合宿の夜-1
一同はそれから程なく大徳寺家の別荘へ戻った。連なって歩く一同はやはり注目の的だった。お互いに妙に目立つのは他の人が悪いと思っているので、明日も改善される兆しはない。
別荘につくと、まずは風呂に入れと犬丸に指示された。家族以外と一緒にお風呂に入るというのも克也にとっては初めての経験だ。別荘の風呂はシャワーが4つも付いていて湯船も大人が6人は入れる大きさだ。
克也が大木と猿君と並んで風呂に入りながら少し後から入ってきた最上や針生が体を洗うのを眺めていたら、二人にちょっと嫌な顔をされた。
「克也、人が体洗ってるところをまじまじと見るな。緊張する。」
最上に指摘されて克也は慌てて目を逸らして「ごめんなさい」と謝る。
「僕ももう少し大きくなるかなあ」
細い腕を持ち上げて克也はもう一度視線を皆の方へ戻して見比べる。大人たちの体つきを見ていたのだ。皆引き締まって、筋肉がついていて逞しい体つきだ。克也はまだまだ子供の体型である。
「ここにいるのはあんまり一般的なサンプルじゃないからなあ、あんまり気にしなくていんじゃない?」
大木が励ます。どこでどういうトレーニングをしているのか知らないが最上は明らかに鍛えている体つきをしている。38歳と自己申告しているが未だ贅肉の欠片もない。針生は言うまでもなく趣味がトライアスロンだ。筋肉の標本みたいな体をしている。猿君はそもそも規格外だし、大木にしてもスパイは体も強靭でなければならないという信条の下で格闘技の練習をしている。普通というにはちょっとやり過ぎである。
「そうですか」
克也は期待に満ちた目で大木を見上げて、もう一度自分と大木を見比べた。
「少し体を動かすといいよ。」
そう言ってトレーニング談義が始まると、全員参加で喧々諤々の議論が始まった。風呂を上がってもそれは延々と続き、広い和室で簡単な筋トレ法の紹介大会まで始まった。
その頃、女子部屋では化粧をしていない黒峰の顔をはじめて拝んだ赤桐と、同様に眉毛のない赤桐の顔をはじめてみた黒峰がいつになく打ち解けて化粧品を並べ、お勧めのケア方法について語り合っていた。