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榊原研究室  作者: 青砥緑
第三章 秋(前篇)
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奪還作戦 赤桐

 赤桐が田舎のファミレスを脱出することができたのは深夜というより早朝に近い4時のことだった。

 最上から連絡が入り、最上の車で仙台の駅まで移動した。駅の近くの大きなホテルに着くと教えられた部屋の扉をノックする。その時にはすでに5時近かった。扉を開けて出てきた猿君は無言で赤桐を中に入れた。狭いツインルームの窓際に最上がいた。

「ベッドが一個足りないじゃない。」

 とりあえず一睡もしていない赤桐は文句を言ってみたが、どうせ誰も寝る気はないと分かっていた。


「で、どうなってるの?」

 研究室を飛び出して以来、赤桐にはその後に起きた情報は何も伝えられていない。

 最上は黙って手を差し出して、愛車のキーを返させると、行く道々車の中で猿君に説明したことを含めてもう一度赤桐に説明した。吉野の車が爆発炎上したこと。吉野は意識不明、他に6人の男が重軽傷。男の一人がS&Kリサーチの理化学研究所に行く予定だったと言ったこと。克也のGPSはまさにその住所に止まっていること。そしてS&Kリサーチは江藤友助の最後の勤務先であり、四方田とのつながりも疑われるということ。

 赤桐はベッドに横たわって聞いていた。表情は目まぐるしく変わったが一言も口は挟まなかった。最上が説明を終えると、体を起した。

「つまり、克也はあの山の中にいる可能性が高いんでしょう?迎えに行かなきゃ。事情とか、どうでもいいよ。そんなの後でいいじゃない。」

 赤桐がそういうと猿君も頷いた。しかし、最上は壁に背中を預けながら黙っている。

「ちょっと」

 赤桐が迫ると視線を赤桐の方へ戻して、じっと見つめた。

「そうだな。行かなきゃな。」

 そうは言うものの、すぐに動く気配はない。

「ねえ、行く気あるの?車が爆発したっていったじゃない。恐喝未遂とも関係ありそうなんでしょ?のんびりしてたら危ないかもしれないんでしょ?もう一晩経ってるんだよ?」

 畳みかけられても最上動かない。

「克也は急にどうこうはされない。確認を取るからもうちょっと待て。」


 ポケットから携帯を取り出して電話をかける。

「最上です。赤桐と合流しました。そちらに状況の変化は?警察はどうなってますか?」

 電話をとった榊原教授からの返事は芳しいものではなかった。吉野の意識は戻っておらず、警察も克也の行方を追ってはいるものの宮城に駆けつけるという話は出ていないという。

「GPSの件は?」

 大木が克也を追いかけていたGPSは普通の携帯端末についているものではない。誘拐未遂以降に大木が開発したもので、克也の腕時計に仕込まれている。その話を警察にしたのかと確認すると、榊原教授はまだしていないと言う。一つでもこの手のツールがばれれば、芋づる式に大木の違法行為が明るみに出る可能性があるので最終手段として伏せてあるようだ。最上は状況報告を聞くと電話を切った。続けてもう一件電話をする。相手は苦労して探し出したS&Kリサーチに詳しい女性だ。

「おはよう。ごめん、起こしたかな。ちょっと急ぎの用事があって。うん、うん、そう。」

 一本目の電話と明らかに調子の違う柔らかい声に赤桐と猿君は顔を見合わせた。最上の背後にピンク色のオーラが見える。バラの香りがしているような錯覚まで覚えた赤桐は折角起き上がったのにベッドにまた倒れ込んだ。

 猿君にはそこまでの効果はなかったが、とうとう耳を塞いで丸くなってしまった赤桐をみて色々と思うところがあった。

 そんな2人にはお構いなしに急ぎの用件とやらを済ませた最上は、電話を切るなり、いつもの研究室での調子に戻った。

「真っ向から迎えに行っても絶対に克也は取り返せない。手はずを整えるまで待て。お前らは今のうちに少しでも寝ておけ。」

 赤桐が不服そうな顔をすると口を開く前に手で制した。

「赤桐は車かバイクかどっちかで逃げる役をやってもらう。克也を乗せるかもしれないからちゃんと寝て、体力を温存しろ。」

「バイク?持ってきたの?」

 赤桐が驚いて聞き返すと、2人そろって頷いた。

「手はずを整えるのにどれだけかかるの?」

 赤桐は今にも飛び出しそうだが、それは猿君も同じことだ。この二人を目の届くところに置いておかないと暴走すると思って連れてきたのだ。

「一人、先に例の山の中に潜り込ませる。朝一で入らせて報告を受けるまで。3時間はかかる。」

「そんな悠長な!」

 赤桐は地団駄を踏んだが、最上は動じない。


「無事に救出したいなら、準備ができるまで待て。」

 そう言うと動かなくなってしまった。

 バイクも車も動くもののキーは全て最上が持っている。赤桐と猿君はじっとしているより仕方がなかった。


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