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榊原研究室  作者: 青砥緑
第二章 夏
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海辺の面々-2

 海に突入した猿君は体毛が濡れて張り付き、人間離れが進んでいる。克也と遊んでいるのか克也が海坊主に襲われているのか微妙な姿だ。

 針生は、一人黙々と場違いなほど真剣に準備運動をしてから海に消えて行った。当分戻って来ないだろう。

 大木は赤桐の目を盗んで逃げ出した。ひと夏の出会いへの未練が立ちきれなかったのだ。


 残りの大人たちは海に触れもせずに砂浜に落ち着いた。赤桐はパラソルの下で居心地のいい空間を作ってしばらく海を眺めていたが、肌が焼ける気配に日焼け止めを塗り忘れていたことに気が付いた。迂闊だった、と思い身の周りを見回すが、残っているのは最上と犬丸だけである。居残る2人のどちらにも背中に日焼け止めを塗ってと頼みたくない。こんなことなら黒峰がくるのを待てばよかった。最後の手段だと克也を呼び戻すことにする。


 克也が呼び戻されたので猿君も帰ってきた。確保したパラソルの周りに寝転んで体を乾かす。

「猿、お前なんだか今日はジュゴンみたいだな。」

 ビールを買いに行ってきた最上が転がる猿君に声をかけた。

「ジュゴンって人魚のモデルですよね」

 この半年弱で飛躍的に雑学が増えた克也が日焼け止めを塗りながら声をかける。寝そべる赤桐の背中に克也がせっせと日焼け止めを塗っている姿はマダムと若い燕といいたいところだが、赤桐にマダムの貫禄が若干足りない。

「そうだ。よく知ってるな。」

 最上に褒められて克也は針生に教えてもらったという。


 針生の与える情報の選択基準は良く分からない。


 今日限りのジュゴン君はお腹が空いたらしい。最上のビールを見てしばらくじっとしていたが、克也が日焼け止め塗りから解放されたのを見て遅い昼ごはんに誘った。

「あ、私も行く。」

 赤桐も立ち上がってついてくる。

「これで俺に食いもん買ってきて。」

 最上はしまおうとしていた財布から、お駄賃を渡す。

「先生、自分で行った方がおまけしてもらえますよ。」

 猿君が五千円札を握って聞き返すと、最上は嫌そうに首を振った。

「それよりギャルに取って食われそうで怖い」

 どうやら、ビールを買いに行っただけで随分と人に囲まれたらしい。赤桐の傍にいると多少周りが遠慮してくれるので今日はなるべく傍にいようと思う。海は久しぶりだが、こんなに女子が猛々しく狩りをする場所だったかと首をかしげる。若い女子に言い寄られて嬉しくないなんて年なのかもしれない。しかし、おじさんだと言われても最上は目の周りを白やスカイブルーで囲む新種のメイクは受け入れられなかった。


ジュゴンが人魚のモデルであると聞いたとき、人間の想像力は本当にすごいと思いました。

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