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榊原研究室  作者: 青砥緑
第三章 秋(前篇)
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事件発生 榊原研究室-1

 克也が事件に巻き込まれたと榊原研究室の面々が認識したのは吉野が乙女に電話を入れた10分程度後のことだった。山城乙女から榊原研究室に克也が尾行を受けているらしいと電話が入った。このとき、研究室には犬丸と黒峰と榊原教授しかいなかったが、会議中だった最上は即刻呼び戻された。最上は珍しく駆け足で研究室に戻ってきた。黒峰の記憶にある限り研究室に全力で走って帰ってくる最上を見るのは初めてだった。学生達には犬丸が連絡し、実験室に散っていたものを呼び戻した。

 最上が事情を聞いて、学生たちに作業を指示しようとすると既に全員が部屋に戻っており、かつ大木がGPSによる克也の所在地探索を開始していた。

「実習の時もそのくらい察しがいいと有難いんだがな。」

 最上は苦笑いしたが、全員聞こえない振りだ。検索結果はすぐに出た。

「最上先生!克也のGPSが変な方向に移動してます。今埼玉です。」

 東京都内の移動で敢えて橋を渡って隣の県に入る必要はない。確実に異常なルートだ。これを聞いた時点で克也がなんらかのトラブルに巻き込まれたと判断された。

「どこだ。」

 最上が問い返すと、大木の画面がプロジェクターにつながれて地図が大きく壁に映し出される。彼らの見ている前で克也を示す赤い点は克也の家に背を向けるようにずっと移動していく。最上は赤桐に追跡を指示した。移動し続ける位置情報をナビしたいのでバイクは不適である。最上は自分の車のキーを押し付けた。赤桐は頷いて受け取ると踵を返して歩き出した。

「見つけるだけでいい。一人で突っ込むなよ。」

 最上がもう一言かけるのを背中で聞いて赤桐は研究室を出て行った。赤桐が出て行くと、最上は教授室に戻ってトランシーバーを出してきた。大木に手渡す。

「俺の車のラジオにつながる。赤桐から連絡が入ったら電話を切らせてこっちでナビしてやれ。あいつに片手運転させるな。」

 最上が自ら改造した車に乗っていることは周知の事実だが、足回り以外まで手を入れているとは思わなかった。なんて特殊な仕込みがしてあるのか、と大木は時と場合を忘れて羨ましく思ったがすぐに真顔に戻って頷いた。

 最上の予想通り、赤桐から電話がかかってきて今のGPSの位置を教えろとがなりたてる。何とかラジオをつけさせて無線をつなぐと確かに交信できた。

「まだ高速でいいです。そうです。」

 克也のGPSはずっと北に向かっている。ただし、本人がGPSと一緒の位置にいるかどうかは分からない。大木特製の克也のGPSは分かりにくい形をしているから誘拐犯に奪われる可能性は低いが、万が一ということがある。


 赤桐の追跡が続いている間にもう一度黒峰の机の上の電話が鳴った。今度は警察の連絡を受けた山城家から、吉野の車が炎上したという連絡だった。

「江藤君を送っていた車が炎上した状態で路上で発見され、運転していた家政婦の吉野さんは病院に運ばれて重体だそうです。他に複数の男性が発見されて同じく病院に運ばれていますが、江藤君が含まれているかどうかは分かりません。」

 黒峰が電話を終えて報告すると、誰もが一瞬黙り込んだ。位置情報を確認する大木と赤桐の会話だけが続いていた。

「車が炎上?」

 針生が信じられない、と呟いた。

「車が炎上した原因は?」

 犬丸が質問すると黒峰は首を横に振った。

「猿、病院に付き合ってくれ」

 最上は教授室に戻ってバイクに乗る用意をしてくると猿君を伴って出て行った。もし病院に克也がいたら、一刻も早く傍に行って身の回りの安全を確保しなければならない。吉野の傍にも人がいた方がいい。最低2人はボディーガードになりそうな人間が必要だった。


 慌ただしく二人が出て行くと、榊原教授は自分の席に戻って、じっと目を閉じた。呼吸を落ちつけ精神を集中する。一体誰が克也に手を出してきたのだろうか。


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