放課後スクールルーム
夕方5時を過ぎた教室は生徒が少なく、昼に比べて幾分寂しげに思える。
タクミのジョークをとめ、話を切り出そうとした俺は少し考えた。
長い沈黙 (30秒くらいかも知れないが…。)の後に俺はこれからのタクミの生活にもしかしたら支障をきたすかもしれない1枚の紙を見せることにした。
「ん。」
「ん…?」
おれの差し出した紙切れを訝しげに眺めたタクミは特に何も言わずにそれを受け取った。
教室にいるのは部活に所属してない生徒が数人だけ。
静かな教室には本をめくる音、控えめな話し声、秒針が振れる音…。
…眠い。
どれくらいの時間が過ぎたのだろうか。
いや、5分くらいしか過ぎていないのだろう…。
ユラユラと揺れる体と重たい瞼を無理やり起こした。
「ん。」
タクミが2枚の紙を差し出してきたので目を通してみた。
1枚はアスナからの手紙。
そして2枚目がタクミの字で書き直されたアスナからの手紙だった。
目線を上げるとタクミは気だるそうな顔をしながら一言。
「アスナさんはその手紙、わざとやってんの?」
と。
と聞いてきた。
沈黙。
秒針が9回刻まれた後に俺は答える。
「アスナは超絶進学大学の学生だ。本気の冗談にきまってる。」
こうして俺たちは青春をつかみ損ねて行くのであった。