2-8 週末のお店には・・・
「ケビンさん、レディースAセットをお願いね。」
「ミリーちゃん、こっちにはいつもの頼むぜ。これから力仕事だからな。」
「マルクさん、筋肉ちょっと触らせて♡」
ちょっと注文じゃない会話も混じるときもあるが、最近お客が絶えない。
常連さんだけじゃなく、騎士の皆さんや町のお姉さん、家族連れまで・・
新メニューが功を奏した。
料理を作る人もおかみさんだけでなく、ソフィアもフルで活躍している。
私もいつの間にか16歳。
忙しく働いて、バランスのいい食事を食べているせいか
以前とは見違えるほど整った体つきになった。
そして、自分で言うのもなんだけど、鏡を見るのが楽しみなほどの美人になった。
働いているときはいつもノーメイクのすっぴんで過ごしているけど
たまにはちょっと気分を変えたい。
今日は色付きのリップでもつけてみようかな。
些細な変化でも楽しい。
そうして、私がお店に入った途端。
「!」
マルクが耳まで真っ赤にして視線をそらした。
「どうしたの?熱でもあるんじゃない?今日は休んだら。」
私はマルクが心配で額に手を当てる。
「わ、わ、わ」
言葉にならず赤い顔のまま手をバタバタとする。
「大丈夫よ。ちょっと離れれば治る病気だから・・」
ソフィアはマルクをちょっとにらみながら辛辣なことを言う。
「それならいいんだけど。無理しないでね。今日は私とケビンが接客頑張るから。」
私はそう言って、開店準備をした。
「ミリーはたらしですね~」
ケビンが何かぼそぼそと言っている。
「忙しいんだから。今日も頑張るよ。」
私はそう言い、お客さんを迎えた。
週末でも私はいつも夕方には仕事を上がらせてもらっている。
仕事が終わって店の外に出ると、
なんと、ロイド様が平民の格好で待っていた。
ケビンは、すっと私の前に出る。
「あ、違うんだ。
私はミリーさんのこと知っているんだ。
以前、おぼれて死にかけていた時に助けてもらったから。」
ロイド様は私を熱いまなざしで見つめてくる。
「それで。今日はどうしたんですか?」
私は、ケビンの前に出て、話を聞く。
「何か、何かお礼をしたいと思って。
これ、もらってくれないかな?」
そう言って、小さいけれど青く輝く宝石のついた髪留めを差し出す。
「そんな。当たり前のことをしただけですし、ずっと前のことですから。」
私がそう言うと、
「それじゃ、私の気が済まないんだよ。お願いだ。
受け取ってもらえない方がつらいんだ。」
あまりの勢いに断る言葉をなくしてしまう。
「あ、ありがとうございます。」
わたしが、小さな声でお礼を言うと、
「付けてみてもいいかな?」
ロイド様が懇願するように私を見る。
う~~~
・・・・少しだけ迷ってから、小さくうなずく。
ロイド様は、ほっとしたように目じりを下げた。
束の間、気合を入れるように背筋を伸ばす。
そして、私の髪になるべく触らないように気を付けながら、震える指で慎重に付けてくれた。
付け終わって、少し離れる。
「・・・やっぱり似合う。すごく素敵だ。
もらってくれてありがとう。
また、食堂に食べに行くね。」
そう言って、笑顔で手を振りながら帰っていった。
「ミリーは、無自覚にモテるよね・・・」
ケビンは今日独り言多くない?
私たちはまた、家に向かって歩き始めた。
後ろで抑えきれない感情を押し殺すように、強く拳を握り締めた
アレクシスの視線に気づかずに・・・




