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無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine  作者: 田島久護
第一章・引きこもり旅立つ!
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第12話 引きこもり、冒険者ギルドへ行く

「なるほどな。理想と現実が乖離していて絶望し隠遁してると言ったところか」

「まぁなそんなところだ。だがそれも悪くないものだ久しぶりに解る者に逢えてたしな」


 ファニーは店主に対して笑顔で頷く。ファニーも店主と同じような状況になったからあの洞窟に居たのだろうか。まだ会ったばかりだからファニーのこれまでを全く知らない。いつかそれを知った時、彼女にも悪くないと思ってもらえるような旅にしたいものだと思った。


「それは全部持って行け。俺からプレゼントさせてもらおう」

「え!? そんな大事な物を!?」


「剣は使ってこそ意味がある。飾りものでは無い。ただ気がひけると言うなら、服込みで金貨十枚でどうだ?」


 剣ですら凄い代物なのにこの上他の物すらタダでと言うのは俺たちも気が引けるし、これから交流するのに負い目と言うかなんと言うかが出来てしまう。戸惑う俺の態度を見て店主は察してくれたようで金貨十枚と言ってくれた。これが適当なのか安いのか分からないが恐らく店主は安めに言ってくれたのだろう。


残念ながらまだこの世界に来て初めてお金を手に入れたのでその貨幣価値も分からないので


「……有り難く頂きます」


 感謝の気持ちを述べることしか出来ない。外に出て人に触れ会う度に自分の能力の無さや知識の無さにガッカリする。ただ今は心機一転一、ファニーという心強い味方も居るし一から学んで行けば良い。


ダンディスさんや店主と仲良くなればその辺りも教えを乞うことが出来るしまかり間違って偉い立場になれたら知識も人脈も少しでもあった方がマシだろう。折角異世界に来たのだから色々やって見よう。ダメな自分が急に凄くはならないだろうけど外へ出てこうして前に進んでいるのだから。


「ああ、使い込んでやってくれ。剣はお前を裏切らない。お前も剣を裏切らないことだ。それがその剣を使うコツでもある。後交換条件と言ってはなんだが」

「なんでしょう。聞ける事ならなんでも」


「単純だ。偶に見せに来い。剣の具合も気になるしな」

「お安いご用です。旅の資金が出来るまでこの街に留まる予定ですから」


「ほう。なら丁度良いな。ここから斜め向かいに冒険者ギルドがある。そこで登録すれば、仕事がある。今この辺りは魔物が多いからな。腕を磨くにはもってこいだろう。その異質な力を制御する方法を学ぶが良い」

「ありがとうございます!」


 俺は久しぶりに人に対して素直に礼を言った後頭を下げた。初めてはいつだったか。これもまた遠い昔だ。それにしても心の底から感謝をしてその気持ちを込めて頭を下げるのは謝罪をするよりも御腹に力が入り声が出るもんなんだなと思った。


異世界に来てから新しい経験が多くて脳みそが追い付くか心配になってくる。


「さ、この部屋で着替えて冒険者ギルドに行くが良い。あそこは夜になると酒場の色が強くなる。そうなると落ち着いて話など出来ないだろうからな」

「ありがとうございます。あの、聞いても良いですか?」


「何だ?」

「俺はコウと言います。貴方は」


 名を訊ねると店主は眼を見開いた後少し間があってから小さく笑い


「失礼した。あまりに久しぶりの事だった故に、名乗るのを忘れてしまった。俺の名はリードルシュだ。今後とも宜しく、コウ」


 そう言って手を差し出してくれた。俺は恐る恐る手を出すとリードルシュさんは俺の手を握って硬く握手した。俺とファニーは着替え終わるとリードルシュさんに別れを告げて冒険者ギルドへと向かう。


 少し歩いたところにこの町の中でも目立つ大きな煉瓦で出来た建物の看板には


 ”冒険者ギルドへようこそ!”


 と書かれていた。改めて思うが異世界に来て文字も違うのにすんなり読めるのは有り難い。これも力と共に付随した能力なのだろう。力と文字が読める事、話が出来る事の三つ以外に何かあるのだろうか。リードルシュさんに貰った剣は


 ”魔力を膨大に消費される”


と言っていたが俺にも魔力があるのだろうか。


「コウ、中に入らんのか?」

「ああ」


 ぼーっと眺めつつ考えているとファニーから促されて中へと入る。西部劇に出てくる入口に小さな板が左右に付いているウェスタンドアを押して中に入ると、小さなテーブルが幾つも並んでいる飲食店のような雰囲気が広がっていた。人で溢れているのかと思ったが人はいなかった。


「あらいらっしゃい新人さん」


 店の中を見渡していると俺たちの右側から声が掛かる。そちらに視線を向けるとブロンドのウェーブが掛かった長い髪の女性がカウンターに肘をつきつつほほ笑みながらこちらを向いていた。


「あ、ど、どうも」


 その女性はアメリカ人のモデルのようにハッキリとした彫りの深い整った顔立ちをしており、あまりにも美人なので俺の心の中の引きこもりが顔を出し動揺してしまう。


「すまんが、こちらで仕事が頂けると聞いたのだが」


 俺の後ろに居たファニーがずいっと前に出て女性に尋ねた。ホント一人じゃないって良いな助かる! と思って感激した。恐らく足を一回踏まれたのは偶然だろうな。俺がさっさと用件を言わないから焦って前に出た所為だし。


「そうよ。ここは冒険者ギルドですからね。私はミレーユ。貴方達は?」

「あ、お、俺はコウ」


「我はファニーだ」


 俺が名乗り終えるのを待たず若干食い気味で名乗るファニー。そんな様子をミレーユと名乗る女性は小さく笑うとカウンターの下に手を伸ばし、紙を取り出した。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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