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ローズフォース  作者: DA☆
Procedure 2 ジプシー ガール
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2-15

 アメジストも数勘定を優先させたようだ。


 「私が手を下すまでもないでしょう。援護にコピーを置いていきますから、後は好きになさい」ふっと彼女が手を広げると再びワープエフェクトが生じた───それも同時に六つ。現れたのは、アメジストと同じ顔同じ姿をした、かつ視線の定まらない連中。シトリンが連れていたのと同類だ。あたしの戦った限りザコでしかないが、数で攻められるのはきついかもしれない。


 「それにしても」六体が現れる間に、アメジストがふっと思いついたように言った。「葬式というのは、ただ死体を焼くだけのことにずいぶんいろいろなものを犠牲にするのね」


 モーリオンが答えた。「めそめそ泣きたい女子供にショウを見せているのさ」


 「儀式でしょう、それは否定しないわ。しかし、儀式はシンプルに組み立てるのが真の知性というもの」アメジストは答えた。「儀式の演出が過剰なのは、その知性が原始的であるということ。生死をリアルなものとして受け止められない幼稚な文明の証だわ」


 「まったく幼稚だ。泣きたいだけのヤツらが泣きたいだけ泣くには、こういう仕掛けが必要なのさね」


 「愚かだわ。現実と虚構の区別がつかないのね。彼らを知的生命などと認定したことがそもそもの間違いなのよ。……まったく、子供がひとり死んだだけでどうしてこんなに大騒ぎできるのかしら」


 ───何を言ってやがんだ、こいつ? あたしはどう反応していいのかわからず呆然としてしまった。だがそのとき、予想しなかった方向から予想しなかった声がした。


 「ナニソレ、ムカツク……っ!」


 現代の人間が四六時中発する「ムカツク」とは、明らかに異質な声。さおりだ。さおりが、玄関口でこの状況を見ていたのだ。


 「あんた、あやまんなさいよ!」


 さおりはスピード型のピンクローズ。アメジストのいる高い位置まで跳び上がるのは一瞬だった───アメジストの胸ぐらをつかもうかという態勢になったが(この体がつかめれば、だが)、その直前にアメジストはほんの数メートルのワープをしてそれをかわした。 アメジストは言った。


 「何を謝れと言うの?」


 「あんたバカにしたじゃん! めぐみの葬式、バカにした!」


 激昂するさおりに、アメジストは嘆息した。


 「あらゆる生命種において、脆弱な幼生の方が死にやすいのは当然のことでしょう?」


 「カンケーないでしょそんなコト! アヤマレイマスグ!」


 「あなたは人間だというのに、知性も理性もまったくないようですね。人間ではない別の生き物なの?」


 「ワケわかんないッ、モォォォゥっ!」


 噛み合わない叫びをあげながら、さおりは再びアメジストに突っ込んでいった。アメジストは再びワープして逃れた。平手打ちの姿勢から逃げられ、さおりがバランスを崩して大きく宙を泳ぐ。


 「私には戦う気はないのよ、悪いけど」アメジストは肩をすくめた。「戦闘行為は何も産まない、愚かなことよ───不用意に行えば不利益を被るだけ。必要最低限にとどめることが何よりも重要です」最後のひとことはちらりとモーリオンにも投げかけられたようだった。


 「逃げンなッ!」さおりの叫びの向こうでアメジストは再びワープに入り、今度は姿を現さなかった。自らのコピー六体だけを残して、去っていってしまったのだ。


 さおりはふっと激昂から我に返り、「……なんでお葬式で泣いちゃいけないのよぅ!」宙に叩きつけるように叫んだ。「めぐみがかわいそうじゃないのよぅ!」眉間には強くしわが寄っていた。涙が流せないことに苦しんでいた。一方で、残されたアメジストコピーたちが肩の六角形の飾りからてんでにショットやアームズを抜き放って構え、さおりを取り囲む。


 あたしは一瞬、理屈も他者の意見も何も交えず直截に感情が吐き出せるさおりに嫉妬を感じた。同時に、直截に感情を吐き出すさおりを、アメジストがそうしたように侮蔑していた。脳みそに熱い部分と醒めきった部分が同居していた。あたしだって、ブチ切れてヒトを殴ることには変わりないのにさ。


 混濁する思考を大きく首を振って振り払う。


 「ゆきの、さおりをフォローしてくれ! あたしはあのクソジジィを引き受ける!」


 「私に、……できるでしょうか」まだ彼女の手は少し震えている。


 「できるっ! さっさと行け!」あたしはゆきのの背中を叩いた。「せめてフォローだけでいい、さおりに武器を持たせてやってくれ!」


 ゆきのは小さく、しかしはっきりとうなずいた。さっと跳び上がると、円形に取り囲むアメジストコピーの死角を抜け、真下からさおりに取りつくと、右手をピンク色の薔薇飾りに当てさせた。


 彼女の肩からすぅっと取り出されたローズアームズ、作り出された刃は、長く垂れ下がる弾力を持った紐状の青い光だった。あれは、ウィップだ。……あぁ、そういやそんなバイトをしたと言っていたっけな。一瞬あきれたが、使い慣れているというならそれもいいだろう。


 さおりは大きくその鞭を振り回した。収まらぬ怒りを、同じ顔をしたアメジストコピーにぶつけようとしていた。悪くいえばただの八つ当たり、見境がつかず、危うくゆきのを巻き込みそうになりながらも、それでもさおりもまた、ローズフォースとして戦闘という領域に足を踏み入れた。


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