調査依頼 初日 2日目
――3日後
シエテミさんの説教からも立ち直った。
アイテム類を大量に買い、アルセイト平野専用の宿泊キットもレンタルした。
アルセイト平野はあまりにも広大なため、泊まりで奥地を調査する。
行きに2日、調査に1日、帰りに2日。計5日にわたる調査だ。
ユエだけは楽しそうだ。
平野での滞在は地獄だ。
経験している身としては、楽しそうなユエがおかしい。
依頼は依頼なので、嫌でもきちんとやる。
いやいやを貫いている、リースを引っ張り、平野の入り口に行く。
検問所の冒険者専用口を通り、受付の騎士に用件と、期間を伝える。
身分証明も忘れずにだ。
平野にきたのは久しぶりだ。
二ヶ月ぶりぐらいになる。
平野全体を草が緑に色づけている。
平野の中央を巨大なアルセル河が分断しているのは、神秘的でもある。
―――調査開始だ。
仰々しく出発したが、特に特殊なことは何もなかった。
道中出くわした魔物のは、カンマやバックという虫型の魔物のばかりで、対処はいたって楽なものだった。
1日目は予定通り、アルセル平野中央部まで進むことが出来た。
暗くなる前に、宿泊の準備をする。
平野専用のテントを組み立て、美味しくもない食事をとっとと済ませる。
もう後は寝るだけだ。
2日目に向けて、依然明るく太陽が照らす中、今日は就寝する。
おやすみ。
しかし、その睡眠は太陽が沈みきった直後、終了を告げられた。
――ジリリリリリリ!
――キキキキキッキキキー!!
――リリリリリリリリリリ!
アルセイト平野は虫型の魔物のが最も多い。
そう、虫だ。それも巨大な。
最悪なことに、今は夏の終わりでもある。
ここまでくればわかるだろう。
"騒音"だ。
一斉に虫たちが、秋の始まりを告げようとコーラスを奏で始めたのだ。
昼間は静かなくせに!!
残念ながら、平野専用のテントと言ってとも防音機能は装備されていない。
耳栓?
そんなものとうに装備している。
それでも、まともに寝ることなんてできない。
虫たちのコーラスでテントが小刻みに震えている始末だ。
真横で鳴いているのかもしれない。
前回来たときはもう少しマシだった。
今回のはヒドイ。
ガマニやリースも同じらしく、嫌そうな顔で耳を全力で塞いでいる。
寝ることは諦めてしまっているのはテナスも同じだ。
座り込んで、ただただ夜が開けるのを待つ。
横で普通に寝ているユエが怨めしい!!
騒音に耐え続けること約半日。
満身創痍な3人に元気な挨拶が聞こえる。
「みんな、おはよ~。」
大きな伸びをして、ユエがようやく起床した。
ちょうど日が昇り始める頃で、虫たちも静かになり始めた。
寝不足じゃないのは、1人だけだ。
「「おやすみ」」
ユエが起き、残り3人は寝る。
このまま平野を突き進んでは、魔物のにすぐに狩られてしまう。
不服そうなユエはほっといて、一時間ほどだけ、寝る。
――おやすみ。
――1時間後
日は大分昇っており、容赦ない光が熟睡していたテナス達を起こす。
眠い目を擦りながら、なんとか起き上がる。
ガマニを起こし、朝食と今日の分の支度を済ませる。
ユエは既に終わらせていたらしく、1人外にいたスライムを弄り続けていた。
支度をするにつれて、眠気も消えてくれた。
重い体を起こし、たるんだ空気を絞り直す。
「よし、調査再開!」
「「~オ~~…。」」
しかし、やる気のない面々だ。
平野深部に向かい、1日目より速いペースで進んでいく。
できるだけ早く目標幕営地に到着し、できるだけ早く寝る。
これが今日の目標だ。
ギラギラという言葉ぴったりなほどの日差しの中、黙々と進んでいく。
しかし、そう簡単には平野の奥部にまでは行かせてもらえなかった。
スライムだ。
一匹二匹なら、全然かまわない。
今のテナス達なら、秒で倒せる。
問題はその数だ。
全体を見渡し軽く見ても、前方に100体前後、後方に数十匹。
少々まずい。
この数のスライムを放っておけば、後々にまた襲われる。
調査中にでも襲われればたまったものじゃない。
よって、逃亡は却下。
ならば、討伐といっても、大量のスライムをまともに相手出来るのは魔法に長けたリースだけだ。
頼みのリースでも、一回の魔法で十数匹が限度だ。
つまり、残りの百数匹をテナス達が、足止めしなければならないということだ。
考えこんでいる間もスライムはにじり寄ってくる。
リースが魔法の構築を始めると同時に、テナス達も足止めを始める。
ガマニが寄ってくるスライムを盾で徹底的に叩き潰す。
文字通りペチャンコだ。
ダメージは全くといって良いほどないが、形が潰れたぶん元に戻る分の時間を稼げる。
テナスも、同様に剣の鞘で叩き潰す。
盾ほど大きくないため、潰せる数は少ない。
途中飛びかかってくるスライムを瞬時に氷つかせ、地面に叩き落とす。
「おい!リース、まだか!」
「うるさいわね!もう少し待ちなさいよ!」
もう少しらしいが、押し寄せる数が増えているので、少し急いでほしい。
「第29階位 爆炎!」
テナス達の真正面、スレスレに真っ赤な業火が立ち上る。
一瞬にして、数十匹のスライムが核ごと蒸発する。
「――ッ。危ーじゃねーか!」
ガマニのいう通りだ。
少しずれてたら、テナス達まで消し炭になっていた。
テナスの綺麗な金髪の前髪も、半分黒くちぢれている。
前髪に多大なショックを受けつつも、リースのお陰でスライムとの、距離が開いた。
前進し、再び時間稼ぎを始める。
もはや、もぐら叩きだ。
後方を担当していたユエの対処は案外楽だった。
土魔法で穴を堀り、そこにはまったスライムを埋める。
そのうち滲み出して来るが、そのときはまた埋める。
時間稼ぎには十分だ。
前方で悪戦苦闘しているテナスには申し訳ないが、後方はとても楽であった。
滲み出てきたスライムが集まったところに、爆炎が炸裂し、スライムが蒸発していく。
それでも、スライムはまだまだ湧き出し続ける。
ただ、ひたすらに単純作業だ。
「第29階位 爆炎!」
炎が最後のスライムを巻き込み、消し炭にする。
なん十発もの爆炎魔法により、地面は黒く変色し、草が焼ける臭いが漂っている。
スライムが無臭なのは良いことだ。
普通の魔物のなら、臭いのレベルを通り越しているだろう。
爆炎魔法により暖かい地面に腰を下ろす。
延々とスライムを殴り続けた、テナスとガマニダメージこそないものの、体力はほぼ0だ。
やはりここでもユエだけは余裕そうだ。
羨めしい!!
しばらく、ユエに見張りを頼みの、体を休める。
軽く食事もしておいた。
冒険者用の携帯食は硬い!味なし!少ない!
しかし、高カロリー。
モサモサのクッキー状のものを黙々と食べる。
ある程度消化されたところで、再び、出発する。
しかし、予想以上にスライムに時間をとられた。
これは、今日も早く寝るは難しいかもしれない。
それでも気を取り直し、速足で先を急ぐ。




