プロローグ2
「えぇ、嘘でしょ……。」
往々にして嫌な出来事や不幸は一気に訪れる。他の人のことは知らないけど私はそう。
小説が完結してどこの誰とも知らない方を鼻で笑わせた後、それはもうひどいものだった。小説を書き始めたのが大学三年の夏休み、そして完結したのが大学四年の夏休みなのだけど、その間にやっとこぎつけゲットした内定先が倒産した。そして不幸インターバルもないまま数年前に他界した両親に多額の借金があったことが発覚。それも闇金から借りていたため、当初借りたお金の何倍にも膨れ上がった状態でやってきた。それに驚愕する間もないまま借金過多を理由に素行不良の烙印を押され大学を退学に。借金発覚後秒で親族一同から縁を切られ、途方もないまま夜のネオン街を歩いているところが冒頭になる。
「嘘……、浮気じゃん」
ラブホテル。良い仲の男女ーたまに同じ漢字が並ぶこともあるーがその仲をもっと深める場所。唇同士を触れ合わせ、仲睦まじくそのラブホテルの中に入っていったのは付き合って3年になる私の彼氏だった。
「潮時だったのかな」
なんてそれらしい言葉を吐いてもなんの感情も浮かんでこない。もう限界だった。
優しくてそれなりに良い人だった。頑固者で、素直に可愛くなんてできない私にいつも「可愛い」と言って頭を撫でてくれた彼。正直顔はタイプではなかったけど、それでもちゃんと好きだったし、今の私のより所だった。
「私にはあんな熱烈なキスなんてしてくれたことなかったのに」
そう拗ねた私の言葉は喧騒に消え、私は涙を流すこともなくそのままとある場所、誰も寄り付かない森へと向かった。
できるだけ山の奥に、奥にと進んでいくうちに段々夜が明けてきてしまった。これはいけない。
「この辺なら見つからないかな。よしいい感じいい感じ」
特に木々や草花の背が高く生い茂る場所に身一つ置ける場所を作り、片手に持った透明の液体の入った小瓶を事務的に煽り、飲み込む。そんな劇薬どこで、なんて声が聞こえてくるけどそれはまあ大学関係とだけ。
数分後にやってきたのは少しの不快感と耳鳴り、あと酩酊感も。ふわふわと酒に酔ったようなめまいのなか、少し湿った地面に身体を置く。人生に絶望したわけじゃない、別に生きるのに疲れたわけじゃない、ただ、なんだろう、有り体に言えば「借金を返すのが面倒くさかった」それだけなのかもしれない。
あー眠い。
大して気持ちよくもない暴力的な眠気の中、真夏の風が前髪を揺らしているのに冷たくなる身体を「これは面白い」とどこか他人ごとのように考えていると、突然落ちた。
え、落ちた?
「お、お、お、落ちてるうううううう!!!!!ぎゃあああああああ」
どうやら私は地面に寝てたと思ったら、空にいたようです(?)




