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榊原研究室  作者: 青砥緑
第二章 夏
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海辺の面々-4

 パラソルの下には最上がだらりと寝そべっていた。大人の海での過ごし方は不活発この上ない。

「買ってきました。」

 猿君がどすんと袋を下ろすと、最上は呆れながら起きあがった。

「お前これ、買いすぎじゃねえの?」

 お釣りを受け取ろう出した片手にビールを渡された。

「何?全部使ったのか。」

 猿君が早速いか焼きを食いちぎりながら頷く。

「大人買いだな。お前らはどれを食べようかと小銭を握りしめて真剣に悩む楽しみを克也に味あわせてやらなかったのか。」

 そんなこったろうと思ったと思うものの、一応文句を言う。

「まずは全部味を知ってからの方がいいと思って。」

 猿君は口答えしつつ、食べかけのいか焼きを克也に勧める。克也は一口齧って美味しいと微笑んだ。頬に醤油がついている。


「わーい、焼きそば。ソースの匂い。」

 お祭り好きは大抵ソース好きである。赤桐もご多聞にもれずソース好きだ。振り返って赤桐の方を向いた最上が「おい」と文句をつけた。

「お前、あぐらはよせ。つうか泳ぐんじゃねえなら何か着ろ。」

「はーい」

 ビキニで胡坐をかいていた赤桐は手近に会ったタオルを膝の上に広げた。密かに目のやり場に困っていた猿君もほっとする。赤桐の膝の内側には大きな手術痕が残っており本当に目のやり場に困るのだ。克也は自分も泳いでないので何か着た方がいいのかと慌ててカバンの上に放り出していたTシャツを取り出した。

「ああ、克也、お前はそのままでもいい。腹が冷えそうなら着といた方がいいけどな。」

 最上が止めてやると、克也は素直にTシャツを戻して元の場所に戻った。

「なんで僕は良くて、赤桐さんはダメなんですか?」

 素朴な疑問に最上もうっと詰まって猿君の方を見た。猿君は口いっぱいに唐揚げを頬張っており助けにならない。

「あれは肌を出し過ぎなんだよ。それは日本ではハシタナイと言ってな、歓迎されないんだ。特に女性の場合な。その上胡坐をかいて食事をするなんて言語道断だ。」

 最上は諦めて自分で説明する。

「ちょっとー、それじゃ、私がはしたないみたいじゃない。」

「みたい、じゃなくてそうなんだから文句言うな。そんなカッコで胡坐かく奴があるかよ。」

「だって、この方が座りやすいんだもん。」

 二人がぎゃあぎゃあと言い合っている間に、克也は唐揚げ、フライドポテト、焼きそば、フランクフルトと海の家の人気メニューを一口ずつ制覇していった。克也の聞き流すという技術は格段に上達している。焼きそばはなんだかぽそぽそしているが塩気が強くておいしい。猿君もせっせと食べ続ける。どうせ赤桐と最上は大した量は食べないので遠慮はしなかった。


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