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【監禁配信】記憶喪失の僕、魔法習得しないと部屋から出られません【視聴者1名】   作者: 阿野二万休
第五章 ダンボールと玉座

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04 玉座

【side:吉田一郎】


 人がせっかく苦労して好き放題できるようになった異世界をさあ! 転生者クンが荒らすからさあ! おじさんもう地球も人類も滅ぼすしかないんだよねえ!




 とはいえ。




 冷静に考えてみれば、オレは、最初から他の転生者の存在を予想しててしかるべきだった。


 いや、してたはずだ。


 この異世界に転生者はオレ一人じゃないと、わかってたはずだ。今まで読んできた転生モノの数々。その中で転生者は完全に自分一人、って作品はどれだけあった? 結構な数あったが、基本的には、他にも転生者がいる、いたタイプのやつだった気がする。


 だが、いざ自分がその立場に置かれてみると、我慢できなかった。


 正直に言えば異世界のことは、どうでもよかった。そこでの征服王としての立場、魔王を倒した勇者という立場も、そりゃ、あれば気分がいいけど、なくたって別に困りはしない。ハーレムの面々だってそうで、いつだって好きに増やして減らしてをできるものを、大事に思えったってムリだ。


 じゃあどうして、と考えても、結論は出なかった。


 ただ、あの魔王、他の転生者を見た瞬間、まるで、自分の命が脅かされたかのような危機感と、焦燥感に包まれ、何も考えられなくなったのだ。




 ……とまあ、そんなことを考えてようが、やることに変わりはない。地球の皆さん皆殺しタイムです! 転生がどうやって起こるかわかってない以上、全員殺すしかないんです! いい地球人は死んだ地球人だけじゃ、という偉大な先達たちのアティチュード(態度)に、オレも倣うことにしましょーか!




 目下のところ問題だったのは、地球への侵攻手段。現時点では他世界へ行くゲートや転移させてくれる神様は発見されてないし、魔法もラプラシアが開発した二つだけ。


 一つは【FTL(ぶちやぶる)】。


 名前の通り、魔法によって光速を超え、それにより次元の壁をぶち破り、他世界へ行くという、バカバカしいにもほどがあるだろ、とツッコミたくなる魔法。しかも魔法の性質上、光速を超えるヤツが強力な存在であればあるほど、多くの魔力を必要とし、足りなければ生贄で補うしかない。オレが転移しようとすると、軽く百万人は生贄がいる計算になる。


 もう一つは【ERB(くろいむしあな)】。


 千人分の異説野と魔心室を集め、世界を行き来するワープゲート的なものを作る。ちなみにこれは、転移者の故郷と、異説野と魔心室の持ち主たちの世界しか繋げない。この異世界で千セット脳と心臓を集めても、この呪文を使える唯一の存在、ラプラシアが使う以上、地球へのゲートは開かない。


 すると、最適解はこうなる。


 まず、こちらの人間を使って、千セットの異説野と魔心室を集める。アイテムボックスにそれを入れたラプラシアが【FTL(ぶちやぶる)】によって、地球へ転移。その後、地球人に魔力器官を移植し、馴染ませ、そして抜き出し、【ERB(くろいむしあな)】で地球と異世界を繋ぐゲートを作り、そのゲートでオレが地球に行って、人類を皆殺しにする。あ、もちろん人体実験用の人員は確保したうえでね? あ~人類すり潰して魔法を開発するの楽しみなんじゃ〜!


 ……けれど。


 けれど、計画を進めれば進めてくほど、俺の心は重くなってった。


 ラプラシアは異世界人で実験できる、と喜んでたけど、オレは、アイツが喜ぶたびに、沈んでった。


 どうして自分がこんなにも憂鬱になってるのか、自分でも分からなかった。自分の故郷と、故郷の人たちを消滅させようとしてるからじゃないことしか、オレにはわからなかった。


 地球のことは、どうでもいい。地球の人たちも。というか、何一ついいことがなかった場所と、何一ついいことをしてくれなかった人たちが消え去ることについて、何かを思えったってそりゃムリだ。せいせいする、以外になんかあるか?


 けれど、ウキウキしながらオレに地球のことを教わり、現地での過ごし方や生贄の集め方を考えるラプラシアを見てると、やはり、心は鈍色になって何もする気になれなかった。


「オマエの故郷がどんなところか、一度見てみたかったんだ」


 そう言って顔を輝かせるラプラシアに、オレの内心は言い出せず、ただ、表面を取り繕って、地球に対する怒りがまだ燃えてるようなフリをして、作戦のその日までを過ごした。


 出発のその日、王城の中庭でアイツを見送る時。


 オレはなんて言葉をかければいいのか、わからなかった。ただ、もう、地球なんてどうでもよくなっていた。ラプラシアがそこに行ってしまうことが、ただただ、不安だった。それでも、オレは征服王ヨシダとしての仮面をかぶったまま、ニヤニヤ笑いでアイツを送り出すことしか、できなかった。


「じゃあ、よろしくな」

「ああ。そうだ、地球人は何人使っていい?」

「オマエはまったく頼もしいな! 好きにしろよ、ああ、ただ、大っぴらにやるのはオレがついてからにしろよ、一応、向こうにも軍とかはあるからな」

「心得てる。なあ、スゴイぞヨシダ、これで魔法は、さらに進歩するぞ! 想像してみろ、私はここで、百万の命をすりつぶして数千の呪文を作った。地球で七十億を煮れば……!」


 そう言って、光の壁を突破して、オレの隣から消えるアイツを、見送るしかできなかった。だって、それ以外にどうしたらいいかなんて、わからないから。オレは転生者。転生者はそうする、ってことしか、オレにはできない。




 オレは一人、玉座に座りながら考えた。




 オレは、何かを、間違えているのだろうか?

 どうしてオレは、こんな気持ちでいるんだろう?

 オレにとってラプラシアは、なんなんだろう?




 どれだけ考えても、答は出ないままだった。




 一人玉座に座るオレに、ハーレムの面々が不安そうな顔をしてすり寄ってきたが、適当に追い払う。今はただ、誰の顔も見たくなかった。オレはただ、一人の玉座で考え続けた。

◇◆◇ あとがき ◇◆◇

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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(全部でなくても一つでも超うれしいです)

では、また次の“配信”でお会いしましょう!

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