プロローグ
『悪役令嬢』その界隈にいる人なら「ああ、そっち系の」と理解が早いワードの一つ。聞いたことのない人の為に簡単に説明すると『乙女ゲームに転生した私はヒロインを徹底的に苛め抜いた末没落する運命たどってしまう貴族の一人娘!やだどうしよう!』の一言に尽きる。あー待って待って!別に喧嘩売ってるわけじゃないから!実を言うと、私もその一人だから!。
そう。私はその悪役令嬢というものに転生してしまったのだ!しかも、その先はよくある乙女ゲームとは一味も二味も違う、RPG要素がもりもりに詰め込まれてるからさあ大変!生きるか死ぬか恋愛するかのデスゲーム!私は没落を免れるのか!いやそもそも生きていられるのか!貴族クリミア嬢の戦い!乞うご期待!!
なーんて小説を書き始めて早一年。大学三年生の暇な夏休みの暇つぶしの一環で始めたオリジナル小説もそろそろ終わる。いや、終わらせるといったほうがいいかもしれない。
元々好きだった悪役令嬢に転生する物語に、更に好きだった敵と戦うRPGの要素を組み合わせたら面白くなるだろうとスタートした連載小説ははっきりいって鳴かず飛ばずだった。それもそうだ、大した伏線も張られない。せっかく張られた伏線も回収後のスッキリ感を感じられない。RPGの花形である魔王もふわっとした設定で「強すぎる」以外の印象が薄い。ヒロイン、ここでいう悪役令嬢と対比する形の女の子も特別良い子でも悪い子でもない。そもそも起承転結がない。つまるところ、読み手をワクワクさせるような文才が無かった……。
なんとか今日の更新で完結はするけれど、この完結の仕方だってひどいものだ。宿敵ーというほど別に宿敵ではないーの魔王を倒すことは結局できず、ヒロインも悪役令嬢も誰とも恋愛フラグが立たずに「お前、なかなかやるじゃねーか」と草原の上で寝そべりながら友情を確かめあうような関係になってしまうし、えっ私の文才、無さすぎ!? オチは夕日の沈む丘の上で登場人物一同が「やりきったな」と言う所です。くっさ。
せっかく始めたことだからと、なんだかおかしいぞこの話と内心思いながらも、素人文章書きマンこと私はプロットなんて高尚なものを組み立てることもせず、心の赴くまま書き連ね、この悪役令嬢の転生系物語は幕を下ろした。
ちなみに、この小説はとある小説投稿サイトに順次投稿していたが、完結終わりにいただいた最初で最後の感想コメントは「鼻で笑いました」だった。