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榊原研究室  作者: 青砥緑
第二章 夏
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合宿へ行こう-2

 克也の家の前に大きな車が止まったとき、克也はそれが迎えにきた犬丸の車だと気が付かなかった。いつもの黒塗りの黒い硝子の車ではなかったからだ。明るい色の家族向けの長い車の後部の窓から大木の顔が見えて、ようやく気が付いた。


「おはようございます。」

「おはよう。」

 犬丸の車に乗りこむと、もうだいぶ顔なじみの大徳寺家の運転手の他に、犬丸、大木、針生が揃っていた。ピックアップは克也が最後である。克也にとっては人生初旅行の始まりである。黒峰がイラスト入りの合宿の栞を用意して配布してくれていなかったら、克也はカバンに何を詰めていけばいいかさっぱり分からなかっただろう。何度も乙女と吉野が中身を確認して太鼓判をおして送りだしてくれたカバンはいつもより随分と大きい。荷物を3列シートの後ろに押し込むと、車は一路熱海へ走り出した。


 明け方までバイトが入っていたという針生は車が高速に入るとうつらうつらし始めた。眠る針生が珍しいのか犬丸はすかさずカメラを持ち出してせっせと寝顔を撮影している。この二人は本当に仲が良いな、と口に出したら怒られそうなことを思いながら大木は克也と二人でしりとりに興じていた。こういう暇つぶし系のゲームも克也はたいていやったことがない。

「こういう意味の無さそうなことで暇をつぶすのが遠足とか旅行の移動って感じがするんだよ。」

 何故しりとりをするか、という疑問にそう大木が答えると克也はしりとりに挑戦することを決めた。やってみれば分かるという最上のいつかの教えは大抵の場合、有効だった。克也は素直にその教えに従うようにしている。実際に意味もなく言葉を連ねて行くだけという遊びは面白いという程ではなかったが、意味のないことを繰り返す自分や、いつも一緒にいる人の写真をとる犬丸など、いつもの人がいつも通りじゃないことをしている様子が、興味深かった。

移動の車中って楽しいですよね。

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