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森探索 ~狐を拾う~

獣……魔獣や聖獣へと進化していない脆弱な動物のこと。


ヒナちゃんとの質問会が終わったところで、森を一通り案内する。

多種多様な植物が生えており、巨木が空を覆っている。

山の中のような感じだが、平野の延長上にあるため、地面はほとんど平らだ。

ヒナでも、移動するのがそれほど苦痛ではない。

道中、小木の陰に猪の魔獣を見かけた。

獣よりも断然大きく、牙に加え、角のようなものも生えている。

確か、パルセリホッグという種族で、魔素濃度の高い地域に生息している。

性格は温厚だが、一度攻撃されると、相手が死ぬか自分が死ぬかのどちらかまで、追いかけ続ける厄介な魔獣でもある。

人間の基準だと、確か――A級の危険度、だったかな?

随分昔のことなので、今がどうなのかは知らん。

子連れのようで、優しい顔をしている。


「ウリボー、かわいい。」


ヒナちゃんが触りたそうにしているが、危険すぎるので止めておく。

あれは、子供についてもめんどくさい特性をもっている。

ヒナちゃんがしゅんとしているが、そこは勘弁してもらおう。


猪の他に鹿や猿のような魔獣も見かけた。

レアな奴も見かけられたので、今日は運が良いのかも知れない。

ちなみに、見かけたのは巨大な蝶だ。生体はほとんどが謎であり、どこに住んでいるのかもいまいちわかっていない。そのうち、捕まえてみようかと思ったが、虫籠もないのでやめておこう。


巨大な蝶に遭遇してから、10分ぐらい進んだころで、狐の子供を見つけた。

純白といえるほど白い体毛に覆われており、雪のようにフワフワした毛先をしている。

足元もおぼつかないようで、生後間もないのはたしかだ。

しかし、周囲に親らしき魔獣はいない。おそらくはぐれたのだろう。

試しに鑑定したところ、驚いた。

その狐の子は"獣"だった。

魔素や神聖気が充満しており、魔獣や聖獣の多いこの森に獣がいることはまずない。

しかも、こんな目立つ珍しい色をしていたら、他の魔獣達の格好の的だ。



「か、か、かわいい…!」


危ない足取りで、駆け寄りヒナちゃんが狐をそっと抱き上げる。子狐は抵抗することなく、抱かれるがままになっている。

ヒナちゃんが優しく撫でる度気持ち良さそうに目を細めている。


「ねえ、この子連れて行っても良い……?」



――グっ、そ、そんな目で見られたらダメと言えないじゃないか!

うるうるした上目使いにやられそうになるが、何とかこらえる。

ユーリン的には連れていきたくない。しかし、ヒナちゃんがこれからもこの森で暮らすなら、遊び仲間ぐらいはいた方が良いし……。

親が生きていれば探しにも来るかもしれないし…。

――多分生きていないんだろうけどな……。


 ヒナちゃんが愛おしそうに抱いている、子狐を今度は干渉権限により確認し、"探知(サーチ)"で親を探す。

上空から見下ろし、反応を探る。

予想通りというべきか、それは結構近くにあった。


 先ほどこの森に獣がいるのは珍しいといった。

先も言った通り、理由は2つある。

 この森では進化が起こりやすいため、すぐに魔獣や聖獣に進化してしまう。

もう一つの理由が、獣は弱すぎるのだ。

この世界において、獣は最弱である。人間にもまともに勝てない。

この森では、すぐに餌になるだけだろう。


 反応のあった場所には、大柄の狐の食い荒らされた無惨な死体が転がっていた。

弱者は淘汰される。これが自然の摂理であるが、時に残酷すぎることもある。

死体の狐はおそらく子狐の母親だろう。出産直後に襲われたというのが妥当なところだ。

土で埋めておいてやり、ヒナちゃんの元に戻る。


「何か、あったの?」


見た通りに伝える気にはなれなかったので適当にぼやかしておく。

この子狐を逃がしても、すぐに飢え死にするだろう。


「その子、連れていって良いわよ。その代わり、あのじいさんには、自分の口で話しなよ。」

「うん!」


嬉しそうに、子狐を撫でているヒナちゃんを見ていると、こちらの気も緩んでくる。

狐の子は疲れたのか、腕の中で心地良さそうに寝ている。

子狐を抱いたヒナちゃんを連れ、浮島まで、折り返すことにした。





神獣のおじいちゃんはまだ、返ってきていなかった。

今のうちに子狐のことをどういうか、考えておこう。

木々の隙間からほんの少しだけ見える、お日様を眺めながら、考えていたら、いつの間にか寝落ちしていた。


「ク~。ンッ、ふっ。ハーア。」


ヒナは日の光で眼が覚めた。

大きく伸びをして、気持ち良い空気を胸一杯に吸い込む。

日はもう沈みかけで、夕暮れ時という言葉がぴったりだ。


「お、起きたかい。」


いつの間にか真横にいた神獣に驚いていたら、良い匂いが漂ってきた。


「良い、におい。」

「そうじゃろう、そうじゃろう。ワシが一番うまいと思っている奴をつかまえてきたからの。」


ユーリンが丸焼きにして持ってきたのは、巨大なマグロだ。

見た目そのままマグロだ。大きさも、日本で見たのとほぼ同じだ。

マグロなら、刺身がよかったなと思ったが、焼いたマグロも空いた腹にはとても美味しかった。

ミカンのような果物ももらい、結構豪華な晩御飯だ。

さすがに食べきれなかったので、明日の朝御飯に持ち越しになった。


「「ごちそうさまでした。」」


「さて、食べ終わってすぐの所で悪いんだけど、今後のことについて、少しだけ話をまとめておこう。」


食べ終わって、散らかったままだがユーリン進行のもと話がはじまった。

しかし、それを遮るようにヒナが喋り出す。

さっき拾った子狐についてだ。


「あ、あのね。その前に、えと、神獣のおじいちゃんにね、話がね……。」

「なんじゃ?落ち着いて話すと良い。」


お、おじいちゃん。ワシおじいちゃん!と興奮していたのが顔にでないように神獣は頑張る。

ユーリンは感づいてるらしく、呆れている。 その間にヒナは深呼吸し、落ち着かせる。


「えとね……こ、この子、飼っても良い?」


子狐をそっと前に出す。

神獣はこの子狐のことは帰ってきたときからずっと気づいていた。

ヒナの横で一緒に寝ており、さっきは図々しくも、魚をモリモリ食っておった。

ユーリンからなにも言われないので、ヒナの口から話がされるのをずっと待っていた。


「ワシは構わん。ユーリンも構わんのじゃろう。?」

「んー、まぁね。」


ヒナの顔が明るくなるが、その前に釘を指しておく。


「ヒナよ、その子を大切に出来るか?死ぬまで愛してやれるか?その子をずっと守ってやれるか?」

生き物を飼うのだから、幼いヒナであろうと、命の責任は持たねばならない。


「うん!」


少し躊躇うかと思ったが即答だった

元気の良い返事が返ってきたので、良しとしよう。嬉しそうなヒナを見てると神獣の顔も緩み出す。


「じゃあ、その子に名前をつけてあげなきゃね。」

「何にするんじゃ?」

「えとね。えとね、この子はね、"ユキ"」

「ほう。良い名じゃないか。どういう理由でユキにしたのじゃ?」

「見た瞬間にね、キレイって思って、まるで雪のようにフワフワで、かわいいから!」

「キュー!」

「ホッホホ。ユキも気に入ってるようだし良かったでないか。」

「うん!」


嬉しそうなユキを撫で回す。

触り心地もかわいさも最高である。

神獣は鼻血を吹かないよう、全力でこらえていた。


ユキについての色々が終わったあと、色々話し合うことになったが、話はまとまらず、もうしばらくかくまってもらうことになった。


そうして、ヒナ達のしばらくじゃない、長い共同生活が始まった。





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