story ‘’ 2‘’
明る朝。
瑠七は通学中に買った花束を抱えて嬉しそうに歩いていた。
ふと.肩を叩かれる。
瑠七が後ろを振り向くと背後には龍乃介が立っていた。
「おはよ,龍乃介くん。今日は早いね,どうしたの?」
いつも遅刻寸前に来る龍乃介が,どうして早起きして早めにきた自分と同じ時間に既にいるのだろうか。
首を傾げた瑠七に,
「委員会だよ。委員会があるんだ。」
「ふーん。」
納得したような顔を見せた瑠七が抱えている花束に,龍乃介の視線が止まる。
「いつもこんな早くきてんの?」
「今日は新しいお花に変えて,花瓶も洗ったから」
水やりだけなら,もう少し遅いかな,と瑠七は今朝自分が飾った新しい花を撫でる。
「花瓶ゴシゴシ洗ってんのとか,人に見られたくないし…。」
そう恥ずかしそうに笑った龍乃介はさらに問いかけた。
「そういう頑張ってるところ隠さなくていいんじゃね?」
龍乃介の言葉に瑠七は一瞬驚く。
そして何も聞かなかったように,前髪を整え始める。
使ってる鏡は,瑠七の大事な手鏡。
瑠七が何も答えなかったからか,龍乃介は花に近づいて,
「綺麗だな〜。」
と笑う。
「これいつもルナが飾ってたんだ。」
一匹狼に見えていた龍乃介くんも見てくれていたんだ,と内心驚きながら,瑠七はぎこちなくうん,と答える。
「通学路にお花屋さんがあってね。売れない花が値引きされてるの。」
「切られて,そのまま枯れてー捨てられちゃうの,かわいそうでしょ。」
だったらー
「可愛い姿をみんなに見てもらわなきゃって。」
なんで聞かれてないところまで話してしまったのだろう,瑠七は謝ろうと口を開く。
「関係ないよね,ごめー。」
お前って。
「いろいろ考えてたんだな。勘違いしてたわ俺。」
龍乃介の唇から離れた言葉が,瑠七の耳に届いて。
一瞬瑠七は口を閉じて
「でしょ?お花から学ぶことって結構あるんだよ。」
と,何もなかったかのように笑う。