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榊原研究室  作者: 青砥緑
第二章 夏
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海辺の面々-1

 黒峰と榊原教授の到着を待たずに海に出ると、夏の砂浜は人で溢れていた。

 その混雑の中においても一行は色んな意味で目を引く集団だった。とにかく目立つのは身長二メートル近い分厚い巨体を黒い毛に覆われた猿君である。首から下は殆ど体毛に埋まっているのに顔と頭がツルツルに剃られているので益々異様である。しかも体のあちこちに傷跡に沿って毛がない部分があり一層怖い。その海坊主のような生き物の腕にぶら下がるように小柄な少年が歩いているが、可愛らしさで中和するどころか二人の体格差が強調される結果になっている。猿君の進むところにはすぐに道が開けた。



「モーセだな。」

 その後ろを悠々と歩いていく針生と犬丸は、薄着になると日焼けして引き締まっている針生と白くてたっぷりしている犬丸の好対照の体格が明らかになり、それはそれで気になる二人連れだ。犬丸のこだわりの長髪はさすがに束ねられているが何の救いにもなっていない。すれ違った若者たちがゲイのカップルかどうか囁き交わしている。どっちのペアのことを疑っているのかは分からない。



「連れだと思われたくないな」

 サングラスをかけてアロハシャツを肌蹴て着ている最上は辺り一帯の女子の熱い視線を一人占めだ。今日は長い前髪を適当に下ろしていてとても四捨五入して40歳には見えない。

「私は、最上さんの連れだと思われたくない。海で足引っ張られそう。」

 パレオワンピースの下は派手なビキニで年甲斐などどこ吹く風の赤桐はちょっと嫌そうに最上の傍を離れる。あの子、彼女?という女子の視線が怖いからだ。

「じゃあ、前のチームに合流すりゃいいじゃねえか。」

「それも嫌なの。」

 口を尖らせた赤桐は後ろを振り返って、完全に俺は知り合いじゃありませんという顔をしている大木を手招きした。

「一人だけ逃げようと思うなよー。」

 ニヤリとして腕を引かれて大木はため息をついた。このチンドン屋みたいな一行と一緒にいてひと夏の出会いは期待できない。


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