空と麦
短いです。
コードネーム空、それが今の俺の名前だ。幼い頃から坊ちゃんに支えて「いつも空から見てるみたいだから『空』ねと言われて早半世紀を過ぎようとしている。坊ちゃんも五◯を超え伴侶として申し分ない未来が見える姫君と出会いを果たした。側仕えしている身としては申し分ない半世紀だったといえる。ただ坊ちゃんから姫君の監視を言い渡されて少し自分の息子【陰部】が困ったことになっていることは坊っちゃんには言えない秘密なのであった。
「空また姫君のリラックスシーン見てるの?」
声をかけてきたのはプラチナブロンドの髪の長い女性その髪色から『麦』というコードネームを承っている麦だ。
「いいんだ麦、俺は、俺にはこの画面だけなんだから! 坊ちゃんと姫君にはちょいとばかし悪い気がするけど姫君が俺たちが見てるの知ってて股を開くのが悪いんだ」
「ただパンチラが見たいだけでしょ?」
「なんとでも言え! パンチラは世界共通の漢のロマンなんだよ! 分かれよ麦? いやわかんないだろうなぁこのロマンが女のお前には」
俺がそう言うと麦は心底呆れたと言った風にため息を吐き現在の姫君の様子を見に隣のデスクへと腰をかけるのだった。
ふんっなんとでも言え。姫に関しちゃ俺の方が断然わかってるつもりだ。
見られてもなんとも思っちゃいないんだよ、あの子は。と、思う。本当のところなんて人の皮を被ったバケモノみたいなお嬢さんを普通の人と同等に扱おうって方が難しいってもんなんだぜ。麦さんよぉ? と思ってたら麦が血相変えて出てきた。
「姫がまたどっか行った!」
乱れた髪がより一層女を上げてる麦が言うには俺が確認していたつい一◯分ほど前までは家にいたもののGPS機能を付けた家の鍵も、財布も、そして極めつけにスマホも持たずに家を出たらしい。
鍵も持ってないという事は母親か父親と一緒に家を出たんだろうけどあのお身体だ。
早く家に帰してやらないと身が持たないだろう。
坊ちゃんの要請で姫君には身体を重くする呪いをかけてある。
「まずいな。早く知らせてやらないと坊ちゃんにどやされるぜ」
「ほんと姫は何でもかんでも知ってらっしゃるから出し抜くのも坊ちゃんより上手なのよね」
「姫は自分がどう言う立場にあるか全くわかってらっしゃらないからな」
「まぁ、姫は何も悪気はないんだろうし、悪くもなく、坊ちゃんの都合なんだけどね」
「だからって、いくら体調が少しばかり回復したからって坊ちゃんが、えいって言えばまた吐く羽目になっちまうし、もし平和農園なんざいこうものならこっちだってGoサインだして呪わなきゃならねぇ。まったくとんだお転婆さんだぜ」
「まぁ、なんにしても見つけ出さなきゃ、母親の方の車の位置から割り出すわよ。なんとしてでも見つけ出して様子を見なきゃ」
「坊ちゃんもこんな回りくどいのやめればいいのにな」
最後の俺の一人ごちは闇の中へ消えて、俺たちは車を走らせた。
やってきたのは田園風景がのどかな片田舎。
姫君の祖母宅近くだ。
何をしているのかは大体想像が付く。
祖母孝行だ。
「『あんたなんか孫じゃない』って言ったばあさんに孫としてちゃんと孝行しようってんだからほんと物好きなお嬢さんだよな」
「まぁそうね、それくらい優しい心がなかったら四六時中監視されてるってわかってて自分の男やその周囲を許さないでしょうよ」
「麦さんのおっしゃる通りだことで」
皮肉たっぷりに言ったつもりではあるが、いかんせんどうして姫のことは俺たちも気に入ってしまっている訳で、遠くの道路から『そろそろ帰って来いよー』と合図の音楽を鳴らすだけだった。
その日は胸の奥がそっとあったかくなる感じがしながら姫が家に帰ったのを見越して吐かせて、トイレでぐったりする姫の生着替えと寝顔をこころいくまで見て終わった。
俺のばあちゃんなんざもうこの世には居ないが、居ないはずの祖母がそっと微笑んだ気がして、俺がしていることなんざ褒められたもんじゃあないってのはわかっちゃいるんだが、姫の行動が微笑ましい。それを知っている自分が誇らしい。姫が怒らないことが、怒らないということだけが、自分を肯定してくれているみたいに感じて、許されていると、錯覚してしまう。
それが俺ではなく主人である坊ちゃんが、坊ちゃんだけが許されているものだったとしても、この生着替えを毎日チェックしているのは俺の方な訳で、ほう、っとあったかくなりながら、トイレで綺麗に横たわる姫を見ていた。
____
そして悲劇は起こった。
俺がいつも見たく姫を見ていたら今度は何処でもここでも姫が脱ぎ出した。
全部脱ぐ訳じゃないのが姫のいいところで、俺のシコリ根性が度腐れて、モニター越しに「脱げばいいのに」と言ってしまったのだ。
このモニターは姫の部屋でも聴こえるレベルで警報を鳴らす役割がある。
聴こえちまったらしい。
坊ちゃんからお咎めがあった。
姫は報復があるんじゃないかと心配したらしいが、俺が画面が見れなくなっただけで音声はそのまま。
車でも跡を追うのもそのままという形でほぼほぼお咎め無しで終わった。
ものの、姫が見れない。
これは俺の中ではかなりのストレスとなった。
____
姫のわがままが始まった。
『結婚してみたい』と、なったらしい。
「坊ちゃんは表向き何もしてないパチンカスだからなぁ」
俺が独りごちてると後ろから麦が
「そうなのよ、坊ちゃん何もしてない定で生きてるから腐ったようなものまで食べるし、ちょっと死にたがりなのよね、本当は坊ちゃんだって結婚したいだろうに国際情勢的にも今は不利で、子どもまで育てたいとか、。姫はかなり鬼よね。できっこないってわかてるでしょうに」
「それだよなぁ。しかも、姫は坊ちゃんから離れたくなんかないのに、『一時的にだけど別れてね』って冗談でも、坊ちゃんが可哀想すぎる。まぁ、俺たちで姫を囲ってる奴だからざまあとは思うけどよ」
「でも、姫をいちばん幸せにできる、というより、姫は今がいちばん幸せなんじゃなかろうかってときなのよねぇ」
「女心と秋の空って言うもんなぁ。わっかんねぇ」
「このまま別れると思う?」
「わっかんねぇ、でも坊ちゃんはなんやかんやでチャチャいれると思うぜ」
「別れるか別れないかで賭けましょうよ。私は別れない方ー」
「あ、っずりぃ〜俺だって絶対別れないと思ってたのにぃ」
コーヒーを啜ると、ちょっと姫の気持ちを考えた。
なんか企んでんのかな。
「何賭けるんだ?」
「そぉねぇ、姫の使ってるボディソープが気になってるからそれを拝借する手先になってよ」
「自分で買えばいいんでねぇの?」
「あれは病院に通院歴のある人しか買えないから貴重なのよ。それに、姫も別に気にしないはずよ。母親のお金だし、そもそも、あの人たち大事に使いすぎなのよ。私がちょこーっと盗んだってわからないわよ。って私じゃなくてあんたがするんだけどね、空」
「もう、ただの盗人じゃねぇか。別にいいけどよぉ。俺が買ったらレッドブ●奢りな?」
「いいわね、じゃあ決まり」
と、終わってみたらやっぱり姫と坊ちゃんは付き合ってて、しかも、吐きながら愛を謳うんだからたまらねぇ。
ただのバカップルだよ。
終わり。
拝読ありがとうございます。




