憂鬱な帰り支度
夕暮れの教室。
窓の外には夕日に染まった葉桜がヒラヒラと宙を舞っている。
気がつけば俺とタクミ以外は下校したようだった。
外は運動部の掛け声だけが響いていた。
タクミからのツッコミも受け俺はタクミに助けを求めたとも言えるような質問をした。
「…どうしようか。」
姉からの頼みだ。
いくら手紙の書き方も文法も無視され、「愚弟」とまで書かれていても出来れば聞いてやりたい。
…しかし。
「どうしようって…ねぇ?」
タクミすら戸惑う内容だ。
俺には姉の期待に応えられない。
本当にもう…
どうしてくれようか、この手紙。
「そりゃあさ、アスナさんの願いだし聞いてあげたいけどねぇ。」
なるほど、同じ考えだ。
「でもタクミ、おまえ部活はいってるだろ。」
そう、佐渡 鐸は部活動未所属協会の会長補佐なのだ。
「ん?ああ、あれね。うーん。」
「?」
タクミが意味深に悩むので思わず頭の上に疑問符を浮かべる。
「あれは部活って言うかあくまで『協会』だからねぇ。ただの物好きの集まりと変わらないんだ。」
ああ、そういうアレか…。
「まあ、物好きの集まりってあたりは納得だが。」
タクミが少しひきつった笑顔で「まあね。」とだけ返してきた。
時刻は6時になろうとしていた。
春だと言っても、もうじき暗くなる。
「帰るか。」
と一言だけ呟き、帰り支度を始めた。






