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ヒナvs新星

 一瞬の光耀の後に、遅れて爆音と爆風が轟く。


 地面が一瞬にして抉り取られ、巨大樹が粉砕されていく。

 空にはキノコ雲が登り、木々焼ける匂いと熱風が依然吹き付ける。

 結構な距離を取っていたテナスたちにまで衝撃が届いた。


 砂埃と爆煙で対象がどうなったのかはわからない。

 それでも予想はつく。間違いなく、()()()()だ。

 それよりもリースだ。


 「おい!リース!!なんて、魔法を打ち込んでんだ!大破壊だぞ!大・破・壊!」

 爆発の衝撃から立ち直ったガマニがテナスより先に、糾弾していた。


 「そうだぞ、リース。いくらなんでもやりすぎだ。」

 「気持ち良かったでしょ?」

 「…お前、まさかさっきの魔法打ちたかっただけじゃないだろうな。」

 「ん、な、何のことかしら?」

 「とぼけてんじゃねーぞ!お前、あんな爆発させといて!打ってみたかっただけとか!」

 「ムー!仕方ないじゃない!こんな時にしかあの魔法打てないんだから!良かったでしょ!良い爆発だったでしょ!」

 「開き直りやがった!威力だけは抜群だけどな、後処理どうすんだよ!」

 「――任せた!」

 「任されてたまるか!」

 「ガマニ、一旦それぐらいにしとけ。」

 

 不満爆発している、ガマニをそこいらで止めておく。

 過剰なのは確かだが、リースのおかげで、破壊できたのもまた、事実だ。


 「リースって、超位魔法打てたんだね!?」

 「ああ、そうだ!ユエの言うとおりだ!お前、いつ超位魔法なんて覚えたんだ?」

 「ちょっと前よ、ちょっと前。ひょんなことから、魔法の構築の仕方を知ったのよ。試したくなるのもわかるでしょ?」

 「ムッ…。だ、だが、それでも…いや、わからなくも、ないか。」

 

 おい、そこは流されちゃ駄目だろ。


 テナスもリースが超位魔法を使えることは知らなかった。その、ひょんなことが気になるところだ。


 「で、なんでリースは寝てるの?」

 「…魔素、空っぽなの。」

 「…動けない?と…?」

 「まぁ、つまりはそういうことね。」

 「バカ野郎!平野のど真ん中で自ら動けなくなりに行く馬鹿がどこにいるんだよ!」

 「私のこと馬鹿って言ったわね!私は天才的魔法使いよ!取り消しなさい!私は馬鹿じゃなくて、天才よ!」

 「馬鹿と天才は紙一重ってか?間違いなく、お前は馬鹿だ!」

 「バカバカ言うな!」

 「ストーップ!そこまで。取り敢えず、一応、破壊の確認と後処理に行くぞ!」


 リースとガマニのしょうもない言い合いはまた今度にしてもらい、さっさと調査依頼を完遂しに行く。

 爆発の余波もほとんどなくなったが、爆煙のせいで、ここからでははっきりと見えない。


 「ガマニ、リースをおぶってやってくれ。」

 「嫌よ!私を馬鹿っていう奴におぶられたくないわ!」

 「おぶってやるだけ感謝しろ。」

 

 リースとガマニの喧嘩を止めるのはもう諦めた。

 ガマニの顔が緩んでいるのは今は言わないでおこう。


 先頭をテナス、後ろにユエが立つようにして、神獣の森の入り口まで向かう。



 余裕を持って進んでいた新星(ニュービー)だっが、目的地に着いた瞬間、彼らの余裕は霧のごとく霧散した。

 そこには、()()()()()()()()()()()()()()()

 驚愕したのも束の間、後方から暴風がテナスを襲い、前方に吹き飛ばされる。


 わけもわからず、混乱がテナス達を襲うが、受け身を取りすぐさま立ち上がる。

 暴風により、全員が孤立する状態にされた。

警戒を強めつつ速やかに集合を試みる。暴風とともに砂塵が吹き上げられ、視界が悪化する。

 歩を緩め、突発的な攻撃に備えた瞬間、鋭い剣筋がテナスを掠めた。

 ほとんど勘で体を倒したのが功を奏した。あと少し遅れていれば、間違いなく串刺しだった。

 態勢を立て直し、再び襲いかかる剣撃をなんとかいなす。


 砂塵が落ち着き、視界が開けていく。

 しかし、それに合わせるようにテナスへの猛攻は激しさを増していく。

 これ以上は流石にいなしきれない。

力を込め、一瞬相手の剣を弾く。その隙に距離を取り、ユエ達の安否を確認する。

 複数に襲われていれば、ユエ達では太刀打ちできない。

 ユエはかなりの距離を飛ばされたらしく、急ぎ足で駆けてくるのが見えた。

 しかし、ガマニを確認しようとした瞬間またも衝撃がテナスを襲う。

 体を回転させることで衝撃を流し、次の攻撃に意識を向ける。


 


 そして、テナスは目にも止まらぬ速さで剣をつきだす敵を捉えた。

 見切ったテナスは最小の動きで躱し、カウンターを叩き込む。

 しかし、小柄な体を活かし、サラリと避けられた。


 猛攻を仕掛けてくる正体は小さな()()だった。

 



 ――数分前 in神獣の森海岸


 ヒナはユキと一緒に足りなくなった、超魔希鉱石の補充をしていた。パルセノシェルを浜までおびき出し、今はせっせと貝殻を切り取っている。

 ユキは飽きてしまったのか、浅瀬の魚を追いかけ遊んでいる。

 私も遊びたい!

しかし、途中で止めたら、貝殻の切断を1から始めることになるので今は我慢する。

 これが終わったら絶対に遊んでやると、ペースを上げてどんどん貝殻を切断していく。


 しかし、そんな時だった。一瞬、光耀がヒナの視界に映った。

 結構な時間の後に、平野の方角から、爆発音が響き、地面が小刻みに揺れた。

 浜から平野までは結構な距離がある。

 ここまで届くとなると相当にでかい爆発であることは間違いない。

 ゆっくりと空に小規模ながらキノコ雲が登っているのが見える。


 ユキも魚を追い回すことはやめている。毛を逆立て、爆音が響いた方向に警戒を向けている。


 光が見えてから、約270秒。平野からこの浜辺までがおよそ100kmだ。

 神獣の森内または、平野の入り口付近での爆発だ。リーベのような考えの奴が私の教会を破壊しようとしたのかもしれない。


 しかし、自分の目で確認してみない限り、何もわからない。

 おおよその位置は分かっているなら、行ってみるに限る。

 

 教会付近の座標を記憶から引っ張り出し、転移魔法の術式に代入する。ヒナが何をするかを悟ったのか、ユキが小狐化し、ヒナに飛びつく。

 小狐化したユキを頭に乗せ、転移を発動する。


 予想通り爆発がおきた位置から、大分距離を取った位置に転移できた。


 辺りは爆発による砂塵で未だ視界が悪い。

巨大樹に跳び乗り、体を葉で隠す。

 平野を見渡し、3つの動く点を見つけた。

大きさ的に魔物ではない。この距離でははっきりとは見えない。

 幸いにもヒナには気づいていない。気づかれないように巨大樹のすぐ脇に転移し、隠れたのだから当然といば当然だが、気づかれてないなら、もう少しゆっくりしていられる。


 爆発源に向かっているようで、少しずつ、ヒナとの距離も詰まっていく。

 

 3つの点の正体がわかった。

 3人の人間だった。魔素量的に人化した魔物でもない。

 

 こういう時鑑定で相手のスキルとかを把握できると楽なのだが、鑑定はそこまで便利じゃない。

 何もなしでわかるのは種族名と個体名、そして年齢ぐらいだ。

 一度自分で学習し、認知したものしか鑑定は行われない。ひどいときは表示に『草』や『虫』とだけ表示されることもある。


 瞬間記憶を持つ私に鑑定はあまり使い道がない。

 固有能力があるかないかを知るぐらいにしか使えない。

 あと、鑑定してることがされてる側にバレる。これは鑑定最大のデメリットだ。ホント、改善でもしてほしい。


 鑑定に文句を言っても仕方がない。

 自分の目で見て判断するしかない。

 

 先頭を進むのが剣士、おぶられているのがあの爆発を打った魔術師だろう。一人魔素量が極端に減っていた。

 おぶっているのは防御。もうひとりはよくわからない。重装備をしておらず、身軽な格好をしていた。しかし、腰回りにはナイフなど結構な数の武器をぶら下げている。


 何が目的かは気になるところだが、私の教会を爆発させたとはそういうことだ。

 リーベの時とは訳が違う。

組織的な意図があってのことだと考えるのが妥当だ。つまり、敵だ。動きを止めて拘束できればラッキー。無理なら殺す。

 自分の物を破壊され、神獣の森へ入られるようなことは許せない。

 

 魔法使いが動けないのは、ヒナにとって好都合だ。

防御もほとんど動けないだろう。

 剣士さえ、抑え込めればやりようはある。


 「キュッキュー。」


 ユキに控えめに頭を叩かれた。

よくわからなかった女に対し、足先を向け、任せろというように胸を叩いている。


 「じゃあ、あの女はユキに任せた!何かあったらすぐに逃げてよ。」

 「キュー!!」


 ユキの返事と同時に巨大樹から飛び出し、4人の背後に回る。


 すぐさま風魔法を放ち、分散させる。

一人ずつなら充分に対処できる。風魔法が直撃すると同時に粉塵が舞い散る。

 うまく相手の視界を妨げられた。

ユキもヒナの頭を離れ、元の狐に戻っている。大回りに駆け抜け、起き上がった女の背後に気づかれないまま駆け寄っていった。


 ヒナも剣士に意識を集中させる。

立ち直った剣士に突きを繰り出す。一撃で仕留めるつもりだったが、寸のところで躱された。


 避けられるとは思っていなかったため驚いたが、すぐさま思考を戻し、剣撃を放つ。

 しかし、今回もギリギリのところで器用にいなされる。

 予想してはいたことだが、いなされる内に一瞬ヒナの剣が弾かれた。

 力の差で、相手に力を込められればヒナでは簡単に弾かれる。

 すぐに距離を取り、剣の代わりに魔法を打つ。剣士は魔法を直撃したものの、すぐに態勢を整えた。


 予想よりも早く態勢を直されたせいで、ヒナの突きにも容易に反応された。

 そこから繰り出されるカウンターを体を丸め、スレスレで躱す。

 回転させた勢いを使い、そのまま切りかかった。


 今回も手応えはなかった。

剣技は相手の方が少し上だ。ならば手段を選んではいられない。

 誘惑眼(マドワスモノ)を威力全開にし、相手の動きの隙を狙う。

 

 だが、流石は剣士。精神(メンタル)の訓練も完璧らしい。効果があるようには全く見えない。


 効かないとわかれば、使う意味はない。

 誘惑眼の出力を下げ、意図的に距離を置く。


 剣士の男が詰め寄ってくるまでの間に背負っていた剣を代わりに抜き放つ。

 使っていた剣は放り捨てた。


 ヒナがいきなり剣を交換したため、いきなり切りかかっては来なかった。


 両者共に出方を観察するために動かない。

 沈黙を先に破ったのはヒナだ。自分の間合いまで一瞬で近づき、斜め下から斬り上げる。

 しかし、相手も柔軟に対応してくる。刃を横にズラされた瞬間、至近距離から風魔法を放つ。

 吹っ飛んだものの、すぐに態勢を直され、詰め寄ってくる。


 わざわざ、相手の土俵で戦う必要はない。

 距離を詰められる前に魔法で応戦する。

 足元を氷漬けにし、動きを一時停止させる。すぐに剣の柄で叩き割り、自由を確保されたが、その一瞬で充分だ。


「第14階位 氷凍飛槍(アイシクルスピア)!」


 大量の氷の槍が剣士を襲う。剣で徹底的に叩き落とされようとも、すべてを弾くことはできない。


 足元の方から切り傷が増えていく。

 

 氷槍を叩き落としている間は剣士の男はまともに動けない。

 ならばその隙をつこうじゃないか。

 氷槍を放ちつつ、新しい魔法を構築する。


 「第21階位 斬撃(スラッシュ)!」


 打つ直前に足元を凍結させておいた。この一瞬では避けることはできない。間違いなく真っ二つだ。


 しかし、剣士から血が吹き出ることはなかった。

代わりに、巨大な盾が火花を上げつつも斬撃(スラッシュ)を完全に受け止めている。


 「ガマニ!」

 「テナス!さっさと足の氷を砕いて逃げろ。俺の盾だって完璧じゃねぇ!そのうち壊れる!」

 「すまない、助かった!」

 「いいってことよ!」


 剣士の男はテナスと言うらしい。腹立たしくも私の魔法を完全に抑えている男はガマニというそうだ。


 テナスが氷を叩き割ると同時に、ガマニもわざわざ受け止めることはやめ、横っ飛びで避ける。


 敵が2人に増えた。

――いや、3人だ!

 


 ヒナの横っ面に向けて、巨大な火球が飛翔する。


 すぐさま、氷の壁を出現させる。

 火球は氷壁の一部は砕いたがそれだけだった。


 「リース!もう大丈夫なのか?!」

 「緊急用の魔素増幅薬(ポーション)を飲んだのよ!長くは持たないけど、しばらくの間ならまともに戦えるわ!」


 3人で隙の小さいフォーメーションを取っている。

1対3は不利すぎる。

 使える手はなんだって使っていこう。


 背中の羽を解放する。

 ヒナの背中から漆黒の羽が現れる。

 黒い瘴気放ちつつ、もうスピードで魔素が吸収されていく。代わりにヒナの魔素量は膨大なものになっていく。


 さあ、第2回戦(セカンドステージ)だ。

 

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