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ローズフォース  作者: DA☆
Procedure 7 ルーピング~そしてハッピー バースデイ
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115/140

7-06

 あたしたちはフライングローズの上甲板から飛び立った。


 ゆきのの先導で数キロも飛ぶと、眼下に鈴木征功邸が見えてくる。いわゆる高級住宅街───豪邸がずらりと並び、空から見ていると、めぐみの家が建っていたあの郊外の団地とのギャップに気が遠くなりそうだ。しかし鈴木邸は、それら豪邸の存在さえ霞ませる、飛び抜けた広さだった。


 一辺百メートル近くある敷地のほぼ中央に、ざっと見て部屋の数が二〇以上はある三階建ての洋館が建っている。洋館といっても、田舎のペンション……いや、下手をするとラブホテルみたいな品のないデザインだったが。


 近隣の住民から景観破壊と訴えられないで済むのは、彼らが寛容なのではなく、敷地が二メートル近い高さの石塀に囲まれていて、人の目の高さからは、中に邸宅が建っていることさえわからないからだろう。


 モーリオンの理屈に従えば、これは富の象徴だ。ステータスを誇示することなしに金は近づいてこないってところだ。富を自分の手に集めようとして用意した、できる限り大きい器……クリスタルも、それを入れ物にしたわけか?


 だが、あたしたちはすぐに、ひどく異様な事実に気づくことになる。その豪邸はロウシールドの内側にあったのだ。庭、噴水、植栽、そういったものはロウシールドの外で、見た目に色素をなくしているのに、豪邸だけが浮き上がっている。


 つまり───「ブリリアント・モーリオン・マキシマム・パワー!」どこからか聞こえてきた変身のキーワード。同時に、その悪趣味な建物全体が光の繭に包まれ、変貌していく───巨大な武装要塞だ。シトリンとアメジストもワープアウトしてきて、あたしたちの行く手を阻んだ。変貌した豪邸を本殿とするなら、阿の狛犬のようにアメジスト、吽の狛犬のようにシトリン。


 ───いきなりのお出ましだ。通すつもりはないらしい。


 「みずきさん」ゆきのがあたしの肩に手をかけた。「ここを引き受けるのが私たちの仕事です。予定通りに、私はシトリンを、さおりさんはアメジストを封じます。みずきさんは先に行ってください」


 「あたしについてきて!」めぐみが先手を切って、アメジストとシトリンの間のど真ん中を突っ切っていく。


 「通すわけにはいかないのよ!」めぐみを行かせまいとして、アメジストが動こうとした。ワープしようとしたのかもしれない。が、ワープエフェクトが生じるより早く、さおりのローズウィップが彼女の首をとらえた。


 「こっちもね、ゼッタイ行かせない」さおりが言った。「みずき! あたしをこんなにハタラカセてんだからね! 負けたらゼッタイショーチしないんだからね!」


 「わかった───まかせた!」


 さおりはアメジストを捕まえて一対一の勝負に持ち込み、同時に、ゆきのとシトリンの切ない対峙も始まる。


 信じる気持ちと、後ろ髪引かれる思いを同時に感じながら、あたしはめぐみを追い、アメジストとシトリンの防衛線を突破した。




 アメジストはローズウィップを振りほどき、再び動こうとした───しかしさおりは、ワープするかどうかの見境なしに、ウィップを再び飛ばし、手首を捕らえてアメジストの動きを封じた。


 これはこれで正解だ。これならクライミングさえする必要なく、アメジストをこの場に留めておける───さおりはもともと、足止め以上のことをするつもりはなかったに違いない。彼女は殴り合いで物事を片づけるってタイプじゃないのだから。


 「行かせないっつってんでしょ。……てゆーかここカイシャん中じゃないから。エンリョしてやんないから」


 「あなたなどに邪魔されるのは不愉快だわ」アメジストは再びウィップを振りほどいた。「知性のかけらもない、私利私欲でしか動かない、生命の中でいちばん愚かな存在に───いいでしょう。すぐにけりをつけて差し上げます。時間をかけず、手際よく片づけてしまえばいいだけの話」アメジストは逃れようとするのをやめ、さおりと向き合った。


 「あたしは確かにバカだけどさ」さおりが言った。「ひとあんまりバカにしてると、あたしいーかげん怒るよ。


 みずきもゆきのもめぐみも、みんな知ってる、あたしがバカだってコトくらい。実際頭わりぃもん。……でも誰も、だからあたしが嫌いだなんてゼッタイ言わない。ヘンな理由つけて人のこと決めつけたりすんの、ソレがイヤだってこと、めちゃめちゃわかってる。


 そうだよあたしはバカだ。あたし、自分のことしかわかんない。でもみんなそーじゃない? そんなバカが集まってこの星できてんの。みんな自分のことしかわかんないバカだけど、何もかもわかってるつもりになるよりはちょっとアタマいい」


 「そんな開き直りと傷の舐め合いが、いったい何の進歩につながるというの? 重要なことから目を背けて、向上のために知性を働かせることから逃げ出して、それどころか愚かであることに胸を張って。そうして滅びていくのね、あなたたちは」アメジストは澄まし顔で言った。


 「いーよそれでべつに、勝手にそう思っときゃ。だったらさ、ホロびるまであんたほっといてくんない? あんたカンケーないでしょーが!」


 「自らの生きる場所が滅びてもかまわない、そのような思考を抱く精神がこの宇宙に存在することさえ疎ましい! えぇそうよ、滅びなさい、一秒でも早くこの星から消えておしまいなさい!」


 「カンケーねぇっつってんの、ホントウッザい……そーゆー態度がいけすかないっつってんのよ!」さおりが叫んだ。「たいしたこと考えなくったってやってけんだ、あたしらは! ……あたしはねぇ、あんたみたいなのに丸め込まれて、自分が役立たずだってツブされそうなキモチになるのがいっちゃんムカつくのよ!」


 いつもは優しい目尻を精一杯吊り上げて、アメジストをにらみつける。「ヒトをバカにすんのもたいがいにしときなよ───そのバカに負けたら、あんた立ち直れないよ?」


 そして、戦闘開始を宣言した。


 「Climbing, Pink Vine!」


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