7-14
一瞬睨み合うふたり、仕掛けたのはゆきのだった。
再びナギナタで斬りかかる。シトリンも再びバックステップでかわした。しかしさっきとは違い、明確な意志を持った後退だった。十分な距離を取るとジャンプして高く舞い上がり、伸身宙返りからかかとを落としてくる。ゆきのは狙い定めてナギナタを逆袈裟に斬り上げたが、シトリンは食らう直前に空中静止、何も足場のないところでもう一度ジャンプするように飛び上がってその攻撃をすかすと、体をひねってゆきのの背後に回り込んで着地した。そのまま、構えの崩れているゆきのに、膝を上げたままで蹴りを三発入れる。最後の三発目はゆきのの横面を張り飛ばすように振り抜かれ、ゆきのは地面に這った。
「本気で戦えば絶対に負けないわ……あなたがわたしに勝てるわけないのよ!」シトリンは叫んだ。「勝つなら、そう、あの赤いの! あいつに勝たなくっちゃ、クリスタル様は認めてくれない!」
「そうはさせない」ゆきのは小さくつぶやいた後、シトリンに叫び返した。「何を言っているの?! 私はローズフォース最弱の機体ホワイトローズ! 私に一撃当てたくらいで喜んでいるようじゃ、みずきさんに挑んだって相手にもしてもらえませんよ!」
「何を……ッ! 口の減らない……ッ!」シトリンは再びシトリンスターを手に持って突っ込んでいく。そのスピードはやはりクリスタル一派の中で最速だ。クライミングしたとはいえ、ホワイトローズでは対応しきれない速度だった。
ゆきのはローズマグネガンを何発か放った。「!」手の中のスターが引き寄せられそうになり、シトリンの速度が一瞬鈍る。そこへ逆に接近したゆきののナギナタが繰り出される。
シトリンはスターをマグネガンのうちの一発にぶつけ、相殺して消した。そうしてマグネガンの影響をなくすと、ナギナタの切っ先を間一髪でかわして素早く地面に伏せた。そのまま、低い姿勢からの足払いを入れる。この体は転びはしないが、ゆきののバランスを崩すには十分だった。不安定になっているところへ、足払いの回転をそのままハイキックの回し蹴りへとつなげ、さらに間合いを詰めてゆきのに体を密着させると、その場でシトリンスターを作り出した。
この距離ではマグネガンの影響を受けてもゆきのに直撃する。ゆきのはスターを叩きつけられ、吹っ飛ばされた。接近戦に持ち込んでしまえば、シトリンの体技は圧倒的で、ゆきのには防御の姿勢を取ることすらできなかった。
「ほぅら、全然相手にならないじゃないの!」シトリンは叫び、立ち上がろうとして四つん這いになっているゆきのの首をつかむと、はるか遠くへ放り投げた。そのままダッシュで追い打ちにかかる───これですべてのマグネガンからの距離を取り、その影響からも脱したわけだ。シトリンはダッシュしながら再び手の中にスターを作り出す。それも、次々と、三つ作り出し、三角形に配置する。大技、シトリントライスターだ。
「これでとどめよ!」
だが、「冗談。まだまだ、これからですよ」ゆきのは痛みをこらえて立ち上がった。シトリンがゆきのを投げ飛ばしたことは、遠距離戦に持ち込めた意味で、かえって彼女に有利に作用していた。「これだけ距離があれば十分───いきますよ! あなたを倒すために、私はこのソーンをサンフラワーさんに作ってもらったんです!」
言うと同時に、ゆきのの両肩からまっすぐに光の蔓が伸び上がった。それぞれ三方向に放射状に分岐し、先端が彼女の背後で正六角形を描いて位置した。そしてすべての先端に、ガスを送り込まれた風船のように攻性粒子の白球が浮かび上がる。
そして、三つのスターもろともに突っ込んでくるシトリンに向かって、叫んだ───「ローズ・ドラグーン!」
蔓の先の六つの光弾が射出される。後を引く光条がシトリンに向かっていく。シトリンは射線からわずかに身をずらしてかわそうとしたが、光条は、その動きを追いかけるように方向を変えた。それに気づいたシトリンは、トライスターを抱えたまま高く跳ね上がった。だが光条はその動きも的確に追尾して、シトリンの後を追っていく。
「パワーもスピードもない非力なキャラが使う強力な武器といえば、」ゆきのはつぶやいた。「ホーミングウェポンって相場が決まってるんですよ!」……自動追尾武器がなんで竜騎士なのかさっぱり判らないが、彼女にはきっとその理由があるんだろう。
「ローズドラグーンは絶対にはずしません、何かに当たるまで必ず飛び続けます。さぁシトリン、この技の弱点を教えてあげますよ。威力が小さくて連射が利かないことです。頑丈な装甲には歯が立ちませんし───何より効果的なのは、私が撃つ以上に私にダメージを与えることです。それがあなたにできるものなら!」
防御の技を持たず、間接攻撃もなく、スピードと直接攻撃に秀でているだけのシトリンには、この技を防ぐ手段がほとんどない。シトリンは盾を使う発想を持ち合わせないだろうが、アームズから小さなシールドを作ったとしても、六方向からの高速攻撃は防げない。
手に、脚に、顔面に、次々とその攻撃を食らい、のけぞった。トライスターは使われることなくその手の中で消えた。その間にも新たなローズドラグーンが、蔓の先で膨らんでいき、続けざまに射出された。




