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榊原研究室  作者: 青砥緑
第二章 夏
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江藤克也の回想

 最初の記憶は何だろう。



 赤桐さんに聞かれてから自分の記憶について考えてみた。

 昨日のことも、一昨日のことも朝、目が覚めてから夜寝てしまうまで全部ちゃんと覚えている。すごく古い記憶は何だろう。山城のおうちに来た日のこと?それは、ちゃんと覚えている。和おじさんの車でおうちについて、車を降りたら玄関から吉野さんと乙女さんが出てきて家の中に連れて行ってくれた。家にはもう僕の部屋があった。今はもので一杯の本棚も、その日はまだ空っぽで、「これから、好きな本を揃えて行きましょうね」って言いながら乙女さんが頭を撫でてくれた。お夕飯はハンバーグだった。美味しくて食べ過ぎて白いご飯が食べられなくなってしまったけど、その日は怒られなかった。「明日から少しおかずを減らしましょうね」って吉野さんが言って残念に思った。お風呂は和おじさんと一緒に入った。お風呂からあがったら、見たことがない新しい寝巻があった。「今まで着ていた服はどこ」って和おじさんに聞いたら、「今日からはこれを着よう」って言われた。着てみたら少し布が固くて本当に新しい服なんだって思った。

 山城のおうちに来る前はどこにいた?おじいさんのところだ。おじいさんの家を思い出す。覚えている。おじいさんの家にはいつからいた?生まれた時からずっといた?覚えていない。おじいさんの家で過ごした毎日はエンドレスに思い出すことができて、どれが最初だったかわからない。

 ずっとずっと丁寧に思い出そうとしてようやくたどり着いた。僕の最初の記憶はおじいさんの家で、大きな浴衣を着て寝たことだ。子供用の服がなくて、おじいさんの浴衣を借りて寝た。大きすぎて起きたらみんな脱げてしまっていた。おじいさんに見つかる前にもう一度着ようとして、できなくて、色々試していたらおじいさんがやってきて笑って、僕の服を渡して着替えを手伝ってくれた。



 それが最初の記憶。それより前のことは何一つ思い出せない。


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