秘密の会話
そういえば、なぜユーリン今日は人型なのだろうか。
いつもなら妖精の姿でふよふよと漂うようにしている。女性型でいることなんてほとんどない。
それを聞こうにもモゴモゴとしか声にならない。
そんなヒナの嘆きを完全に無視し、ユーリンはテナス達と話始める。
「はじめまして、皆さん。私、ユーリンと言います。」
「は、はじめまして。」
テナスが困惑げに挨拶を返す。先程のヒナとの追いかけっこを見ていれば、誰でもユーリンが只者ではないとわかる。
そんなユーリンが何事もなかったかのように話しかけてこれば、少々戸惑うのも当然だ。
ユーリンの容貌も相まっている。
ヒナから見ても今のユーリンは大分美人な見た目をしている。色白で高身長。スタイルも抜群で出ているところは出ており、引っ込む部分はしっかりと引っ込んでいる。
妖美な美しさもありつつ、フットワークの軽そうな、可愛さもある。
男性諸君にとっては話をするのも少々色目が入ってしまうのは当然なのかもしれない。
しかし、ユーリンの美しさは、ヒナにとって何てことはない。ユーリンの性格を知っていれば見た目がどんなに美しくても、そんな目で見るのは絶対に無理だ。
「あなたはヒナさんの保護者ということでよろしいのですか?」
「そうそう。その認識であってるよー。」
「では、何用でしょうか?」
テナスもこの質問の答えは大方わかっている。ヒナが地方都市レルーンに行くことについてだ。
ヒナが行こうと決めた所に現れる保護者。ヒナは許可も取らず家出気分で決めたことが簡単に想像できる。
それでも一応確認しておくほうが安心だ。
「ヒナの家出についてだよ。」
サラリと帰ってくる答えも予想通りだ。
「やはり、ヒナさんの外出を止める趣旨の話ということでよろしいでしょうか?」
「ああ、違う違う。それはもういいよ。最初は止めるつもりだったんだけど、今話したいのはまた別のこと。」
テナスとしてはこれから説得をしなければならないと思うと、骨が折れそうだと覚悟していただけに、ユーリンのあっさりとした了承の返答に拍子抜けだった。
「で、では、そちらの用というのは?」
「それは、またヒナのいないところで。だからその会う日を決めたいんだよねー。」
「わかりました。」
『耳を塞げ』
全員の耳に凛とした声が響き、意思に関係なく手が耳を塞ごうと動き出す。
テナス達が耳を塞ぐ直前にもう一度声が響く。
『ヒナ以外は自由にしろ』
その瞬間からテナス達の体は完全に自由になった。ヒナだけは手がそのまま動き、耳を完全に塞ぐ。
風の音ぐらいは聞こえるが、ユーリンたちの会話は全く聞こえない。恨めしげに睨みつつも、ユーリンには完全に無視された。
せめてもと、モゴモゴと大して響かない嘆きを精一杯に出す。結局それも完全に無視された。
テナス達が一瞬こちらを見たがすぐにそっと目を逸らされた。
そこからは、ぼーっとユーリン達の会話を眺めるだけになった。




