望んだ転生と、望んでいないチートスキル
結構なボリュームになりました。
2話からはこんなに多い文字数にはならないと思うので(多分)よろしく!!
転生先でチートを操り、一人でなんでもできてしまう。そんな最強の主人公に、俺は憧れていた。
ありふれた日々に退屈しきっていて、学校に行っても特にやることもないし、親しい友達がいるわけでもない。
「暇だなぁ」
いつしか、その言葉が口癖になっていた。
中学生くらいからだろうか、俺は典型的な器用貧乏で、運動も勉強もそれなりにできた。
テストでは学年20位くらいを維持してたし、運動だって人並み以上にはできた。
でも、突出した物はない。
目立つようなものは無く、それ故に存在が薄い。
高校に行っても、それは変わらない。
俺が通っている高校は、地元ではそこそこの偏差値の進学校だ。特に努力せずに入った。
それが原因で、少し嫌われたりもした。
今も覚えてる。あの時言われた言葉。
天野君って、頑張ってるとこ見たことないよねー、なんかそうゆうのムカつく。
今思えばその通りだ、俺も自分で分かってる。
俺はなんでも中途半端、俺はそんな俺が大嫌いだ。
「あーぁ、こんなつまらない人生終わりにして、異世界転生とかしてぇー」
思ったことはないだろうか?本当に転生できるなら、してみたいと。
「何が努力しろだよ、してんだよ俺だって」
交通量の多い交差点、ここを通れば学校だ。
あまり、行きたくはないが……
「今日もつまんないんだろうなー」
俺は耳にイヤホンを突っ込んで歩き出す。
ここは交通量の割に事故が少ないから、多くの生徒がやりがちだ。
まぁ今は周りに誰もいないが、その時間帯を狙ってきてるし。
いつも通り交差点を渡る。
何もかも、いつも通り………
ドン!!!!
は?なにが起こった?
景色が………逆だ………。
そう思っていたら、俺の体は道路に打ち付けられた。どうやら轢かれたらしい、全くもって運が無さすぎる。赤く染まる道路、意識が朦朧として、手足の感覚がない。
でも、案外痛くない。多分もう俺は…………。
そう思うと、悲しいというより、安心してしまう俺がいた。
つまんない人生が終わる。
そう思うと、なんか嬉しくなってしまった。
まだ16年しか生きてないのに人生に飽きたとか、生意気かもしれないけど、どうせこのままの人生なんだったら、いっそこれでいいかもしれない。
あ、もう意識が保てない。
どうせ……転生なんて………起きないだろうけど……
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暗い、何も見えない。
俺、死んだんだよな?
ここは?どこ?
その時、俺の目の前に、光り輝く扉が現れた。
なんだこれ?
「それは転生門、お主の新しい生への扉」
!!!!!
誰だ!?
「なんと!生前の意識を保っておる。何年振りじゃ?こんな魂は」
この声何なんだ?
「こっちじゃ、こっち」
俺は後ろを向いた。扉が見えたのだから、視覚がないわけではないだろう。
光さえあれば見えるはず。
案の定、扉の光に照らされて、一人の人間?が立っているのが見えた。
さっきの言葉使いから、じいさんだと思っていたが、立っていたのは少年だった。
「お主、生前の名前は何というのじゃ?」
は?名前?
というか、喋れないんだけど。
「良い良い、お主が考えてることは分かるからの」
いや気持ち悪!喋りたいんだけど?
あと、そのじいちゃん言葉何?見た目とのギャップが激しいんだけど?
「気持ち悪い!なんと!そーかー、これ気持ち悪いのか。
じゃあやめよ、あ、喋りたいんでしょ?はい!」
「うわ!俺の体!?」
生前の俺の体だ、さっきまで何も感じないし地に足ついてる感も無かったのに………。
「さて、じゃあ君に聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」
「いや、俺も突っ込みたいポイントめっちゃあるんだけど?」
「ん?なんだい?言ってごらんよ」
良いのか?このまま文字数めっちゃ使うぞ?
まぁそんなことはしないのだが………
「一つ目、お前は誰だショタ野郎」
「この状況でそんな言葉使いが出来るなんて、きっと生前は変わり者としてみられたんだろうな」
「そういうの良いから!俺の生前の話は無し!悲しくなる」
割とガチで悲しくなるからその話はNGなのだ。
あとつまんない人生だし。
「うーん、どう説明すれば良いかな?………うん、僕はこの空間の管理を任されてるものだよ」
「この空間って、そういやここ何処?死後の世界的な?」
そんな発言をすると、ショタは興味深そうに俺を見る。なんだよ?そんなに見るな、緊張するだろ。
(陰キャ特有)
「先程から思っていたけど、君は自分が死んだことを自覚しているのかい?」
あーそうゆうことね、まぁ普通はもっと認めたくないとか思うとこだよね。
「まぁな、あんだけ派手に轢かれたんだ、助かるとは思ってないし………助かりたいとも思わん」
「へぇ、変わってるね。そんな奴は初めてだよ。ではこちらも質問するよ?君の名前は?」
そんなに名前知りたいの?俺のこと好きなの?と、俺が好きなラノベの捻くれ主人公的なボケをかまそうと思ったが、相手は男だし、ショタだからやらない。
おいそこのショタコン!興奮するな!
「俺は天野、天野 照信」
「そーか、照信か」
「で?そんなこと聞いてなんなわけ?」
「いや、単純に僕が知りたかったから聞いただけ」
何だそれ、本当に俺のことs
「照信、君は死んだ時、何かを望んだかい?」
「望む?」
「そう、君のような自我を持った魂は死に際に何か未練や願いがあるケースが多いんだ。もっとも、君のように生前の意識のままなのは今まで居なかったけどね」
なに?!俺以外に居ない!?なんて甘美な響きだ!
「望みか、たしかに望んだは望んだけど……」
「何をだい?」
「異世界転生、かな。言ってもわかんないかもだけど」
「異世界か、そんな理由で魂の意識を保つなんてね。よっぽど自分の人生に嫌気がさしていたのかい?」
あぁそうだな、俺は嫌気がさしていた。
そして多分、こうなった原因はもう一つ………
「自分で命を断とうとした?なんて事もあったかい?」
「っ!!」
なんで?
「君に喋る権利を与えたから、心はもう読めないけどなんとなくそう思ってね」
正直このショタのこと舐めてましたごめんなさい。
図星です。
「そうだよ、軽くいじめにあってた時期があって、今思えば下らないけどな………中坊にとってはかなりのストレスだったからな」
「なるほどね、納得だよ」
「それで?また俺は新たな生を授かるのか?」
ショタはうーん、としばらく考えて口を開いた。
「君がそれを望むならそうすれば良い、でも、君の望みを叶える事もできる」
「俺の、望みを?」
「そう、異世界転生を実現できる」
異世界転生の実現?おいおい、マジでラノベ展開か?
まぁこの状況がもうラノベっぽいけど。
でももし、本当に転生できるなら………
「じゃあ、転生させてくれ」
それが俺の願いというのもあるが、単純に興味がある。完全なラノベ展開なら、俺は異世界に渡ったのち最強の道に進むはず!
転生プリーズ!
ショタはその答えがわかっていたのか、大してビックリしなかった。
「うん、わかった。でも転生させることができる世界は一つだけ、選べないけど良いかな?」
「そんなにたくさん異世界があるなんて思ってねーよ。じゃあ頼む」
さて、あっちの世界に行ったら何をしようかな〜
とりあえず金が欲しい、うん、金だな。
「君と話せて楽しかったよ!もう会うことはないだろうし、あっちの世界を楽しんでね!」
俺も中々楽しかったし、お礼ぐらい言っておこう
「あ、ちなみに、転生先はランダムだから!体は生前の君の物をあっちに適応できる様にするから気を付けてね!」
「………はい?」
選べない?つまりは、安全な街中とかに行けるとは限らない?待て、その発言をした後は大体街中には行かない法則が働きつつあるぞ?
「僕から一つ、「力」を渡しておくね!君にあってると思うものを渡すよ!」
いやいやそんなの良いから!安全を保障してもらいたいだけだから!!!
「ちょっと待t」
「バイバイ!」
そのまま、俺は光に包まれた。
あー、きっとダンジョンとか高難易度の森とかに召喚されるんだろうなー、とか半分あきらめ状態だった。
こうして、俺は転生した。
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「さて、転生したは良いけど………」
あたり一帯は森だった。町に召喚されるのはもう諦めていたが、これはこれで地味すぎて反応に困る。
もっとこう………間を開けると目の前にはドラゴンが!とか、美少女が!みたいな反応しやすい奴が良かったというのはある。
ちなみにドラゴンだった場合は、ギャァァァァア
だし、美少女だったら、あ、あの、ここは何処ですか?から始めるつもりだった。
「しっかし、こうも何もないとなると本当にどうすりゃ良いんだ?武器も何も無いから、今なんか来られると色々アウトなんだけど……」
しばらく考えた後、俺はとりあえず歩くことにした。まぁ適当に歩けばどっかにたどり着くっていうのがお約束だし!
「そういえば、あいつが言ってた力って何だ?王道で行けばチート能力とかだろうけど……」
どうやって確認するのかもわからず、色々それっぽい手の動かし方を試した。アニメで見たステータス画面の確認の仕方も試した。
何も起きなかった。
うん、どうすりゃ良いの?
誰か教えてくれ!と、思ったが、よく考えたら分かることだった。
真似事をしても開くわけ無いよね!
見たことがない事をしないと………
「ていうか、口で言うというシンプルなやつやって無いやんけ!!」
思わず関西弁、本場の人に殺される。ごめんなさい!よし、謝ったから許してくれただろう……….
多分。
とりあえず、思いついた中で一番それっぽい奴を言ってみた。
「ステータス、オープン」
すると思った通り、俺の目の前に能力値っぽい奴が出てきた。というか、俺の勘冴えてる!まさか本当に開くとは!しかも思いつきの言葉で!
「ふむふむなるほどな、種族が人間なのは良いとして……」
俺の能力値はこんな感じだった。
天野 照信
種族: 人間
基本能力値
力:47 速さ:42 防御:35 回避:62 魔力:158
スキル:魔法
「レギオン」
「魔力が高いのか、いや、この世界での上限がわからないから高いのかは知らんけど」
スキル「レギオン」か、多分これがあいつの言ってた力だと思うけど、どう使うんだ?
というか、どんな効果があるんだ?
詳細が見れそうだったので見てみると……
スキル「レギオン」
:詳細:
自分の任意の対象のステータスを上昇させる。自分に使うこともできるが、ステータスの上昇率は少し下がる。
「なるほどな、中々に強そうじゃん。でもさ……」
この時点で、俺は思うことがある。
確かに強そうだ、実用性もあるだろう。
でもさ……….
「完全に、サポート系じゃねぇか!!!!」
あれ!主人公最強は!?!!?
一人で最強設定何処行ったの?!
「まさか、異世界でも主人公になれないとは、俺らしいったらない」
あのショタやろう!遠回しに俺は主人公になれないってことか!?あぁ?!
「はーぁ、まぁ仕方ない。俺のステータスも強化できるっぽいし、我慢しよ。まずは人の住んでるところに……」
「ギシャァァァアァアァァァア!!!」
「はい?」
でかい蛇がいた。元の世界でのでかいじゃない。
そんなの可愛く思えるくらい、とにかくでかい。
15mくらいある。
「あ、こんちはー」
よし、このままスルーだ、反応したらやられる。
次の瞬間、俺は普通に捕まった。うん、知ってた。
「ぅわぁぁぁあ!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!」
おもっきしぶん回されてる。頭飛んでっちゃう!
ほら!口開けたよ!!俺の異世界人生もう終わり!?早すぎない!!
「はぁあ!」
と思っていたら、頭にでかい火の玉がぶち当たった。
「ギシャァァァアァ」
「うわぁあ!ブヘッ!」
顔面から落ちた。首の骨が折れなくてよかった。
転生前なら多分死んでる。ありがとうショタ!
「大丈夫か!君!下がっていろ!」
「あ、はい。大丈夫です」
さっきの火の玉はこの人の仕業か。そこに立っていたのは女性だった。歳は多分俺と同じくらい。
男かと思った。
「そうか、なら早く下がって!あいつはまだ倒せていない!」
「へ?いやいや、あんなのくらって生きてたらバケモン………」
蛇は生きていた。というか、全然ダメージが見られない。ん?なんだ?あいつの体から赤いオーラみたいな物が………
「あの赤いオーラみたいな奴なんですか?」
「オーラ?何言ってるんだ?そんなものは見えないが………」
あれ?俺だけ見えてるって事か?
その時、蛇が火の玉を放った。その威力は、さっき蛇がくらった物と同等かそれ以上だ。
「何!?バカな!魔物が魔法を使うなんて!」
「早く避けないとヤバくないですか!?」
あんなんくらったら、今度こそ死ぬ。
「いや、動くな!」
「へ?」
火の玉は俺の横を通り過ぎ、森に直撃した。
どうゆうわけか、木は燃えていない。
「アイツはまさか!ドレインサラマンダー!」
「ドレ?なに?」
何ともゲームっぽい名前だな、とか思った。それどころじゃないのに。
「サラマンダーの上位種、あの大きさは珍しい、おそらくここら一帯の主だな」
「へ、へぇー」
正直サラマンダーが分かんないけど、多分あの蛇のもう少し小さいバージョンとかだろう。
「た、倒せるんですか?」
「倒せないこともない、アイツは魔力を吸収する厄介な奴だけど、その許容量は多くない」
「つまり、アイツの許容量を超える一撃を与えればいいって事、ですか?」
「その通り」
なるほど、確かにそれはありがちな弱点だ。
でもこの場合良くあるのは…………
「でも、もう私の魔力じゃ足りない」
「うん、知ってた」
「へ?知ってた?」
「いや、こっちの話です」
はいだろうね!お約束だよね!!
でも俺は、ある攻略法を思いついている。
俺のスキルを使えば、或いはと思っていたりする。今は憶測でも、やってみる価値があるだろう。
「俺のスキルを使います!合図したらもう一度さっきの火の玉撃って下さい!」
「倒せるのか?」
「……多分」
「分かった、信じよう」
さて、言ってしまった以上、やるしかない。
この状況で冷静にものを考えられる俺の頭に感謝しよう。サンキュー俺の頭!愛してる!
「レギオン!」
唱えると赤っぽい光が女の子を包む。
「何だこれは!力が膨れ上がる!」
上手くいったな、なら後は俺の仕事じゃない。
「撃ってください!」
「分かった!フレアボール!!」
その手から放たれる火の玉はさっきの比ではないくらいの威力だと、俺でも分かるくらい大きかった。
ドォオォォオォオン!!!!
結果から言って、やりすぎ。
さっきの蛇が放った火の玉ではビクともしなかった森の木は、20本前後が消し飛んでいた。
「か、勝ちましたね……」
「……な、な」
女の子はビックリして言葉もないという具合だ。
うん、だよね、俺もビックリ!!笑っちゃうくらい!
「あ、あのー?」
「……何だ今のは!?何でフレアボールがあんな威力になるんだ!!」
「へ!?いやそんなこと言われても!」
分かるわけがない!俺自身、このスキルは初めて使ったのだから。
「そういえばお前、こんなところで何をしていた!ここは魔物の生息地で、一般人は立ち寄らない場所だぞ!!」
「い、いやー、そのー」
転生したなんて言ったところで信じてくれないだろう。余計に怪しくなるだけだ。
「……散歩?ですかねー」
「怪しい!メチャメチャ怪しい!とにかくこのまま王国に連行する!!付いて来い!逃げても無駄だぞ!」
まぁそうなるよね。
でも、一応人が住んでるところには行けるみたいだ。望んだ形ではないけど………
そのまま、俺は王国に連れていかれた。
連行されている時、ふと思ったことがある。
なぜ、ショタ野郎はサポート系の力を俺に渡したのか。答えは簡単だ、俺は単純に一人で戦うのに向いていないんだと思う。
転生前も、格ゲーよりシュミレーションゲームの方が得意だったし。チェスや将棋は、学校のボドゲ部員にも難なく勝てていた。つまり………
俺は一人で「最強」にはなれないが、軍師として、俺以外を「最強にできる」ということだ。
この世界にスキルや魔法があるのは分かった。
なら、やってみようじゃないか。
勝つんじゃなくて、勝たせる「最強」に、俺はなる!
どうでしたか?僕もシュミレーションゲームが得意で好きなのでこの話を思いつきました。
受験前に何やってんの?と自分で思ってしまうぐらい頑張って書きました。(中3です)
2話も是非読んでください!