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榊原研究室  作者: 青砥緑
第三章 秋(前篇)
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事件発生 山城乙女

 吉野の電話を受けた時点では家には山城乙女しかいなかった。電話を切るとすぐに和男に連絡し、ついで榊原研究室にも連絡した。吉野の電話を受けたときの場所からなら15分もあれば帰宅できる。しかし、待てど暮らせど二人を乗せた車は戻って来ない。

 乙女は最悪の事態を想定した。警察に通報したのは電話が切れてから30分後。警察から折り返し連絡があったのはその10分後だった。山城家の車が、何らかの事件に巻き込まれ怪我人が病院に搬送されたという内容だった。怪我人は女性一人と複数の男性。免許証が照合できた吉野を除いて身元は不明。いずれも重症ということだった。聞いた通りの内容を榊原研究室に連絡する。電話を切ると額に電話を押しあててダイニングの椅子に座り込む。

 男性達の中に克也がいるのかどうかは警察からの連絡では分からない。克也が難を逃れて家を目指している可能性がある限り家を無人にはできない。和男が帰るまで、病院へは向かえない。祈る思いで家に留まっているとすぐに榊原研究室から連絡が入った。乙女の状況を察し、研究室の学生が病院に向かってくれると言う。吉野とはもしもの時の話をいつもしている。とにかく克也の安全が優先だ。逆に自分が病院に居ても吉野は家を無人にはしなかっただろう。心配で飛んでいきたい気持ちを押さえて病院の方は学生に任せることにした。


 どれほど待ったか分からない。やっと玄関のチャイムがなり、和男が帰ってきた。靴を履いたまま状況を聞くとその足で病院へ向かう。

 和男と入れ違うようにもう一度、榊原研究室から連絡が入った。病院に克也はいない。克也の行方は知れなくなった。乙女は目の前が暗くなるのを感じた。電話を握りしめたまましゃがみこむ。電話口からはまだ女の声がしているが、乙女には聞こえていない。


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