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榊原研究室  作者: 青砥緑
第四章 秋(後篇)
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静かで長い夜-3

 一度、仙台に追い返された猿君と赤桐は最初こそ克也のそばを離れることが不満だったが、1時間の移動のなかで徐々に冷静さを取り戻した。針生の言いつけどおりに体力回復に努めることが必要だ。今は医師に任せるしかない。ホテルの部屋についてベッドに倒れ込むと猿君はあっという間に意識を手放した。いつでもどこでも眠れる体質は便利だ。

 赤桐はまだ昂ったままの神経を落ちつけないと眠れそうにないと、シャワーを浴びようとしてようやく風呂上がりに着る新しい服がないと思いついた。衣類を一揃い調達してから安心してシャワーを浴びてやっと眠ることができた。


 深く短い眠りだった。二人は2,3時間で目を覚ました。すぐにでも病院に戻りたいが針生が用事があるから待っていろと言っていたので仕方なく、体を横たえて休めながら電話を待った。

「針生さん、病院を出る前に用事を言ってくれれば良かったのに。」

 珍しく猿君が文句を言う。

「聞いてたら、すぐ飛び出しちゃうからわざと黙ってたのよ。あの頑固おやじ。」

 赤桐も文句を言いつつ、それに思い当らず言われるままに帰ってきた自分もやっぱりだいぶ疲れていたなと思う。じっとしていると空腹感が襲ってきた。丸一日何も口にしていない。

「猿君、お腹空かない?」

 言われてみると猿君も空腹を思い出した。


 二人が近所のコンビニで調達した弁当を食べているとやっと針生から電話がかかってきた。

「ちゃんと休みました?飯は?」

 開口一番これである。お前は母親か、と赤桐は怒るよりも笑いそうになった。

「今食べてる。」

「そうですか、こっちに戻るときについでにやって来てほしいことを言いますよ。」

 針生はずらずらと用事を言いつけてきた。ただ自分達をホテルに足止めさせるためだけに言わなかったのではないようだ。あの意識朦朧とした状態でこんなに色々覚えられたとは思えない。

「こき使ってくれるね!」

 電話を切ってから毒づくと、すっかり食事を終えて出かける気満々の猿君に針生の指示を伝達した。


 早く克也の傍に戻りたくて仕方ない猿君は、ちょっと不満げだが必要な作業ばかりだったので諦めて雑用に駆け回った。病院に戻れたのは完全に日付が変わった後のことだった。そこでぼろ雑巾のような和男と最上を見てようやく猿君は針生が自分に一度休めと厳命した気持ちを理解した。


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