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1-2 現状を把握しよう

本日から投稿を始めました。

本日の3話目です。

よろしくお願いします。



――まずは、落ち着こう。


この状況を理解しないことには、何も始まらない。


私は深呼吸を一つして、先ほど鏡の場所を教えてくれた彼女に向き直った。


「……ごめんなさい。私、本当に何も覚えていないの。いろいろ教えてくれない?」


不安そうに見つめると、彼女は一瞬驚いた顔をしたあと、すぐに深く頭を下げた。


「はい、お嬢様。私、侍女のメグと申します。何でもお聞きください。」


よかった。


この子は、ちゃんと味方になってくれそう。


そこから私は、自分のことを一つずつ聞いていった。


名前。


立場。


家族。


人間関係――


整理すると、こうなる。


私は、ミリエンヌ・エーデルシュタイン。


公爵家の娘で、現在十三歳。


父――お父様はクラウス。


母――お母様はエリザベート。


二人とも、私にとても甘いらしい。


「お嬢様のご希望は、できる限り叶えるようにと……」


メグの言葉に、私は天井を仰いだ。


……なるほどね。


「だから、こうなったのね」


自分の腕を揺らした。


やわらかく、プルプルと揺れる二の腕。


「お菓子もお食事も、お好きなだけ召し上がっていましたから……」


ですよね。


しかもこの体、運動なんてしている気配がまるでない。


ちょっと歩くだけでも息切れを起こす。


――課題、山積み。


「お兄様は?」


「カイル様は……お忙しくされておりますので。」


……来ない時点で察した。


あまり良い関係ではなさそうだ。


そして――


一番の問題。


「婚約者、よね。」


ぽつりと呟くと、メグの表情が一気に険しくなった。


「先ほどの態度、本当に失礼でした。お嬢様に対してあのような……!」


かなり怒っている。


そのタイミングで差し出された温かいミルクを、一口飲んで――


「……甘っ!」


思わず顔をしかめる。


何これ。


ほぼ砂糖じゃない。


「お嬢様は甘いものがお好きで……」


いや、これは好きとかのレベルじゃない。


太るに決まってる。


「メグ、お願いがあるの。今後は砂糖なしの飲み物にしてくれる? 


……味覚も、少し変わったみたい。」


少し苦しい言い訳だけど、通すしかない。


「かしこまりました。すぐにご用意いたします。」


素直で助かる。


出された紅茶を一口飲み、ようやく一息つく。


そして、改めて現実に向き合う。


「婚約破棄……できないかしら。」


ぽつりと漏らすと、メグの顔が青ざめた。


「それは……難しいです」


「どうして?」


「まず、王太子殿下の方が立場が上です。こちらからの破棄は現実的ではありません。」


なるほど。


「さらに……もし向こうから破棄された場合」


一瞬、言葉をためらう。


「お嬢様は修道院行きか、どなたかの後妻に……。決して良い未来ではありません。」


……重い。


思っていたより、ずっと。


ただ自由になるだけじゃない。


ちゃんと“代償”がある。


それでも。


「それでも、あの人と結婚するのは無理!」


きっぱりと言い切る。


メグが、私を見つめた。


「……お嬢様は、それで本当に幸せになれますか?」


試すような視線。


だから私は、まっすぐに答える。


「なる。絶対に!!」


少しも迷わずに言い切ると、


メグはゆっくりと息を吐いた。


「……分かりました。お嬢様がそうおっしゃるなら、私はお支えします。」


よし。


これで、協力者は確保。


次は――作戦。


まずは、この体。


「ダイエットは必須ね。」


このままでは話にならない。


動きづらいし、何より自分じゃないみたいで落ち着かない。


幸い、まだ十三歳。


どうとでもなる年齢だ。


しかも――


鏡の中の顔を、じっと見つめる。


パーツ自体は、悪くない。


むしろ整っている。


「……痩せたら、かなりいけるんじゃない?」


そう思った瞬間、やる気が一気に湧いてきた。


でも、ここで問題が一つ。


私が綺麗になったら――


あの王太子、婚約を手放さなくなる可能性がある。


それは困る。


絶対に困る。


どうする?


どうすれば――


その時、不意に浮かんだ。


前世の記憶。


衣装。


メイク。


体型補正。


――コスプレ。


「……あ」


思わず、声が漏れる。


そうだ。


見た目なんて、作れる。


綺麗になった自分を隠して、


あえて“今のまま”にして見せればいい。


太って、冴えない、魅力のない令嬢。


それを“演じ続ける”。


「……できる。」


むしろ、得意分野だ。


私は、にやりと笑った。


「婚約は破棄してもらう。」


「でも、本当の私は見せない。」


その両方を叶える。



私の、最強の武器で。



明日からまた投稿がんばります。


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