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ローズフォース  作者: DA☆
Procedure 2 ジプシー ガール
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47/140

2-29

 そうしてあたしたちは、しばらくサンフラワーのもとで訓練とシミュレーションを重ねた。……といっても、筋トレだの匍匐前進だのに励んだ訳じゃない。身体的な―――つまりハードウェアの強さは、サンフラワーの粒子プログラミング能力に依存する。必要なのは脳味噌にパターンを刷り込まなければならない部分だ。


 フライングローズの中にはトレーニング施設があったが、別段特殊な器具があったわけじゃない。むしろ、あの白い部屋に近かった。あたしたちはサンフラワーのしくんだ幻を見せられ、幻を相手に、基礎的な射撃訓練・格闘訓練とサッカーの練習程度のコンビネーションプレーをいくらかやった。彼らの作る幻は精巧ではなかった。あたしたちは、自分に与えられた武器の威力や身体能力の高さに戸惑いつつも、常にそれが訓練であり幻であることを承知していた。むしろリアルなゲームとして楽しんだ───そうでなきゃ飽きっぽいさおりが長続きするもんか!


 武器の使い方もいくらか学んだ。標準の装備であるローズアームズとローズショット。どちらも、左肩の薔薇飾りから取り出した時点では、コショウ瓶程度の大きさの白い筒だ。すでに何度も経験したとおり、念じるだけで思った通りの形状に変わる、便利な武器だ。


 アームズの形状に関しては、ほとんど自由自在。分割して、二刀流なんてこともできる。ブルーローズは(ローズソード)にしたし、さおりはアメジストコピーとの戦闘で(ローズウィップ)にしてみせた。めぐみやゆきのも追い追い自分に使いやすい形を見つけていくことになる。


 もちろん、あたしたち自身の体そのものも武器になる。あたしなんかはアームズを使うより手足に攻性粒子をまとわせて殴る方が、体がすんなり反応するんで、いつもそうしている。


 ショットの方は決まった形のいずれかにしか変わらない。武装オプションが何もない状態では、ピストルの形状にしかならない。ただこれも、分割して二挺拳銃にできる。さらに、パワー型のイエローローズだけは、二挺よりさらに多く、ほぼ無限個数に分割することができる。……スピード型は動きが速い、とはすぐにわかるが、重さをあまり感じないこの体でパワー型である証左とは何ぞやと疑問だったのだが、つまり砲門の数だ。


 撃てる弾には何種類があるが、通常は口径よりも大きくシャボン玉のように膨らむ直径数センチの光弾が、自動で連射される。武装オプションがあると、モーリオンにぶち込んだバズーカ形状だとか、ライフル形状だとか、いろいろ変わって撃ち方もまたさまざまに変わった。


 訓練以外は、ローズフォースがどういう存在かとか、宇宙法やクラス7がどうのこうのといった、サンフラワーによるレクチャーに多くの時間が費やされた。


 サンフラワーは教師としては大甘だった。あれは現代の中学や高校に連れてったらものの役に立たない。ただ、生徒が女性四人ということで、頭悪いさおりに手こずる以外はきちんと仕事をこなしていた。自分が精神体であり、あたしたちの上官であるという一線をびしっと引きながら、こまごま丁寧に、我慢強く、これまであたしたちが片鱗たりとも知らなかったことがらを、みっちり仕込んでいった。……以前ゆきのがあたしたちをして「警察犬ロボット」と表したが、なんとなくわかる、警察犬の調教ってのはこうやるんだな。


 そういうわけだから、概して印象は悪くなかったものの、サンフラワーは男としても相手にされなかった。唯一の男性がモテなかったらそれはそれで悲しくはあるが、あたしたちの中でこの教師兼主治医に対する感情は恋愛へと昇華しなかったし、サンフラワー自身も当然のこととして受け止めていた。そもそも彼ら精神体には本質的に性別がない。男性の肉体を持っているからサンフラワーやクリスタルは男性として行動し、女性の肉体を持っているからブルーローズやシトリンは女性として行動するが、同性異性という意識は持たないようだ。


 唯一の親近感といえば、めぐみがニックネームを彼に賜ったことだ―――「サンフラワーってどういう意味だったっけ?」というめぐみの質問に、ゆきのが「ヒマワリのことですよ」と答えると、「じゃ、あたしヒマさんって呼ぶね」それで決まりだった。


 戦闘形態になっていないとき、あたしたちの教室は、たいていリビングだった。ちゃぶ台を囲んで、あたしたちはおしゃべりを交えながら授業を受けた。精神体にとっては、文字は記録用のものでしかなく、目を通して読み取るにしても、その情報はパソコンのメモリのように蓄積され、その蓄積がすなわち理解になるのだそうだ。しかるに、図だとか文字とかを読み解いて理屈を作って理解する学習の方法は、彼らにはまどろっこしいものらしいが、サンフラワーは不平をいうことなくあたしたちの脳味噌の理解速度に合わせてくれた。


 そうしてあたしたちは、自分たちがローズフォースであることを学んでいった。


 そうだ。ヒトのように食べ、ヒトのように学習し、ヒトのように生きているけれど、あたしたちは人間じゃなくなった。


 もしかしたら、最初から、人間などではなかったのかもしれないけれど。アメジストの言ったとおり、人間ではない別の生き物だったのかもしれないけれど。もう、それを確かめるすべはない。




 こうして、製品(プロダクツ)ローズフォースの開発と導入は終わった。

 これから、運用のフェイズが始まる。

 そしてあたしたちは、自分たちが置かれている本当の立場(・・・・・)を、まだまったく知らなかったのだ。


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