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無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine  作者: 田島久護
第一章・引きこもり旅立つ!
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第19話 引きこもり、異世界の若年性引きこもりを説得する

「流石小娘。泣けば済むとでも思っているのか。村を追われたから何だと言うのだ。ドラフトの村やゴブリンの村のみが世界の全てでは無い。現に私は人間ではないが、町に居る。単純にお前が好き好んで引きこもり他者の迷惑を顧みずに居ただけの話だ。誰かと共にと思えば幾らでも出来ただろうに」


 俺はその言葉を聞きながら自分に対して言われているようでおっさんの癖に泣きそうになった……辛い。


「はい、ストーーップ!」


 俺は黒隕剣を腰に差した鞘に納めて強引に二人の間に割って入り話を切る。これ以上やられたら恐らく俺全否定間違いなしだ確実におっさんの心が砕ける間違いなく!


「何の真似だコウ」

「そうだのよぉ! びぇえええん!」


 二人に抗議されるも俺は双方に手のひらを見せ抑える。


「兎に角お終い。止め。お互いが傷つけあうことはない。ていうか俺に飛び火してるから止めて。お願い」

「あ」


 ファニーはそう短く言うと悲しそうに俯いた。どうやら気付いてくれたようだな……スゲー痛いんだけど。ていうかファニーも似たようなもんだろうにちょっとイラッとするんだけどこの子。


「お前名前は?」


 俺はそれを敢えて突っ込まずにゴブリンシャーマンとドラフト族のハーフだという少女に尋ねる。


目を座らせて睨むも可愛らしいだけで迫力が全くないけどまだ元の世界の俺の様に全てを諦めて死ぬのを待っているような目をしてない。まだ助かる。


ジッと見ていると睨みが効かない状況に何故か驚き慌てふためいて近くの木の陰に隠れようとしたので逃がさないよう距離を詰めた。


「なんでお前なんかにアタチの」

「お・な・ま・え・は!?」


 一瞬怯えたが根性を出して再度睨んで来た。俺なんかより根性があるじゃないかと思って嬉しくなったけど今はその扉をこじ開けないとと考え、笑顔で強く言いながら顔を近づけて改めて問う。


それにこれ以上ファニーと気持のぶつけ合いをされたらぶつけられてるの俺だし。


「リムン」

「リムン、俺はコウと言う。悪いが取り敢えずスライムは少し残して討伐させてもらう」


「え!? アタチの」

「それは解っているがこのままだとリムンも多くの人間達に討伐対象とされてしまうしそうすればリムンもスライムも皆消えてしまう。それで良いのか?」


「そ、それは……」

「だから折衷案だ。スライムを全滅させない。自然に居る位の数まで減らす。これで俺たちの依頼は終わる。そしてリムンお前は俺たちと来る。それで終わり」


「ま、待てコウ! そんな事は我は許さん!」

「何でアンタなんかにアタチが!」


「やかましい」


 俺は二人を威嚇するように睨み低い声で言った。ファニーもリムンも少したじろいでくれたので効果があって良かった。


「リムン、俺も人が嫌になって引きこもっていた。そして現在も得意じゃない。おっさんなのに実に情けない話だ。未だに苦手な人と対すると気分が悪くなって相棒のファニーに肩をかりてしまうくらいダメだ。でもな、一人だったら解決しない問題も誰かが居る事でなんとかしなきゃって踏ん張れる。リムンは俺以上に辛い思いをしてきただろう。でも俺と一緒に来れば俺よりマシになる。リムンならまだやり直せる。行こう、俺と一緒に」


 俺はおっさんの情けない実情を吐き出すように語りかけリムンに手を差し出す。


リムンは俺の言葉を聞いて目を丸くした後俯き木にしがみ付きながら少し隠れたが、何度かこちらと地面を見てから恐る恐る手を伸ばす。


彼女も変わりたい脱したい誰かといたいと思っているに違いないと思った俺は、それを迎えに行ってしっかりと握る。


 なるほどリードルシュさんと握手した時と似た状況だ。今回は俺がリードルシュさんの立場になった。それで解る。水臭い。決めたなら怖がらずに手を合わせよう。友達になろうってことなのか、と。そう思うと涙がこぼれる。


「何泣いてるの?」

「嬉しいからさ」


「嬉しくても泣くの?」

「嬉しいから泣くのかもしれない」


 今まで悲しいかったり悔しかったり辛かったりで涙を多く流して来たが、この時ばかりは嬉しくて涙が出た。


生まれて初めて味わう感情に戸惑いながらもリムンの問いに答えながら右袖で涙を拭く。 


「さぁ、リムン。これで契約成立だ。スライムの冥福を祈ってくれ。お前が罪だと感じるなら俺がそれを背負ってやる」

「で、でも……」


「おっさんに任せろ。地獄行は決定なんだ。罪の一つや二つ増えたところで問題無い!」


 こうして俺はスライムを適度なまでの数に減らすべく掃討した。冥福を祈りながらそう遠くない時期に俺も行くだろうから怨むなら俺を恨めよと念じつつ切り伏せる。


 全てが終わり振り向くと機嫌の悪そうなファニーと涙を流しながら手を合わせて祈っているリムンが居た。

引きこもり一人追加だな。俺は剣を鞘に納めると微笑んで二人の元へ戻る。


「あれ……」


 すんなりと終われば流石ヒーローとなるがそこは流石引きこもり。体から力が漏れて行くような感覚がした次の瞬間、暗闇に変わった。

引きこもりのおっさんがカッコつけるから。そんな言葉が聞こえたので文句を言いたかったが声も出せず意識を失う。 

読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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