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榊原研究室  作者: 青砥緑
第一章 春
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本編主人公 天才と野獣

 江藤克也15歳。国内最高学府、東東大学の3回生である。傷みのない黒い髪は品良く切りそろえられ、大きな黒いリュックを背負った細い体は15歳にしてはずいぶんと小柄でまだまだ成長途中だ。ジーンズにTシャツまたはジーンズにポロシャツ以外の服装の彼に会いたければ、寒い冬まで待つしかない。そうするとジーンズにセーターを着た克也少年を見ることができる。


 江藤克也についてもう少し触れよう。

 克也は天涯孤独である。知りうる限りにおいて存命中の係累がない。数年前まで父方の祖父が生きていたが、病気で没した。父母はそれ以前に他界している。母の係累については語れる人物がいないため遡ることができない。

 克也少年は父方の祖父の下で育ち、祖父亡き後は里子に出ていた。引き取ってくれたのが現在同居中の山城夫妻である。

 山城和男は見るからに子煩悩な好人物ではあるが40過ぎで定職がなんだか分からない上に家を不在にすることも多い風来坊である。山城乙女は夫よりいくらか若い有能な人物で、和男に代わって家計を支え、克也を育てている。乙女の仕事は山城酒店の社長である。山城酒店は、もとは山城酒造という造り酒屋の二男だか三男だかが独立して作った卸売会社だ。山城の本家は今も石川にある健在の富豪である。

 克也は13歳で大学生になった。試験は免除だ。高校生科学コンクールに応募したレポートの内容で代替された。大学生になって1回生、2回生と順調に修了した克也を待っていたのは、11歳で高校に入学した時のような意地の悪い好奇の目ではなかった。大柄で毛むくじゃらでほこり臭い男子学生だった。彼の名を猿渡という。猿渡とかいてサワタリと読む。音は爽やかなのに、見た目が毛むくじゃらなので、あだ名を猿君という。


 猿渡桂蔵24歳。国内最高学府、東東大学をあわや放校されんとした大学生である。伸び放題のくせ毛は絡まり合いそこここで巨大な毛玉の様相を呈している。大きな体に大きな顔と大きな頭が乗っている。顔は髭に覆われており下半分は良く見えない。濃い眉の下に大きな目がぎょろりと光っている。背中に土嚢のようなものを背負っているが、良く見ると昔はキャンパス地だったと思われるリュックである。春の新学期に戻らねば放校する、と学校から通知がきた親から放校になったら仕送りを止める、と通知が来た下宿の大家から仕送りが切れたら置き去りにしている荷物を全部捨てる、と脅されて学校に舞い戻ってきた。それまでマレーシアの奥地に滞在していたらしい。学校から姿を消して4年程経っていたので戻ってきても、ほとんど知り合いがいなかった。その数少ない知り合いも、彼の変わり果てた姿に本人と見抜くことができなかった。


 猿君と克也の出会いは当然の成り行きであった。こうした扱いにくい学生を扱える人物は限られている。よって、二人が師事することになった教授が同一人物だったのだ。


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