テナス、起床
「おはよう、ガマニ。随分と寝坊してしまった。」
「「テナス!」」
昨日は立っているのもやっとのようだったのに、今ではすっかり元気そうだ。
「もう大丈夫なの?」
「お陰様でな。」
お陰様でとはまた皮肉な。まあ、すっかりよくなたのは良いことだ。
仲良くなった人の仲間を再起不能にしたというのは、少々以上に心苦しい。
そういう意味でもテナスが治ったのは良いことだ。
「ほんとに大丈夫なのか?もう少し休んでたほうが良いぞ。」
「大丈夫だよ。少し体はダルいけど、休む程じゃない。」
「ほんとに、ホントか?」
「本当に本当だから。」
ガマニの心配には一段落着いたらしい。
まだ何か言いたそうだが、それよりも先に面倒くさい横槍が入った。
「テナス、大丈夫なの?まだ寝てたほうがいいよ絶対!」
「ユエ…。今までの俺とガマニの会話は聞いてただろ…。」
「えーと、何喋ってたの?」
この女の耳はきっと飾りなのだろう。
「勘弁してくれ。」
「いやいや!私だってガマニとテナスの話は聞いてたよ。何かモニュモニュ言ってるなーって。話に横槍入れたらいつもは怒るじゃん。だから横で静かにしてだだけであって……。そう、つまり話は聞いてのだよ!」
訂正が必要らしい。
彼女についてないのは耳ではない。脳みそだった。それに加えきっと耳と脳も繋がっていないのだろう。
「ヒナちゃん!今ひどいこと考えたでしょ。顔に全部出てるんだから!」
むむっ。ポーカーフェイスには少々自信がある方なのに。いやはや、馬鹿の前では常識人も平常ではいられないようだ。
常識人らしく振る舞えるようもう少し顔作りの練習もしなければ。
「だから、顔に出てるのよ!顔に!」
……難しい。
「ユエ、ややこしくなるから引っ込もうな。俺も付いてってやるから。一緒にリースの面倒でも見とこうな、な。」
「え、ちょっと。私の話はまだ終わってないよ!」
話は終わっていないの前に、まず何を話していたのだというのか。結局私の顔づくりの問題に触れただけだったではないか。
うるさい奴が離れるのは良いことだ。
やっとテナスと話ができる。
「昨日はすまなかった!心から謝罪させていただく。そちらの建物を勝手に破壊した挙げ句、負けて治療までしてもらった相手に随分とひどいことを言ってしまった。本当に申し訳ない。」
「いいよ、いいよ。それぐらい。実際のところ大して壊れてもないし。あんた達に出会って良いことの方が多かったし。」
本当のところ、今回の出来事は私にとっていいことしかない。
教会(自称)は壊れてないし、対人戦での課題も炙り出せたし、何より前から行きたかった人間国家に行けるのは嬉しい。
きっと、これも何かのご縁なのだ。過ぎてしまったことは気にしても仕方がない。
今更、ブツブツ言うつもりも毛頭ない。
「いや、それでも、我々がしたことはひどいものであるのは事実だ。我々にできる限りでならば何でもしようと思う。どうか謝罪の意として受け取って欲しい。」
「ホントに大丈夫だから。それにガマニにはもうしてもらうこと伝えちゃった。よってこれで、気まずい関係も終了!というわけで、これからはよろしく!」
急な事で追いついていなさそうだが、私が伝えたいことは伝えたし、貸し借りもなくなった。
後は私の差し出した手を握り返してくれるかどうかだ。
嬉しい限りかな。私の手はしっかりと握り返して貰えた。
「少し話に追いつけていないが、こちらからも、これからはよろしく頼む。」
昨日のような陰鬱で辛そうなな顔はもうない。
剣士らしい、爽やかな顔だ。こちらの顔のほうがテナスには断然似合いそうだ。
余談だが、テナスの手は、とてもゴツゴツしていた。剣を極めるとこうなるのかな…。女の子としてはできるだけ滑らかな手でいたい。
剣、やめよっかな。
詳しいことはガマニに聞いてと、これからどうするかの詳細も決まったらまた教えるようとだけ伝え、一旦教会に帰った。
そういえば、朝食を食べていなかった。
お腹は少々寂しいが、今から食べるのも遅すぎる。
お昼までは我慢するとして、吹き飛んだ土だけでも直しておくことにする。
一度決めたら即行動だ。時間は有限なのだ。
作業着に着替え、スコップを装備。軍手を装着し、適量の水分とタオルを手にいざ土をどける。
面倒くさいが、教会関係のことには魔法は使わない。一度使うと後々もそうしてしまいそうになる。それほどに魔法は便利だ。
だからこそ使わない。
一度使わないと決めたのだから、それは最後まで押し通してこそだ。
真夏日も終わり、少しずつ涼しくなっているらしいが、そのような感じは全くと言っていいほどない。
いい汗を流せると思えば儲けものか。
取り敢えず、頑張るぞー!オー!




