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無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine  作者: 田島久護
第一章・引きこもり旅立つ!
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第17話 引きこもり、初クエストに挑む

 リードルシュさんから貰った武器を携え俺とファニーは街に入ってきた時の門を出て斜め左へと進む。街の周りは低い芝生が生い茂っており見渡しは良い。不意の襲撃は心配なさそうだ。


 暫くその草原を歩いて行くと民家が幾つか見えてくる。そしてその近くには畑があった。畑に近付くと丁度民家から出てきた人と出会う。


麦藁帽子にこの世界のベーシックな服装である布のシャツにベージュのベストにボトムスを履いていた。足元は膝近くまである黒い革のブーツを履き鍬を持っている。


「どうもこんにちわ」


 俺は何とか普通に声を掛けられて第一関門を突破した。昨日は引きこもりが顔をのぞかせてファニーに完全に頼り切りになってしまったが、寝て起きると少し回復したので胸を撫で下ろす。


少しずつでも回復していき社交的にならないまでも見た目的に年上らしい振る舞いが多少でも出来るように頑張って行こうと気合を入れる。



「ああ、どうも。アンタら冒険者か?」

「はい、ギルドから依頼を受けて参りました」


「助かるよ!」


 声をかけた人は余程困っていたのか鍬を放り投げて俺の手を取り硬く握った。確かに農業で生計を立てているなら畑が荒らされたら困るどころでは無いだろうなと考え解決に向けて気合を入れ直す。


「で、早速ですけどスライムの群れはどの辺りに?」

「ああ、あいつらはこの畑の先へ進んだ森から来るんだ。粘液で森も荒らされているから解ると思う」


 森まで荒らしてるなんて僕みたいな初心者冒険者に出して良い依頼なんだろうか。災害レベルな気がするんだけど。


「毎回こんな感じなんですか?」

「いやいきなりだよ。毎年収穫時期になると多少は居たしそれくらいなら俺たちでも追い払えたが、今回は異常だ」


 なるほど前から居たには居たんだ。ゲームでスライムがうろうろしてるのも案外間違いじゃないのかもしれないな。


スライムってのは何でも食べて増殖するとなるとこれ以上増えたら人間にも被害が及ぶ日もそう遠くない。俺たちで早めに何とかしよう。無理なら直ぐにミレーユさんに報告して対処して貰った方が良い。


「そうですか……解りました。早速向かいます」

「お願いします!」


 最初は気だるそうだった農家の人も別れ際には頭を下げて俺たちを見送った。恐らくスライムの被害でゆっくり眠れもしないんだろうな……何とか対処して安眠出来るよう手を尽くそう。


「気になるの」

「ああ」


 俺たちは畑を踏み荒らさないよう遠回りをしつつ農家の人から聞いた所へ向かう。畑の荒れ方を見ると全てを荒らしている訳では無く妙な削れ方をしている所もあるし、無軌道な感じじゃないのが俺も気になった。


「なぁファニー。スライムってものはいきなり発生するのか?」

「いや、スライムは捕食し成長すると分裂して数を増やす。通常であれば洞窟内を拠点としているが森などにも居る。但し初級冒険者の格好の的なので大体駆逐されて繁殖しようがないのでその数は知れている。何もないところから出てきたか、という問いに関しては我は答える術が無い。千里眼を持っていてもスライムの研究をしようとは思わなかったしの」


 やっぱゲームと似ていて初めて倒すにはもってこいらしい。ファニー曰く強酸と言っても人を溶かすには量と時間が必要で通常そこら辺に居るスライムでは火傷くらいで済むようだ。核を攻撃して割るか燃やしてしまうかで対処可能だと言う。


「そうか。じゃあ質問を変えよう。スライムを意図的に増やす事は可能?」

「それなら可能だ。家畜を飼育するようにな」


「そうなると自然発生的な大量発生という可能性と誰かが意図的に増やした可能性の両方が有り得るよね」

「うむ。確率として高いと思われるのは後者だが」


「とすると目的は街の自給自足の阻害?」

「あるいはあの辺りの農家への嫌がらせか」


 俺たちはあらゆる可能性を考えた。背中から討たれる事も有り得るし細心の注意を払って行動しないといけない。運良く誰かが助けてくれるなんて言うのは期待できないのはこれまでで経験してるし。


「なるほど、これは酷い」


 俺たちは農家の人が言っていた森の入口へ立つ。そこには粘液で荒らされた跡があり、木などは中心部まで削れている物もあった。ただ見た感じスライムは農家へ向かって一直線に進んでいる訳ではないようだ。


「ファニー、スライムっていうのは栄養をどう取るのかな」

「体内に取り込んで溶かせるもので生命のあるものだな。簡単に言えばエネルギーを含んでいる物を取る。なので畑を荒らすのも木を溶かすのも生命力を奪う為には収穫された後ではダメなのだ。息づいている状態での捕食が必要になるの」


「なるほど、スライムって意外に凶暴なんだな」

「まぁな。しかしここまで露骨なのは珍しい。お主も解っているようだがスライム

自体は防御する機能が無いに等しい。なので好戦的に向かってきたりはしない。形作っている表面は刃物などで簡単に傷つき一度傷がつけばそこから内部のものが流れ出し消えていく。回復手段も無い。弱点は言わずと知れた刃物と炎だ。刃物は先に説明した通り、炎はスライムが蒸発するから」


 ファニーの情報を元に考えると明らかに誰かが意図的にスライムを暴れさせて被害を拡大している。その相手はスライムを操れる力があると考えるのが妥当だろう。となると僕らで対処しきれるのか少し不安になってくる。


「やはり気を引き締めて行かないと危ないな。スライムを倒して御終いって感じじゃない」

「だの。ミレーユに他意はないだろうが依頼主には他意があるかもしれん」


 俺とファニーは頷き合った後、慎重に森の奥へと進む。初クエストで簡単なものだと思っていたが、どうもそうではないようだ。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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