prolog
「 おはよ ! 」
そう,教卓の上にある純白の花に。
駆け寄って言葉をかけたツインテールの少女。
「可愛いよなぁ。」
だなんていう男子たちの噂話には全く耳に入らない様子で,
「今日も1日頑張ろうね。」
と花に笑顔を見せた。
「ルナちゃん,ルナちゃん!」
と,イケメンの男子に呼び止められ,彼の方に向かった彼女は
「どしたの?」
と,聞く。
可愛らしい少女ー 葉桜瑠七 の笑顔に圧倒され,イケメンの彼は一瞬だけたじろいだ。
「これ食べてみて?」
と,彼は少女に華奢な手に黄色のグミを一粒渡す。
「俺は美味しいと思うんだけれど,希大が甘いの苦手〜とか言ってて。」
首を傾げ,親友にはにかんだような笑顔を見せた彼に,黄色のグミを口にした少女は
「ん〜!すっごく美味しい!」
と満面の笑顔になった。
「私,可愛くて甘いもの大好き!」
ありがとう!,と言われ,思わず瑠七の可愛さに男子は座り込んでしまった。
瑠七がスッキップをしながら離れると,イケメンの男子は
「ルナちゃんマジ天使!」
可愛すぎんだろ!と,顔を真っ赤にしてはにかんだ。
「はいはい」
親友は,そんな彼の行動を見て呆れている。
それを横目見ていたで窓際にいる女子二人も,彼に呆れて嘲笑していた。
「あざとっ。」
白いベストを着た,陽キャの女子が悪態を付いた。
「男子ってマジバカだよね。」
「あんなぶりっこに騙されるんだから。」
「まあでもー 私はルナちゃん,可愛いと思うよ。」
と青色のセーターを着た少女ー百瀬あゆが,親友に控えめに言い返す。
「何言ってんの!?」
「あゆのほうが素で可愛いから!」
と,彼女はあゆの腕を取る。
「あゆのほうが可愛いし,性格良いから!」
親友にベタ褒めされ,あゆは小さく首を振った。
「アイツには,計算高くて。」
人工的な『可愛い』って感じ!,と続けた親友に
「ありがとう。」
と,少しあゆが笑った。
ずっと教室内の出来事を聞いていた男子が,机から顔を上げて瑠七が出て行った廊下をじっと見た。