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榊原研究室  作者: 青砥緑
第一章 春
33/121

落とし前、つけます。-2

 四方田が黒だと確信してから、今日に至るまで最上は徹底的に四方田の悪事の証拠集めを行っていた。基本的に行きがけの駄賃とばかりにダウンロードしてきた四方田のコンピューターのデータを元に、昔から仲良くしている某西大学の秘書や事務員の皆さんの手を借りてこつこつと取引記録や通話明細を集めていったのである。克也を襲わせた件の証拠はメール2本しかみつからず、罪に問うには不足があったからだ。二度と四方田に刃向わせないと思えるだけの証拠を集めるのに時間がかかり、本日やっと作戦決行となったわけである。


 本来であれば普通に呼び出して釘をさせば終りなのだが、今回の証拠集めに駆り出された大木と犬丸から、そんなんじゃつまらないとクレームがついた。折角だから大げさに追い詰めたいという。無給でこきつかった覚えが大いにある最上が折れて本日の舞台設定になった。榊原教授が四方田と顔を合せるのは自分と最上だけだという点のみ絶対に譲らなかったので、帰宅時間の制限にひっかかった克也を除く全員でキッチン裏で立ち聞きということになった。これを不服とした大木は、交換条件に最上にミニマイクを付けて四方田にかけるセリフまで指定した。最上としては不本意この上ないことである。


 キッチンの扉から顔を出して赤桐が質問する。

「教授、最後のって要するに「きっちり落とし前つけてやるぜ」って意味ですよね」

 教授はニコニコしているだけで否定しない。

「えー、僕は約束しなければ情報流すぞって意味かと思った。」

 犬丸が店のキッチンスペースから出てくる。

「どっちでもあるんじゃないのか。」

 針生も犬丸に続いて入ってくる。

「教授、あのメールなんだったんですか?」

 猿君の質問には大木が答えた。

「乗っ取られたって言い張ったメールアドレスから、本人宛にメール出したんだよ。本当に乗っ取ってやったわけ。中身は四方田さんのデータベースのトップシークレットフォルダへのリンク。」

 タイミングを見計らって送信実行したのは当然マイクまで使って盗み聞きしていた大木だ。

「素直に認めれば、メールは出さないでおいてあげたのに。」

 本当かどうか分からない同情を口にしつつ大木は、大好きなスパイごっこが完結したことに大変満足な様子だ。

「これで、しばらく静かにしててくれるといいんだけどな。」

 その最上のセリフに一同深く頷いた。

「山城さんには明日報告を入れておこう。黒峰君、よいかな。」

 榊原教授が運転手の格好のままの黒峰に声をかけると、彼女はいつも通り頷いた。仕草はいつも通りだが、見た目がまるっきり変わっている。女はメイク一つで化けるものだと男性陣はしみじみその姿を眺めた。

 今回、大木と犬丸が描いたシナリオを実現するには運転手が必要だったのだが、榊原教授が学生の登場を許さないのでやむを得ず黒峰に依頼した。いつも通り驚いた様子もなく引き受けた黒峰が、あまりに完璧な変装をして登場し誰もが度肝を抜かれた。余りに堂にいった運転手スタイルに犬丸の中ではコスプレマニアではないかという疑念さえ生まれた程だ。そう思えば普段、必要以上に秘書らしい秘書スタイルをしている気もする。全員のもの言いたげな視線が気になったのかどうか分からないが、ジャストフィットの運転手の制服を着た黒峰は、ここでの仕事は以上と確認すると一足先に帰って行った。


克也襲撃編 終了です。

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