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榊原研究室  作者: 青砥緑
第三章 秋(前篇)
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奪還作戦 最上と猿君-5

 一方の最上が大木に指定された部屋に駆けつけた時には廊下にベッドが立てかけられ、その下で二人の男がのびていた。更にその奥の部屋ではポルターガイストのようにロッカーが暴れている。最上は足元に転がっている割れた注射器の欠片を拾って白衣のポケットに収めると開いている扉をのぞいてまわり、猿君が天井裏に去ったらしいことを理解した。天井裏に首を突っ込んで遠くから光が漏れているのをみると、最上は床におりて一つ上の階目指して階段を駆け上った。最上は頭の中で見取り図を立体化させて回転させる。あの光の方向に飛び出したら何があるか。脱出できないところへ逃げ出すほど愚かではないはずだ。逃げ道はどこへ繋がっているか。3階の窓の上を走って4階の非常口から建物にはいるか、跳躍力に自信があれば非常階段に飛び移れる。

 最上は4階の廊下を駆け抜けた。非常口のある部屋の扉を開けるとちょうど目の端に崩れ落ちる男の姿が映った。慌てて窓から首を出すと猿君が克也を抱えてフリーフォールしていくところだった。地面に落ちるまで見守らず、視線を横に走らせると建物から飛び出している階段部分の4階の窓辺に人影があった。何かが光っている。ライフル銃だったら猿君と克也は射程距離だ。もちろん自分もだ。眼鏡やタイピンだったかもしれないが、はっきり確認している余裕はなかった。最上はポケットにあった犬丸印のねずみ花火を思いっきり投げつけた。まっすぐ飛んで行った爆弾は男のいる窓の隣のガラスを割って階段室に着地した。力いっぱい投げれば地面との摩擦で発火するマッチ要らずの花火はガラスに激突した衝撃で発火していた。跳ねまわる花火にセンサーが反応してスプリンクラーが作動し始める。窓辺の男は悲鳴を上げ、慌てて4階の窓を振り返ったが最上は既に建物の中に引っ込んでおり姿を確認することはできなかった。


 最上は息を整えながら階段を早足で下り、白衣とIDカードを取り外して黒峰から受け取っておいたビジターカードを首から下げる。人が行きかうエリアに滑り込むとトイレに飛び込んで白衣をトイレに詰め込む。IDカードをポケットに忍ばせたまま頃合いを見計らってトイレを後にする。

 入る時のセキュリティは厳しくても出るときは甘いということはよくある。闖入者騒動冷めやらぬ受付もこれほど堂々と彼が退出することを予想していなかったようだ。誰に呼びとめられることもなく、最上はビジターカードを返却ボックスに放り込んだ。食堂から戻る人影に紛れるようにして受付を後にする。軽く駆け足でゲートへ向かうと赤桐のバイクが門番小屋の戸口を塞ぐように立てかけてあり、中で目を覚ましたらしい門番が騒いでいる。

 最上はバイクを立て直して、門番を出してやると動転している彼は自分が通した覚えのない男がいることなど気にもかけずに礼を言って受付の方へ走り出した。その後ろ姿を見送り最上はどけてやったバイクにまたがって研究所を後にした。


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