと暖かい、微笑みが返ってきた。

 あまりの可愛さに、親の目を盗んでキスをした。


 でも、バレてるだろう。


「じゃ、僕たち帰るよ」

「用事ってひまわり?」

「のタネ。おやつ作り」

「そんなも、市販のがあるじゃろうて」

「ここのが食べたい」

「焼いたら一緒やいね」

「そ? かな」


 僕は、向日葵と彼女を伺う。


 彼女はクスクスと笑っていた。

 庭に母を残し、一緒に手を繋ぎ庭を去る。

 今日は僕が母の庭に咲くひまわりを話をしたら、彼女が


「そんなに生えてるとタネがいっぱいね?」


 と訊ねたから「タネの残りは処分だよ」と。その話からタネのお菓子話が持ち上がった。


 久しぶりに繫ぐ手は少し、ヒンヤリしていた。


 僕は最近、彼女との時間を作る。


 部屋に着き、早速種を洗い始めた。ざらざらとザルの中で音云わすタネはなんだか笑っているような。

 怒っているような……。


 種がなくなった向日葵の額は、不気味だ。


 茶黒く、縁は白く、なんだか生気を無くした人の顔だと思うのはどうしてだろう?


 彼女が爪切りでぷちっと殻に切れ目を入れ、中身を指先でフッと飛ばしていた。


「このタネ剥きって面白いけど疲れそう」

「……」


 彼女の綺麗な指先が黒縞模様を優しく剥いていた。

 真剣な眼差し、真剣な顔。時々、唇はキュッと一文字に結ばれ、呼吸を止めているのか鼻の下がぷくっとなって……。


「かわいい」


 実を剥ぐ彼女の指を絡め捕り、僕は口づけた。入れた舌は欲情のままに彼女に搦めていく。

 

「ン!」


 彼女が僕の胸をトンドンと、慌てて叩くのでびっくりした。唇を離すと彼女の顔は赤面していた。


「……本当に息を止めてたんだ」

「はぁ、ハァ……悪い?」


 涙目の彼女は大きく、小さく、息を小刻みに吸う。深呼吸を繰り返すたび、彼女の胸は大きく、小さく、動いているのが分かり。


 ──かわいい。


「ごめん、我慢出来ない。犯したいんだけど」

「やぁよ。調理は?」

「後でいいんじゃん」


 抵抗する手はタネ剥きで動かしていたにも拘わらず、冷たい。


「冷やっこい」

「ヤッ! ちょっ、なに? 私の手をどこに──」

「どこって」


 顔をしかめる彼女の手は、僕の股間に置かれている。自己主張を示す僕のモノを彼女の綺麗な指に握らせた。

 手は変わらず冷やっこい。


「……いつの間に!」

「我慢出来ず」

「やっ、早くジッパー!」

「え─ヤだよ。もうムリだから」

「ムリじゃない! 上げるの! 隠すの!」


 僕の顔を斜視していたキミがピクリと戸惑い目を瞑る。

 僕は眼前の者に、悪戯を始めた。眺める綺麗な顔は僕の指に歪まされ、上に仰け反り、そして伏せた。

 項垂れた首が向日葵のようだ。

 

(ここ最近、いろんな彼女が楽しくて仕方ない──僕だけがこんな気持ちかな?)


「……ンフッやぁあ。見ないで!」

「カワイイ、良く視えるから見せて?」

「ヤッ!」


 昼と夜とでは彼女にとって、気分も気構えも違うらしい。ふるふると小鹿のように震え、口は更に一文字にギュッと強く結ばれ声を押し殺す。

 感情を押し殺して坐る彼女の姿が僕にはあどけなく、何とも言えない気持ちが込み上がる。


 虐めたくなる表情は艶っぽさを、増していった。


「挑発?」

「もうっ、バカッ馬鹿。ヤダッ続きは?」

「? こっちの」

「違う! 向日葵」

「僕はこっち」


 シンクの上に彼女を置いた。


「夏は布が少なくていいね」

「馬鹿じゃない?」

「ソレばかり云ってる」

「もう、怒るよ!」


 顔をフグのようにプクッとさせた彼女は僕を睨む。


「ハリセンボウだ」

「失礼な!」


 彼女は恥ずかしがるとすぐ、顔が膨らむ。

 怒った時、照れた時、何かに意気込む時、そして今。


「キミはすぐ顔に出る」

「!」

「エッチのしがいがあるよ」

「なっ! それはどういう!!」

 

 僕は文句言う彼女の口を塞いだ。


「好きだよ……」

「!」


 黙る彼女は僕を─抱きしめてくれた。


 僕はキミの寛容さに溺れながら悪いことを考えた。

 彼女の痴態を知るのは僕だけ。

 肌を重ねる最中に向けられる表情、恥ずかしさ、もどかしさ、甘える仕草……。


 すべてが愛おしく、壊したい。


 そんな僕の気持ちは彼女に、伝わってるのかいないのか。

 僕の心は彼女を前にするとたまに黒くなる。


 ああそうか、あの種なしひまわりの顔は僕の(かお)だ。


 嫉妬、溺愛、悦愛、性愛……盲愛。

 自分の都合良い「愛」ばかり押し付けているかも知れないが我慢出来ない。

 僕は今ふと浮かんだ二文字の羅列が恥ずかしいと思いつつ、彼女を心を貪り始めた。


「……ッ!」


 彼女の甘美さ、愉悦な吐息が僕を犯す。

 ひまわりの花言葉も愛が多いが僕の愛はどこへ?

 向かうのだろう。


 静まり返る部屋にちょろちょろと、水の流れる音がする。



 

 お疲れ様です。ご拝読ありがとうございます。

よろしければ感想などお付けいただけると嬉しいです!勉強に励みになります。

 細々と改稿もしてますのでまたご拝読お待ちしてます。

 何か思い出ありませんか?

 もしあったら分けてくださいというお願いは図々しいかな?

 ではまた。

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