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教会

2日目は、スライム以外滞りなく進むことが出来た。

しかし、スライムの足止めのせいで、結局、予定していた場所までは進めていなかった。


2日目も相変わらず合唱を続ける虫共のせいで、まともに寝ることはできなかった。


憂鬱な朝をなんとか乗り越え、今は曇り空のもと、重い足を軽くしようと進みつづける。


「ねえ、まだつかないの?」

「まだまだだ。巨大樹さえ、見えてないしな。」

「もう、足だるいんだけど…。」


リースの文句も仕方がないものだ。

睡眠時間は少なく、昼の間は歩き続ける。退屈かつしんどい。嫌になってくる。


「まあ、もう少し頑張れ。巨大樹は見えてないが、そこまで距離はないはずだ。」

「休憩!休憩を要求するわ!」

「もうちょい、頑張れって…。」

「嫌よ!もう、無理。私一人でも休む!」


リースがその場に大の字に寝転がり、いやいやと、立ち上がろうとしない。

どこにそんな力があるのか、草にしがみつき、ガマニが引いても全く動かない。


「ちょっ、ガキかお前!それに、単独行動なんて自殺行為だっつーの。もうちょっと進んだら着くかもしんねーんだから、少しは頑張れって。」

「私は休憩にさんせーい!」


しかし、ガマニの訴え虚しく休憩賛成者が出た。


「おい、ユエ…。」


ガマニ同様、テナスとしてはもう少し進んでおきたいところだが、自分達が疲労困憊なのも事実だ。


それに、リースが欠ければ、戦闘が大分苦しくなる。

置いていくという選択肢はないし、諦めて休むしかないということだ。


「仕方ない、ガマニ。皆休憩にしよう。1時間後出発だ。」

「了解~!」


女性陣のいい返事とは真逆で、ガマニは意気消沈している。

休憩となればすることは決まっている。ユエにある程度の見張りを任せ、テナス達は寝る。

そう、ひたすらに寝るのだ。

この一時間を決して無駄にしてはいけない。



 しかし、そんな貴重な睡眠時間も、一時間を経たずして終了を迎える。


 体を揺らされる感覚と共に、ぼんやりとユエの呼ぶ声が聞こえる。


 「おーい、テナス。起きて。」


――もう少し寝ていたい。


 「テナス、起きてってば。」


――あと1分、あと1分でいいから。


 「起きろ!!」


 お尻に強烈な衝撃を感じると同時に、猛烈な浮遊感がテナスを襲う。

 下を見れば気持ちよさそうに寝ているガマニが見えた。


 結構な時間浮いていたように感じたが、重力のままに、テナスの体はすぐに地面に叩きつけられる。


――痛い。


 痛む体を起こし、全身の土汚れを丁寧に落とす。

 もう少し優しく起こしてほしかった。


 「一回で起きないテナスが悪い。」


 エスパーか、と言いたくなるようなタイミングでユエが指摘する。

 文句の一つでも言ってやりたかったが、ユエが正しいので、今はやめておく。

 その代わりにと同じようにしてガマニを蹴り起こした。


 少し力を入れすぎた。予想を遥かに越えてガマニが空を舞った。

 しかし、流石我がパーティーの防御(タンク)。テナスよりも激しく地面に叩きつけられたにも関わらずケロリとしている。

 すぐに起き上がりテナスに突っ掛かってくる。


 「おい、テナス!痛ーじゃねーか!優しく起こせよ!優しく!」

 

 まぁまぁとガマニをなんとか宥める。

 憂さ晴らしに蹴った、なんて言ったら後で何されるか分かったもんじゃない。


 「で、なんで起こしたんだよ。まだ一時間は経ってねぇーぞ。」

 「そうそう。忘れてた。ユエ、何かあったのか?」


 理由もなく起こしてんなよ!と射殺せそうな目で睨まれているが、そこはなんとかスルーする。


 「えーとね、えー……、なんだっけ?」

 「マジで理由もなく起こしてんじゃねーよ!」

 「あ、思い出した思い出したよ!」


 おふざけでもなく本当に忘れていたようだ。


 「薄っすらだけどね、霧が出てきた。」 


 ユエに言われるまで気づかなかったが、たしかに薄っすらと霧が出ている。


 あと、数十分もすればここいら全体を霧が覆うだろう。


 「霧か…。たしかにおめおめ熟睡なんてことはしてられないな。」

 「すぐ移動するか?」

 「その方が良いだろうな。」


 普通なら視界が悪くなる中移動をするなんて愚策だ。

 しかし、このアルセイト平野においては話が変わってくる。

 ここの霧は動かない。


 ある場所で霧が発生すれば、その場所に1日近く、霧は発生し続ける。昼だろうと発生し消えない。

 風で流されたりもしない。

 そのため、晴れるまでじっとしているよりは、濃くなる前にその場を離れるのが得策なのだ。


 そういう意味ではいち早く気づいてくれたユエには感謝するべきだ。


 「おい、リース。起きろ。もう出発するぞ。」

 「ウ~ン。ハッ!私が男に起こされよう日が来るとは!好き!結婚して!」


 おそらくリースは寝ぼけている。

 飛びつかれたガマニは困惑しつつも、満更でもない顔をしている。

 抱きしめるべきか、離れさせるべきか、行き場のない腕があたふたとしている。


 そんなガマニの気も知らず、完全に目が覚めたリースは、ガマニに抱きついていることに落胆し、盛大に溜息をついている。


 「なんで、なんでガマニなんかなのよ。こういうときは爽やかなイケメンが目覚めのキスをしてくれるところでしょ!」


 アホなことをほざいているリースを正気に戻し、とっとと出発の準備を進める。

 その間にも着々と霧は濃くなっている。


 出発頃には、ほぼ完全に霧に覆われてしまった。


 「クソっ。急いで進むぞ!」


 ユエがいち早く気づいたにも関わらず、霧に視界が奪われたことに悪態を付きつつ、ユエのナビに従い、最短ルートで霧からの脱出を図る。


 しかし、数メートル先も見えない霧は、更にテナス達の行動を阻害する。


 異変に気づいたときには少し遅かった。


 正面に細長い何かが直立し、うねっているのを視認したときには、テナス達は完全に包囲された状況に陥っていた。


 「レイミナミールだ!戦闘態勢!」

 「ユエは後方、俺は前方をおさえる。ガマニ!リースを護衛しつつ、取り逃がしたのをなんとかしてくれ!リースは一匹ずつ着実に仕留めてくれ!」


 戦闘態勢を取ると同時に全員に指示を飛ばす。


 「「了解!」」


 全員が素早くそれぞれの仕事に取り掛かる。


 テナスは前方の2体と横にいる2体を抑えなければならない。


 「第8階位 氷結(フリーズ)!」


 横の2体を一時的だが地面に固定する。

 ほんの少しの間だが、奴らはまともに動けない。


 その隙に前方の一体に素早く斬りかかる。

 しかし、ミールは巨体に似合わぬ滑らかな動きでテナスの剣撃を躱す。

 

 焦らず、振り抜いた剣を素早く持ち替え、刺突を繰り出す。

 ゴムのような弾力を感じつつ、体重移動も加え、なんとか貫く。

 断末魔をあげながら崩れ落ちる巨体を避け、剣を引き抜く。


 体液を垂れ流しにしながら、再び起き上がる巨体を踏みつけ、根本から切断する。


 もんどり打つ上半身は痙攣し、すぐに動かなくなった。


それを確認し、二匹目に取り掛かる。


 テナスが駆け出すのと同時に、横の二匹目が氷を砕き、テナスに突進する。

 衝撃を殺すべく、防御を取る。しかし、巨体から繰り出される衝撃がテナスを襲うことはなかった。


 無数の氷の槍に貫かれ、ピクピクと痙攣していた。

 そのまま絶命し、ただの屍に変わる。


 「サンキュー!リース!」


 すぐに、もう一匹を氷漬けにし、前方の一体に集中する。


 気持ち悪い動きと同時に、粘液にまみれた土塊が放たれる。

 難なく避け、少し様子を見る。

 先はどのとは異なり、近接的な攻撃はしてこない。

 その後も同じような土塊や毒性の粘液を吐き出すのみだった。


 接近し、くじ刺しにすべく剣をつきだす。


 しかし、肉を貫く感触はなく、剣はただ空を貫いただけだった。


 先の一瞬の間で、既に地中に潜っていた。


 地下からの奇襲を警戒し、あたりを見回す。

 だが、霧のせいでほとんど何も見えない。

 感覚だけを頼りに、地中のレイミナミールを警戒する。


 テナスの足先の地面が振動し、わずかに盛り上がる。

 即座に後方に退避する。レイミナミールの巨体が大口を開けて飛び出す。


 少し反応が遅れていたら、あの粘液塗れの口の中だったろう。


 その光景を想像してしまい、鳥肌を感じたが、意識を切り替え無防備な腹に剣を突き立てる。


 すぐに引き抜き、がむしゃらに暴れ出す巨体から距離を取る。


 「第15階位 風刃(エアカット)!」


 圧縮された空気が、薄い刃となり、巨体を斬りつける。

 切断とまではいかないが、レイミナミールの巨体は体を支えきれず、地面に激突する。


 地中に逃げようとする巨体を貫き、動きをとめる。


 「第8階位 氷結(フリーズ)!」


 地面と体を固定させ、容赦なくトドメをさす。

 ミールが口から大量の粘液を吐き出し、絶命する。


 

 死体の上から、ユエたちの戦闘を確認すると、ちょうど、戦闘が終わったところだった。


 後方の二匹は、土魔法によって、原型がわからないほど潰されており、もう一匹はこんがりと焼かれ悪臭を放っている。

 最後の一匹は、ガマニにより現在進行形で滅多打ちにされている。

 滅多打ちもレイミナミールの巨体が痙攣し、絶命したところで終わった。


 「ふぅー。お、もう皆終わってたか。」

 「休憩?」


 一通り倒したが、テナス達はまだ霧の中だ。

 休みたい気持ちも山々だが、ひとまずこの霧からは出なければならない。


 「いや、先にこの霧から出よう。」

 「えー!」

 「諦めろ。それに、この霧じゃまともに休憩なんてできねーよ。」

 「ムー。」


 ユエは不満そうだが、霧から出ることが最優先。

 装備、負傷具合、等を確認し、再び進む。


 レイミナミールと遭遇するまでに結構進むことができていたらしく、数分歩くとすぐに霧は晴れた。


 晴れた視界の中、テナス達は、見つけた。


 前方、1キロメートルほどの地点にそれはあった。


 教会のように神々しく、城のように荘厳で、要塞のように強固だ。


 そして、どこまでも黒い建造物が建っていた。


 ――調査開始。










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