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あたしはひとしきり泣いて、それから涙を拭って、ベッドを下りた。
「ありがとう、みんな。───じゃ、行こうか」三人に、呼びかけた。「ムカツク奴らを、ぶちのめしにさ」
するとサンフラワーの声がした。彼もこの白い部屋の中にいたのだ。
「おはようございます、みずきさん───さおりさん、めぐみさん、ゆきのさんも、お疲れさま。……おかげさまで、いい武器が作れそうです」
「───ちょっと待て、」あたしは唖然とした。涙が引っ込んだ。「……武器?」
「精神体にダメージを与えるには、攻性粒子ではダメなんです。質量弾もキャプチャーモードも無意味です。説明しましたよね?」
「ヒマワリ、もしかして、あたしを何か実験台にしたか?」
「実験台だなんて、人聞きの悪い」サンフラワーがいつものヒマワリ顔であまりにあっけらかんと言うので、あたしは思わず悪態をついていた。「いつかコロス、てめぇ」
するとサンフラワーはヒマワリ顔をさらに緩めて答えた───「みずきさんはそうでなくっちゃ」あたしは急にむずがゆくなって、鼻をかいた。
「心が痛いですか、みずきさん? 体が痛いですか、みずきさん?」サンフラワーは、照れくさくなるほど、あたしの眼をじっと見つめて、言った。「それはよかった。やっぱり、僕の設計は完璧です。そして、僕の推測は正しかった。あなた方は、精神体を凌駕する宇宙最強の戦闘兵器です」
そういえばそんなことを言っていた。最初のフライングローズ上の戦いのときだ。あたしはあのときサンフラワーに尋ねた───なんでこの体には痛みが残っているのか、と。
「痛いですか、苦しいですか、でも、動けますね? ───精神体には、それができないんですよ。
感情をコントロールできない人間は愚かだと、言われたことがあるでしょう。でも、肉体のない我々精神体には、それは当てはまらないのです。
うれしければ笑い、侮辱されれば怒りに震え、好奇心が刺激されれば追いかける。感情と動作が一致する、それが精神体にとって『感情がコントロールできている』正常な状態なのです。……僕というキャラクターはあなた方から見て、常時とても温和で、満ち足りているように見えると思います。それはきっと、僕があなた方のデキにとても満足していて、カワイくてしかたがないからです。
けれど、複合しもつれる感情がいちどきに押し寄せ、どう行動していいかわからなくなるとき、精神体は本当に行動不能、あるいは自らを制御できなくなります。我々精神体にとって、それはまったく想定外の異常な状態であり、適応できる範囲を逸脱しているからです。クリスタルとみずきさんが一体どういう会話をなさったか知りません。でも、クリスタルはあなたの心情を理解しなかったはずです。いや、しなかったのではありません。彼には理解できないのです。だからあなたの感情が自分の理解できる範囲に入ってくるように、魅力的な言葉であなたの心を上書きしようとした。しかし結局、彼にはなしおおせなかった。
いつか言ったでしょう、あなた方は単純に精神体より強い存在なのだと。野暮な話かもしれませんが、それはおそらく、心と体が非合理的なままに連携を続ける、当たり前であやふやなゲンジツの人生というものが、はかりしれず強力だからなのだと僕は思います。まして、滅びる未来を背負う高速な進化のただ中で揉まれる時代にいるのならば。……そのまま進んでください、みなさん。胸を張ってローズフォースでいてください。
あなた方は最強の兵器です。あなた方がこうして、さまざまな矛盾を抱えながらも、前を向き、胸を張り、自らの意志で戦うこと、それこそが最強なのです」
サンフラワーは、白衣のポケットから白い筒状のものを取り出して、あたしに差し出した。ローズアームズに似ているようで少し違い、挽きながらかけられるコショウ瓶のようにくびれていた。
「ローズサイコパス、と名づけました───今はみずきさんにしか扱えませんので、後ほどレッドヴァインに組み込みます。精神体の、精神に対して直接攻撃できる、おそらくは唯一の武器です」




