番外編 セレーネ&カムル&ケイマ編
「ケイマ! 矢はあと何本だ!」
「約20です!」
「前方から新手よ! 私が吹き飛ばす!!」
崖に挟まれたステージで、ケイマ、セレーネ、カムルの三人は街の住人からのクエストで、とあるモンスターに挑んでいた。
モンスターの巣穴に向かうため、走っていると、前から大型のサンドリザードがズダズダと砂煙を上げながら走ってくる。その姿は、まさにコモドドラゴン。
「〔ストライクガラティーン〕!!」
前に走り出たセレーネの武器、{エクスカリバー}から熱量を持った衝撃波が放たれ、サンドリザードの群れに直撃する。
「Gyuaaaaaaa !!!!!!!」
「撃破!」
「目的地、確認しました!」
「俺が突っ込むから、ケイマ、援護頼むぜ!!」
「了解です!」
三人の目の前に、大きくそびえる岩に穿たれた洞窟が大口を開けて待ち構える。そこに飛び込むと、耐え難い悪臭と、ムワッとした気持ち悪い熱気が三人を包む。モンスターの影響なのだろうか。住人の話によると、この洞窟は隣の街に行くための唯一の道らしい。
「うっ………………こりゃマスクしなきゃムリだ。セレーネ、マスクあるか?」
「バッチリ。はい、ケイマ」
「ありがとうございます。皆さん、万全の状態で挑みましょう。というわけで、どうぞ。PP回復ポーションです」
「サンキューな」「ありがと、助かるわ」
万全の状態に仕上がったところで、いよいよモンスターの探索を開始する。辺りは真っ暗で、コウモリの糞によって、地面が滑りやすくなっている。その中で、三人はちょうどいい感じの横穴に一旦身を隠し、ケイマの索敵スキルで辺りにモンスターがいるかどうか探る。
「……………ケイマ、どうだ?」
「……………………ダメです、コウモリが索敵レーダー内に多すぎて、他のモンスターを感知できません」
「見るにしても、こんな真っ暗じゃ、見ようにも見えないか…………困ったわね…………」
セレーネが観念したように手を上げる。ちょうどその時、カムルの頭の中の記憶に、引っかかるものを感じた。
「待てよ~…………確かいたハズだ…………洞窟内を住処とする、モンスター………………」
「カムル? 」
セレーネがカムルに近づこうとした瞬間、ケイマの鋭い警告の声が暗闇を貫く。
「巨大モンスターを感知!!位置は…………カムルさん! 真上!!」
「分かってんよ! オラァ ! !」
両手槍{ロンゴミニアド}を野球のバットのように振り、何かに当たった感触を確かめた直後、セレーネを抱えて飛び退く。ケイマがアイテムメニューから取り出していた松明に照らされたのは、白く濁った目をした、巨大な蛇のモンスターだった。その体長は、恐らく5メートル以上。
「Shuuuuuu………………」
「やっぱしてめェか…………“スキュラ”、洞窟内を住処とし、主にコウモリを食べて生きている蛇型モンスター…………稀に巨大化する個体がいるとは聞いたことがあったが、まさかこのサイズまでとはなぁ………………。」
「来るわ! 」
“スキュラ”が身体をくねらせながら、その巨体からは想像もできない程のスピードで突っ込んでくる。
「〔クルーエル・ストレート〕!!」
「カムルさん! 」
{ロンゴミニアド}にエネルギーを集め、投擲するようにエネルギーを飛ばす。直撃はしなかったものの、“スキュラ”の身体に傷が入る。その瞬間、ケイマの弓矢とセレーネのが的確に“スキュラ”の顔に直撃する。
「おまけ、持っていきなさい!!」
「Gyaaaaaaaaaaaaaッッ!!!!!!」
“スキュラ”は、一際大きく吠えた後、地面に穴を開けて逃げていく。
「逃がすかよ! 」
「待って! 」
「何だよ! 」
“スキュラ”が開けた穴に飛び込もうとするカムルを、セレーネが止める。それに納得いかないらしく、カムルはイラついた調子で言った。
「俺らの目的は、アイツの討伐だろ! ?」
「目的はそうですけど、あれはもうココには来ないでしょう。幸いにも、この他にも洞窟はたくさんありますからね。とりあえず、クエストはクリアです。」
ケイマが落ち着かせるように話すと、カムルは落ち着き、アイテムメニューから干し肉を取り出し、荒々しく齧り付く。
「よし! 住民からたっぷり報酬貰わないとね!」
「お、恐ろしいですよ……言い方が」
「いーのいーの! さ、帰るわよ!」
“スキュラ”が開けた穴は、セレーネの能力‘歌’で呼び出したゴーレムに、大きな岩で塞がせ、意気揚々と三人は街へ戻っていった。
「それじゃ、おやすみ~」
「はい、おやすみなさい」「またな~」
報酬を受け取り、あらかじめ予約しておいた宿で夕食を食べ、入浴を済ませた後、各々の部屋に入る。そこの宿は、安い宿泊費にしては良質な家具が揃っている。
「ふっはー!つっかれたー!!」
「そうですね。あ、お茶入れますか?」
「頼むわ。あ、ちげぇケイマ、ドーラくれ」
「りょう……かいです」
ベッドに飛び込んだカムルに、炭酸飲料のドーラのペットボトルを放り、ケイマはアイテムメニューから茶葉ときゅうす、自分愛用の湯のみを引っ張り出し、お湯を沸かす。
「ケイマ、その茶碗、(デルショヤ)の街の特産品か?」
お湯が沸いて、茶葉をきゅうすに入れた時、カムルの言葉に驚いた。
「え、カムルさん、分かるんですか! ?」
「あぁ、零も同じ湯のみ使ってたからな」
「なるほどー。けど、本当にこの湯のみ長持ちして、デザインがたくさんあるので、プレゼントにも適してるんですよ」
「ほぇー。なるほどなぁ」
ドーラを飲みながら、カムルはテレビをつけ、なにか面白い事がないか探す。
(ねぇなー……ん?)
適当にチャンネルをチラホラ変えていると、気になるニュースが目に映る。
『今日、昨日から2日間に渡って(ウッキ)で行われた、射撃武装のみのチームバトル大会、“キングバレット・オブ・チャンピオンシップ”に、初参戦の零さんと、ユラさんのチーム、“チーム・クロハネ”が優勝しました。二人は初参戦にしては見事な連携を見せ、決勝戦に至っては8人のチーム、“アガルタルズ”を破り、優勝カップを掲げました』
食い入るように見ていると、ケイマが氷を入れた緑茶が入った湯のみを持ってベッドに座る。
「へぇー、ユラさん射撃武装使うようになったんですね。意外です」
「多分、零に教わったんだろ。アイツ、お前とユラが知ってる限り、射撃武装使ってるイメージなかっただろ?」
「はい。いつも近距離武装使って、敵の前線荒らして暴れてるイメージしかなかったです。零さんに失礼ですけど」
「大丈夫だ。アイツはそれくらいでは怒らねぇよ。それでだ、アイツ元々はスナイパーライフル使いだったんだぜ? 想像出来るか?」
カムルの予想通り、ケイマは驚きの色を隠せていない。
「そうだったんですか! ?」
「そうそう。想像出来ねェだろ! 俺も最初聞いた時に、『マジかよ! ?』って思っちまった!」
一気に話が盛り上がって、カムルの思い出話や、ケイマが零からスナイパーライフルの使い方を改めて教わっていた時の様子などを話して、笑っていたら、一夜越していた。そのため。
「二人とも! !なんでそんなに寝ぼけてるのよ !」
と、朝からセレーネに怒られる始末であるのは、分かりきっていた結果である。かく言うセレーネも、実は24時までリリスとトークで話し込んでいたのは内緒。
その日は、曜日クエストを周回するだけの日となった。




