おやすみ
ガマニの首根っこを掴み、猫をぶら下げるような形で飛行する。ヒナのすぐ後ろを猛スピードで駆けて来るユエを尻目にテナスのいる方へ向かう。
目前に現れる魔物を勢いで吹き飛ばす。
「危なっ!危ないって!俺に当たる」
「大丈夫。ちゃんとスレスレを狙ってる。」
そういう問題じゃないと叫ぶガマニを無視し、ヒナの出せる最速で飛んでいる。そうしてくれと頼んだのはガマニなのだから、後からの文句は受け付けない。
1分も飛ばないうちにテントが見えてくる。
「キュ――――――――!」
ユキの雄叫びが響き、魔物全てが地面に倒れている。
「テナス!大丈夫だったか!?」
「ああ。ユキのお陰でな」
テナスがユキの首筋を撫でてやり、気持ち良さそうにユキが喉を鳴らす。
「そっちこそ問題なかったか?」
「こっちもヒナのおかげでなんともなかったよ。」
ヒナのいない間にユキが随分とテナスに懐いている。ユキに触れようとするユエの手は全て弾かれているが、テナスが撫でるのはなんの抵抗もせず受け入れている。
少し嫉妬心がわかないこともない。
「リース!リースも無事か!?」
「大丈夫だよ。テントの中で今も寝てる。」
テナスの返事を待たずにガマニがテントに駆け込む。素早く健康チェックし、ホッとした表情を見せる。自然と健康チェックをしてしまうのは職業病的というべきか、性というべきか。
ヒナが覗いているのに気づいたのか、緩みきった顔をしていたガマニがごまかすように咳払いをしながらテントから出てくる。
「あー。その、助かった。ありがとうな。」
「俺からも礼を言う。ありがとう。」
「どういたしまして。」
頭を下げる3人の頭を上げさせる。
「で、今何時?」
「3時すぎ。」
「マジか。あと2時間ちょいしか寝れないじゃん。」
「はい!集合時間の延長を要求します。」
「却下。」
ヒナの嘆きとユエの要求はテナスに秒で拒否された。滅気ずにユエが要求を通そうとするが、力ずくで抑え込まれたので、ヒナも早々に諦めることにした。
「悪いな。時間が押してるんだ。それにリースも早めに診せたい。」
「なら仕方ない。」
「じや、今日はもう解散!」
ユエが勢いよくテントに飛び込み、随時解散になった。
「死体の片付けいいの?」
魔物の死体があちこちに散らばっており、血と内容物の悪臭が漂っている。テントまで来るとマシだが、それでもそこそこは臭う。
「なんとかしたいのが本音だけど、あの数は流石に…な。」
「まあ、それもそっか。テントって中空いてる?」
「いや、4人でいっぱいだ。もしかして、入りたかったか?」
ここから戻るには数分程度だが、そこそこの時間がかかる。入れるならテントで寝たかったのは本当だ。
「まあ、そんなとこ。でもいっぱいならいいよ。外で寝てるし。」
「いやいや、流石に女の子を一人野宿させるのは……。」
「大丈夫大丈夫。ユキにくるまって寝るし。それに慣れてるから。」
「なら、俺が外で寝る。」
「いや、本当に大丈夫だから。テナスは中で寝てて。明日はその分世話になるんだし。」
食い下がらないテナスをなんとか説得し、テントに押し込む。
「はいはい、おやすみー。」
寝る前にもう一仕事だけ終わらしておく。テント周りの死骸だけでもなんとかする。死体の真下の地面を沈降させ、周りを逆に隆起させる。そのまま崩し、完全に埋める。
おかげで完全にとはいかないが、臭いは大分マシになった。
ヒナは大きく伸びをし、テントの側で丸くなっているユキの隙間に飛び込む。
やっと寝れる。寝転んですぐに眠気が襲ってきて、そのままヒナは眠りに落ちた。




