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毒を減らして

おい、君の設定した村には何人住んでいるんだ?~人口動態ってこんな感じ

作者: 黒野千年

 以前、戦国時代の日本の人口は、現代の10分の1程度であり、それを意識しないと、かなりリアリティが削がれる……的なエッセイを書いた。

 じゃあ、実際、リアリティのある人口の構造ってどんなもんよ?

 言ってるだけではなかなかわからないので、少し実践的なモデリングをしてみたいと思う。


    0年   5年

0~4  100 100

5~9  60  60

10~14 48  48

15~19 43  43

20~24 39  39

25~29 35  35

30~34 32  32

35~39 29  29

40~44 26  26

45~49 23  23

50~54 21  21

55~59 19  19

60~64 10  10

65~69 5   5

70~74 2   2

75~79 1   1

80~84 0   0

総計  493 493


 今の日本の国勢調査なら、5歳ごとの人口が集計されている。それにならって中世の小さな500人足らずの村の5歳ごとの人口の構造を想定してみたのが上である。あくまでも、モデルなので5年間でまったく人口の変化をさせていない。5歳ごとの人口も変化がない。


 この場合、こういう条件になる。

1)乳幼児期(0~4歳が5~9歳に成長する間)に6割の子しか生き残れない。

2)幼少期(5~9歳が10~14歳に成長する間)に8割の子しか生き残れない。

3)そこから後は、老年期に入るまでは5年ごとに9割が生き残る。

4)60代に入るところからは、5年ごとに5割しか生き残れない。

5)70に入るところからは、5年ごとに3割しか生き残れない。

6)80に入るところからは、5年ごとに1割しか生き残れない(ここではゼロになる)。


 15歳が元服=成人扱いだとしても、そこまで成長するまでに過半数が生き残れない。


 苛烈に過ぎないか?とも思われるかもしれないが、実際のところ、発展途上国で内戦でもあれば、現代だってこんなものである。


 生物として最も脆弱な出産直後から乳幼児期に、子を親が守りきれないことは多い。病魔の跳梁跋扈と酷い栄養状態の相乗効果で、医者・医療機関がまともに機能していなければ、赤ん坊はボロボロ死ぬ。運よく生き残り、免疫を獲得し、上手いこと体が作れて少年期を超えると、5年で9割くらいが生き残れるようになる。


……経済、文明的に発展途上で、現代的医療はなく、内戦続き? そう、日本の戦国時代にだってこれが当てはまるわけだ。


 人口を増やしたい、何とかしたい、それで経済を発展させてみたい……そう思ったら、何をするのがよいだろうか。


 90%生き残る大人を99%生き残らせたところで、根本は大きくは変わらない。


 圧倒的に死ぬのは子供だ。そここそ何とかするべきなのではないか……そう思った人は、見る目がある。多少は時間がかかるが、将来に大きな改善効果が望める。


 医療が発達し、栄養状態が改善して、若い子供たちの死が激減したらどうなるだろうか。


 上にあげたモデルを改変してみる。5年までに以下の条件が適用されるようになり、以後はそれが永続すると仮定しよう。


1)乳幼児期(0~4歳が5~9歳に成長する間)に8割の子が生き残る。

2)幼少期(5~9歳が10~14歳に成長する間)に9割の子が生き残る。

3)そこから後は、老年期に入るまでは5年ごとに9割が生き残る。

4)60代に入るところからは、5年ごとに5割しか生き残れない。

5)70に入るところからは、5年ごとに3割しか生き残れない。

6)80に入るところからは、5年ごとに1割しか生き残れない(ここではゼロになる)。

7)5年後に、20代人口の1.35倍の子供が生まれる。


    0年   5年  10年  15年  20年  25年  30年  35年

0~4  100 100 100 100 122 144 149 149

5~9  60  80  80  80  80  98  115 119

10~14 48  54  72  72  72  72  88  103

15~19 43  43  49  65  65  65  65  79

20~24 39  39  39  45  58  58  58  58

25~29 35  35  35  35  40  52  52  52

30~34 32  32  32  32  32  36  47  47

35~39 29  29  29  29  29  29  32  42

40~44 26  26  26  26  26  26  26  29

45~49 23  23  23  23  23  23  23  23

50~54 21  21  21  21  21  21  21  21

55~59 19  19  19  19  19  19  19  19

60~64 10  10  10  10  10  10  10  10

65~69 5   5   5   5   5   5   5   5

70~74 2   2   2   2   2   2   2   2

75~79 1   1   1   1   1   1   1   1

80~84 0   0   0   0   0   0   0   0

総計  493 519 543 565 605 661 713 759


 子どもの疾病対策と栄養改善をするなどで2つの年齢階級の生残率を上げただけでも、最初の5年で20人以上増え、以後も目に見えて人口が増える。


 最初の増えた子供らが結婚・出産適齢期を迎えれば、出生する子供も増える。人口の増加率はさらに増える。40年以降も計算を続ければ、爆発的になるだろう。暇のある人は表計算ソフトでこれを再現してみるといい。


 こういうモデリングが人口推計の基本にある。


 実際の人口推計は5年ごとの国勢調査人口に基づき、さらに男女別に分け、女性の出産適齢期人口から5年後の子どもの出生数を求めることになるけど。基本は、0〜4歳は5年後には5〜9歳になる……5年ごとの年齢集団の移動と変化率を捕まえて、それを年々適用させる計算を行う。


 現代の先進国の場合、乳幼児が圧倒的に死なない。99.9むにゃむにゃ%まで生き残り、大量死の起きる大事件がなければ、40過ぎまで99.9むにゃむにゃ%の生残が続く。今、日本が人口減少に面しているのは、晩婚・非婚が進んで、少子状態になっているからである。


 乳幼児がバタバタ死ぬのに貧しい発展途上国で人口が爆発するのは、いろんな社会事情を背景に若いうちから女性に出産機会を作ってしまううえに、子供を労働力として使うことを是としているからで、出生数が抑制されないためだ。結果的に生残する子供の率は低くとも、絶対数は多くなる。この傾向は、現代の貧しい地域だけではなく、日本を含めた多くの国の前近代社会にも当てはまる。


 さらに、目端の効く人なら気づくだろうか。これは自然増しか考えていないと。そう、周囲にも町や村が隣接している村ならば、何かの原因で移り住んでくる人もいるだろう。社会増というやつだ。これに目をつけられるなら、まちづくりシミュレーションゲームの才能がある。


 現実だってそうだ。「産業を興し、働き盛りの若者を引き寄せればウハウハじゃね?」というのは、現代の多くの自治体でまちおこしや企業誘致を行う動機づけになっている。特に20代人口が増えれば、生まれる子供も増えるという効果があるのだから。


 一方で要注意なのは、そういう産業興しが陳腐で、先の見通しが暗いままだと、その土地に人が居着かなくなる可能性がある。中世だとそこに、移動の自由の制約、戦士階級の押領(領地分捕り)の頻度、野盗の跋扈の具合なども加味してやる必要もあるだろうし、治山治水もロクなもんではないことも考え合わせてやろう。


 あとは、産業構造をおいおい考えていけばいい。それはまた、別の論を立てたほうが良いだろう。ともあれ、主人公が村に居を定める設定の小説なら、こういう知識は設定に役立つはずだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 55歳以上は0で良いと思う。 昭和の村でも60歳はとても長生き。 税を7割として作物の3割が村人の分。 家から3キロ内の収量でも総人数は決まる。 10代、20、30が生産人口。 まあ2キロ以…
[一言] 村で何人生きていけるかも重要ですね。 子供は死にすぎた村人の補充。
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