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『俺だけスキル説明文が正直すぎる件』

作者: くろめがね
掲載日:2026/02/06

はじめまして。

あるいは、どこかで似たような失敗をしたことがある方へ。


この話は、

「自分は調子に乗ると失敗する」

「分かっているのに、やってしまう」

そんな人間が、

もし異世界に放り込まれたらどうなるか、

というだけの話です。


チートも無双もありません。

代わりにあるのは、

やたら正直なスキル説明文と、

それを読んでしまったがゆえの慎重さです。


気楽に、

「あるある」と笑ってもらえたら嬉しいです。


目を覚ました瞬間、

「あ、これ死んだな」と思った。


白い。

とにかく白い。

壁も床も天井もなく、

ただ白だけが広がっている。


病院?

いや、こんなに清潔な病院があるわけがない。


「ようこそ」


振り向くと、

それっぽい女神が立っていた。


金髪。

ローブ。

無駄に整った顔。


ああ、はいはい。

知ってる。

これ異世界転生だ。


「あなたには、新しい世界で生きてもらいます」


テンプレ台詞。

正直、安心した。


少なくとも、

死後の説明はちゃんとしているらしい。


「スキルを授けましょう」


来た。

ここで全部決まるやつだ。


俺の人生、

第二ラウンド開始。


――と思った。


目の前に青いウィンドウが浮かぶ。


【名前】

ユウ(元・会社員)


【職業】

冒険者(仮)


【スキル】

剣術 Lv3

観察 Lv2

逃走 Lv4


……弱くない?

いや、弱いよな。


チートどころか、

「運動部経験者」くらいの性能だ。


「女神さま」


「はい?」


「これ、

 もう少しサービスとか……」


「ありません」


即答だった。


ため息をついて、

もう一度スキル欄を見る。


そのときだった。


【剣術 Lv3】


当たれば強い

ただし以下の条件で精度が著しく低下する

・相手が自分より大きい

・数が二人以上

・『俺いける』と思った瞬間


※三回調子に乗ると死亡


……長くない?


というか、

最後の一文。


「死亡」って、

そんな軽く書くもん?


「女神さま」


「はい?」


「この説明、

 他の人もこんな感じなんですか」


「いいえ」


嫌な予感しかしない。


女神が指を鳴らすと、

別のウィンドウが出た。


【剣術 Lv3】


剣をある程度扱える


……短っ。


「え、

 じゃあ俺だけ?」


「はい」


なんで。


「理由は?」


女神は、

ちょっとだけ目を逸らした。


「あの……」


嫌な沈黙。


「あなた、

 現実世界で

 よく自己分析してませんでした?」


……してた。


「自分は調子に乗ると失敗する、とか」


してた。


「慎重すぎる、とか」


してた。


「それが反映されました」


最悪だ。


「三回調子に乗ると死ぬ、

 ってのは」


「統計です」


統計で人殺すな。



異世界初日、

俺は剣を持って立っていた。


周りには、

同じように転生した連中。


「剣術Lv7きた!」

「魔法Sランク!」


盛り上がっている。


俺は、

自分のウィンドウを閉じた。


三回調子に乗ると死ぬ、

なんて言えるわけがない。


最初の戦闘は、

小型魔物一体。


条件クリア。


小さい。

一体。

調子に乗ってない。


――今だ。


剣を振る。

当たる。


強い。

想像以上に。


「お、やるじゃん!」


周りがざわついた。


その瞬間、

頭に浮かんだ。


(俺、いけるかも)


……アウト。


次の一撃、

空振り。


足が止まる。

剣が重い。


「おい!?

 どうした!?」


俺は必死に叫んだ。


「今のはノーカン!

 今のは調子に乗っただけだから!」


誰も意味が分からない。


次は複数出現。


【数が二人以上】

即アウト。


俺は逃げた。


逃走Lv4。

速い。


速すぎて、

逆に引かれた。


「逃げ足だけ一流だな!」


違う。

死にたくないだけだ。



それから俺は、

勝てる戦いしかしなかった。


説明文を、

一字一句信じた。


大きい敵→逃げる。

多い敵→逃げる。

調子に乗りそう→逃げる。


派手さはない。

無双もしない。


でも、

死なない。


一方で、

スキル説明が短いやつらは――


「Lv10だし余裕だろ!」


慢心。


「いけるいける!」


死亡。


後で分かった。


説明文は、

嘘じゃなかった。


ただ、

書いてなかっただけだ。


剣術Lv10の男も、

調子に乗ると精度が落ちる。


魔法Sランクの女も、

焦ると詠唱が崩れる。


俺は知っていた。


自分の欠点を。


「お前、

 なんでそんな慎重なんだ」


聞かれた。


俺は答えた。


「俺、

 自分が一番信用できないんだ」


だから、

説明文だけは信用した。



最後の戦い。


巨大。

複数。


完全アウト。


俺は前に出なかった。


代わりに叫んだ。


「突っ込むな!

 今、全員調子に乗ってる!」


当然、無視された。


……一人を除いて。


そいつは、

俺の説明文を見ていた。


「……信じる」


冷静に動いた。


生き残った。


戦いの後、

俺は女神に言った。


「最初に言っといてくれよ」


女神は笑った。


「普通は、

 書かないだけです」


「なんで俺だけ」


「あなたは、

 自分のダメなところを

 ちゃんと見てきた人だから」


それは、

褒め言葉らしい。


そのとき思った。


俺はチートをもらわなかった。


自分の説明書を

 最初から渡されただけだ。


それは、

案外悪くなかった。


調子に乗らなければ、

俺は生きていられる。


……三回までは。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


正直に言うと、

この主人公はかなり自分に近いです。

調子に乗ると失敗する。

分かっているのに、やってしまう。

だからこそ、

最初から「欠点込みの説明書」があったらいいのに、

と思いながら書きました。


もしこの話を読んで、

「自分もだわ」とか

「これ、俺のことじゃん」と思ったなら、

それはたぶん、

ちゃんと生き延びるタイプの人です。


調子に乗らなければ、

案外、人生は長く続きます。


感想などいただけたら、

とても励みになります。

ここまで本当に、ありがとうございました。

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