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決着と友情?

 「"第2回戦(セカンドステージ)だ!"」


 フォーメーションを組む3人を尻目に上空へと浮遊する。


 剣士では上空の私には攻撃できない。それに魔法使いも魔素が枯渇した状況ではまともな魔法は使えない。

 防衛による攻撃など論外だ。


 余裕ぶって殺られましたでは話にならない。卑怯だろうとなんだろうと勝つ。


 「第31階位 超重力(グラビティ)!」


 3人を中心とした重力空間が押し潰す。

しばらくはまともに動けない。

私の魔法もすぐに霧散する。


 「超重力!超重力!超重力!!」


 霧散するタイミングで連続して放ち続ける。


 魔法使いを中心に下方向から猛烈な風が吹き出す。ヒナの重力魔法とつり合うように風が吹き出したせいで3人の行動が幾分か自由になってしまった。

 それでも3人にとてつもない力がかかっているのは間違いない。

 

 重力空間から脱出される瞬間に巨大な氷壁を出現させ、行く手を遮る。


 「第14階位 氷凍飛槍(アイシクルスピア)!」


 ガマニと呼ばれた男が3人を氷槍から守るように盾を構える。

 その瞬間は3人が1つにまとまる。そこを狙い炎の砲撃を打ち込む。


 「第16階位 砲炎(フラム)!」


 ガマニの構える盾に直撃し、爆風と熱風が吹き荒れる。

 爆風に合わせ3人の元に強風を吹かす。

 盾が下からの風圧により浮遊感とともに浮き上がる。


 「第23階位 氷塔(アイストゥール)!」


 氷の塔を瞬間的に出現させ、そのまま盾を跳ね上げる。


 3人の防御は完全になくなった。


 「第8階位 火球(ファイアーボール)!」

 「火球!火球!火球!火球!火球!火球!」


 大量に飛来する火球に一瞬面食らったが難なく避ける。

 これで魔法使いの魔素もほぼ枯渇したはずだ。

 そんな打算をしていたのも束の間、剣撃が飛来し、その直後剣士の男が眼前に現れた。

 はじめの剣撃はなんてことは無かったが、これはヒナも全く予想していなかった。

 

瞬時に風魔法を放ち距離を取ろうとしたが、それよりも速く剣が振るわれる。

 胸から腹にかけて男の剣が掠った。


 「外した!?」

 

 傷は大して深くないが、痛いものは痛い。真っ赤な血が漆黒の服に更に黒い染みを作る。


 しかし痛いからといって動きを止めるわけにはいかない。

 

 距離を一気に詰め、重力をフル活用し剣士を地面に叩き落とす。

 その瞬間に魔法を放つことも忘れない。


 「第31階位 超重力(グラビティ)!!」


 剣士の落下が一気に加速し、勢い良く地面に叩きつけられる。

 砂埃が舞う中、剣士の男は完全に沈黙した。


 「第27階位 氷壁(アイスウォール)!」


 何か叫んでいるガマニを顔だけ残し氷漬けにする。

 判断を誤って剣士の男に駆け寄った時点で終わりだ。

 固定したガマニは放置し、すぐに魔法使いに向かう。


 魔素の枯渇した魔法使いはただの”人"だ。殺すまでもない。

 ガマニと同じように氷漬けにしてやる。


 魔法を構築した瞬間、魔法使いの女が動いた。魔法使いらしくない俊敏な動きでヒナに急接近する。

 

 魔法の構築中ははっきりいって無防備だ。

完全に油断していた。そのまま抱きつかれ魔法使いの体が熱を帯びだす。

 

 皮膚がチリチリと痛み出し、赤く腫れ始める。


魔法使いの体から一気に爆風が吹き出し、衝撃で体が吹き飛びそうになる。


 爆風が晴れたあとは、流石のヒナも傷だらけだ。

魔法使いの女に至っては、四肢こそ無事だが明らかに重症だ。


 まだこれ程の魔力が残っているとは思ってもいなかった。

 やはり最後まで油断してはいけない。


 痛む体を動かし、ユキの方を確認する。


 ユキの方も今しがた決着がついたらしく、もう一人いた女が地面に伸びている。


 薄っすらとだが背中が動いている。死んではいない。


 ユキも傷だらけで、純白の毛皮に赤い染みが点々と広がっている。


 ヒナを確認するや女を咥え駆け寄ってくる。


 氷漬けになっているガマニの横に投げ出す。


 「おい!テナス、リース、ユエ!クソ!出せ!!この氷を解いてくれ。このままじゃあいつらが死んじまう!」

 

 倒れている3人はまだ生きている。しかし死にかけなのは間違いない。

 特に魔法使いの女は放っておけば間違いなく死ぬ。


 「やだ。」


 それでも、何をするかわからないこの男を解放することはできない。


 「頼む!頼むよ!治療するだけだ。その後、俺をどうしても構わないから、頼む!出してくれ!」


 半ば発狂するように懇願している。


 "あゝ我らが主よ 汝の導きにより 我ら同胞を救わんと欲す 我らが命 主に尽くさんとす 汝の寵愛をもって我らが命救い給え"


          "ヒール"


 魔法使いの体が淡くひかり、全身が痙攣する。とてつもない苦痛に耐えるが如く、女の顔が歪み、体が軋む音が響く。


 「おい、リース!大丈夫か!おい!」


 しかし、それもすぐに収まり、呼吸が落ち着き始めた。胸も上下にゆっくりと動き出した。


 全身は依然傷だらけだが、致命傷となった傷だけはほとんど癒えている。

 

 ヒナが使ったのは治療魔術だ。リーベ程上手くないため中途半端なものしかできないが、リースと呼ばれた女の一命は取り留めた。


 「これで、満足?」

 

 「……すまない。感謝する。」


 ガマニはしばらく驚愕していたが、潔く感謝した。

 その態度には好感が持てる。


 「……不躾な願いなんだが、他の2人も治してやってくれないか?」

 「無理。そんな連発して使えない。」


 連発して使えないのは事実だが、あの2人を治すぐらいならできる。

 しかし、治して殺られましたでは本末転倒だ。別にあの2人は治さなくても死なない。


 「そ、そうか。――1つ聞いてもいいか?」


 顎で続きを促す。


 「――あんたは何者(ダレ)なんだ?」


 「あの建物の持ち主。」

 

 「そうか…。勝手に爆破して、すまない。」

 「いいよ。別に壊れてないし。」


 さっきまで殺し合いをしてただけ会話が続かない。


 「じゃあ、私から質問。何しに来たの?」

 「俺たちは冒険者っつって、依頼を受けてそれをこなすのが仕事だ。その依頼がこの建物の調査、及び破壊だった。それだけだ。」

 「調査したの?」

 

 ガマニは一瞬呆けていたが、すぐに元に戻った。

 「いや、してないぞ。異常な量のスライムのせいで調査はできてない。」


 「!?!?スライム!!」


 今まで初めての人間に初めての対人戦で、完全に忘れていた。


 あそこにはヒナになついていたスライム達がいる。あの爆発の規模では全員が蒸発してしまっているかもしれない。


 氷漬けのガマニを放置し、急いで教会に駆け戻る。 


 しかし、蒸発していたかもという心配は杞憂に終わった。

 教会中央に一匹のスライムがのほほんと揺れている。


 ヒナを見つけるやすぐに跳ね寄ってくる。勢いそのままスライムを抱きしめる。


 ひんやりしていて気持ちいい。傷口には少し染みるが全くもって構わない。

 ヒナの頬を撫でるようにすり寄ってくる。

  ういやつめ〜♪


 そのまましばらくスライムを堪能する。


 スライムを胸に抱え、氷漬けのガマニの元へ戻る。


 ガマニの元に着いた瞬間、少しずつスライムが分解を始めた。

 一匹が2匹に、2匹が4匹に。数分ごとに2の累乗分スライムが増えていく。


 もちろん最初の一匹は抱いたままだ。

 ヒナの腕から零れ落ちるようにスライムが増えていく。


 見ているガマニの顔は血の気が引いていっている。

低体温症とかで死ななきゃ良いんだけど…。


 「おい。あんたガマニで合ってる?」

 

 「は、はい、あってます。私がガマニです。」


 正気を取り戻しきっていないのかさっきまでタメ口だったくせに、今は敬語だ。


 「タメ口でいいよ。」

 「はい!かしこまりました。」


 ダメそうだ。


 「あんた達って、人間なんでしょ?どっちの国から来たの?」

 「レニオスから来ました!」

 「だからどっちよ。平野から見て右?左?」

 「左です!」

 「左!本当に左なのね!」

 「はい。ひ、左です!」


 やったわ!ガマニ達を上手く使えば念願の人間国家に入国できるかもしれない。


 なんで左の国が良いかと言うと簡単だ。ユーリン曰く、左のデカい方の国の方が豊か!金持ち!飯が旨い!

 それだけだ。


 「ねぇ、左の国から来たんでしょ?そこまで私を連れてってよ!約束してくれたら、他の仲間も治すし!」 

 「え…。いや、ちょっと待ってくれ。仲間の怪我を治して貰えるのはありがたいんだが、あんたを入国させれるかはいまいち分からない。」

 

 「――え…。」


 「い、いやその、そんな悲しい顔しないでくれ。俺らの国は入国するには身分証がいるんだよ。なければ入れてもらえない。あんた、持って…ないだろ?」 


 よっぽど顔に出てしまっていたようだ。相手に色々悟られるのは本来よろしくない。以後気をつけなければ。


 それよりもだ。確かに私は身分証なんて持っていない。

 森と平野から出たことないし。


 「あ!私を保護したとか言って、中に入れてもらうことはできない?」

 

 我ながら稚拙すぎる案だが、いけるとしたら儲けものだ。

 まあ、これでいけるとしたら国境警備はザルだろう。


 「いけるかどうかはわかんないが、俺的にはいける…と思う。うちの警備甘いし。」

 「マジ?」

 「ま、マジだ。」

 「ほんとにほんと?それで捕まるとか嫌だよ?」

 「ホントだ。うちの警備はザルだ。身分証があって、危険物さえ持ってなければ通して貰える。それに、あんた子供だろ?多分疑われない…ぞ?」


 最後の一言は余計だ。私を餓鬼と言いたいのか!

 これでも私は16歳!もう少しで17だ!


 はッ!また顔に出てしまっていた。ガマニの顔は真っ青だ。


 「ゴホンッ。で、ガマにくん。連れてってくれるかな?」

 「はい、ガマニです!あなたを届けてみせます!」


 意外とノリの良いやつだ。いつの間にかなくなっていた敬語が元に戻っている。


 私は気にならないが、さっきまで殺し合っていたことを気にしていないのだろうか?


 「ねぇ、私のこと恨んでないの?さっきまであんた達のこと殺そうとしてたんだよ?」

 「ん?それもあるが、リースの怪我、治してくれたじゃないか。」

 「いや、その大怪我させたの私だけど。」

 「それはしゃーねーよ。俺達も冒険者っつう職業で、殺す殺されるが基本だ。最後に助けて貰えたなら、俺はそいつを信頼する。それだけさ。」

 「あんた、いつか騙されるよ。」

 「ハハハ! かもな。まあ、騙された時はそん時また考えるさ!」


 ガマニの性格は嫌いじゃない。良い人柄をしている。

 私もこいつを少し信じてみよう。

 拘束していた氷を全部溶いてやる。


 体の自由を取り戻したガマニは思いっきり伸びをして体をほぐす。



 「あ、そうだ。俺のことはガマニって呼んでくれ。」


 屈託のない良い笑顔をしている。

 なら、私も少しは応えなければ。


 「わかった、ガマニ。私はヒナ。普通にヒナって呼んでくれて良い。それと、私は16歳よ。」




 「マジ?」

 「本当よ。ぴちぴちの16歳。」

 「――マジか。」


 「まあ、取り敢えずよろしく!」

 「こちらこそ。」


 差し出された手をしっかりと握りかえす。

 形式的なものではない、心からの握手だ。


 友人になれたみたいでとてもほっこりしたのはヒナの中だけの秘密だ。


 




 


 





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