ランの悩みと富豪のパーティー 後半
はぁ…
なんでウチは…
「どうしたんですか…?」
明るく照らされた部屋。
私の顔を覗き込んだのはリンネちゃんだった。
メタルガールズ基地にて、ウチは机に体を預けているとリンネちゃんがウチのことを心配そうな視線を向ける。
「え…?い、いや…なんでも…」
でも…こんな話…リンネちゃんに言えない…
彼氏からDV受けてるなんて…
「なんでもって…みんなといる時のランさんは、もっと賑やかなはずです…それなのに…なんでもってのは…」
「ほ、本当になんでもないって!!!ウチは元気だよ。」
ウチはそう言いながら、曲げた腕の二の腕を叩く。
筋肉アピール
「で、でも…リュウさんが大丈夫とか、なんでもとかって言う女の子は大丈夫じゃないって…そう言ってましたし…」
リュウくんの良いそうな事だなぁ…
「そんなの…どこで聞いたの?」
「私に当番を任せようとするときにランさんの様子がここ最近、元気がないから寄り添ってあげて…とここを出ていくちょっと前に言ってました…」
リュウくんはずるいなぁ…ウチのこと…なんでもお見通しなのかなぁ…
いや、みんなのことをちゃんといっつも心配してるんだ…
みんなの事を常に気にかけて、みんなの事を常に心配して…
あーあ…ずるいずるい…
「ウチさぁ…実は…彼氏いるんだよね…」
ウチは告げると、リンネちゃんは彼氏ですか…?と言葉を繰り返す。
ウチは頷き、「そう。彼氏。」と返した。
「でもね。ウチ、そいつのこと嫌いなんだ。」
ウチは斜め下を見ながら、机の模様を見ながら言う。
「嫌い…?ど、どうしてですか…?付き合ってるのに…嫌いだなんて…」
「実は…その…ウチ…DV…っての?受けててさ…」
ドメスティック・バイオレンス…
略してDV。
男女間における身体的暴力や、精神的暴力、性的暴力などの事を指す。
ウチが間違えたのか…彼氏が間違えたのか…それもわからない…
でも、ウチはある日に、告白された。
「俺と付き合ってくれないか?」
その当時は金髪でもなんでもない黒髪だった彼は、ウチにそう言った。
多分、そこに悪意とかやましい思いとかなかったんだと思う。
でも、彼はいつの間にか変わっていた。
カッコつけたいからと言って、髪を金髪に染めて、それで指輪とかをつけ始めた。
でも、そこまでは良かったと思う。
いつの日か、彼はこう言うようになっていた…
「5万円頂戴」と…
貸して、ではなく、頂戴。
返ってくる保証は絶対にない
まあ、その時からウチはメタルガールズに入ってたし、それに少しは稼いでいたので、5万円程度ならと…ウチは渡した。
そして今度は10万、20万と次々に貰いたい額は増えていくようになった。
なぜそんなに欲しいのかウチは追跡して突き止めることにした。
でも、ウチは彼を追跡して、失望した。
彼が足を運んでいたのは、ソープランド。
彼は、ウチのお金を使って、風俗に通っていた。
それも、向こうでは既に何人かの子供がいるとか…
ウチは別れたいと、正直に言った。
でも、彼は逆上して、ウチを裸にして、そして、その写真を別れたらばら撒くと言った。
だから、従うしかなかった。
ウチはなんで彼と付き合っているのかもわからず、2年でクラスが別々になるかと思ったら、彼はどうやら先生たちを買収し、ウチと彼を同じクラスにするようにした。
「…ってわけ…本当にウチってバカだよね…彼氏の様子が変な感じになっちゃった時から別れればよかったんだけど…人生初めての彼氏だからってちょっと浮かれてた…はぁ…何してんだろ…」
しばらくの間、沈黙が流れた…
「そんなことだろうと思ってた」
「え?」
突然のリンネちゃんのタメ口と、少し眉を下げたリンネちゃんの顔。
どう言うことなんだろう…
ウチがそんなことを思っていると、沈黙を破るように、少し微笑を浮かべながら、リンネちゃんが、言う。
「リュウさんから預かった伝言です。
そんなことだろうと思ってた。
なんか最近のランは元気がなかったから、少し前から盗聴器を付けてたよ。
あ、トイレとかは流石に切ってはいたよ?でも、心配で心配でさ、そしたら、今日の昼休みにさ、脅されてたからさ。
彼氏がいたとは聞いていたけど、あんなDV彼氏って…まだ僕の方がマシかもね。
好きな人じゃない人と付き合うなんてあんまりだ。
僕だったら暴力を受けた時点で別れるけど、ランはそれができなんだよね…
気づけなくてごめん…
ランがこれ以上に苦しまないように僕は、その人のスマホからランのその画像を消しておいたから、もう安心してね!
あ!全然やましい気持ちとかで保存とかもしてないし!それに、消すときはその画像が表示されないようにして、万が一の事を考えて目を瞑りながらエンターキー押したよ!!だから安心してね!!!!
このハッカーのリュウ様に勝てる一般人はいないんだから!!!
追伸、今日は多分帰りは10時くらいになると思うから先に寝てて大丈夫だよ!」
長い言葉を言い終えたリンネちゃん。
どうやら少しだけ疲れてはいるみたい。
「本当に…あの子は…」
どうやら、ウチの悩みはすでに解決していたみたいだ…
「そして、ここからは私の言葉ですが…本当に、お疲れ様です…」
と、リンネちゃんは微笑を浮かべて言った。
「あはは…」
いつの間にか頬を伝う涙。
「ありがと。」
リンネちゃんにウチは告げのだった。
2回扉を叩き、部屋の中にわたくしは入る。
「リュウさん下の口で搾り取りに…来ましたわ…って…寝ておられますわ…」
わたくしは、客室のベットに寝っ転がるリュウさんの寝顔を見ると、子宮が疼いた。
ので、
「リュウさん…失礼しますわ…おっほぉ…これはよき逸物…ですわ…これはリュウさんが可愛すぎるのが良くないのですわ…!!それでは頂きます!!!ですわ!!!」
「そういえばさ、リンネちゃんってショートヘアーが似合うと思うんだよねー」
「へ?」
ウチはそのリンネちゃんのはにかむ表情を見て、ハサミを用意する。
「リンネちゃんって輪郭とか、大分綺麗だし、顔も整ってるし、多分だけど、ショートヘアーが似合うと思うんだよねー」
ちなみにこの見解はリュウくんとウチが話し合ってお互いに意見が一致したことだ。
「だからさ…切らせて?」
すると、ウチはハサミを持ちながら、そのハサミをチョキチョキと動かしながら、リンネちゃんを部屋の角に追い詰めていた。
ウチはさながらホラーゲームのキャラクターのように、そしてリンネちゃんは震える小動物のように。
「あああああああああ…!!!!!!!!!!」
「お客さん…どうですか…?この髪型は…!!!」
私は後ろ髪を鏡で見せつつ、言った。
ちなみにこの口調はウチがいつも行っている美容師の真似である。
「あ、案外思ったよりも可愛くて…普通に驚いてます…」
正直な感想を言ったリンネちゃん。
メガネに掛かっていた前髪を切り、そして、三つ編みを解いて、肩あたりまでの髪型に、髪の毛の先を少し内側にくるりと曲げている。
いわゆるミディアムヘアー。
インナーもどう?と質問してみたけど、それは大丈夫です…と断られてしまった。
まあ、リンネちゃんの髪色がピンクな事もあって、意外とインナーが無くても印象に残るから、ウチはまあこれでいいと良しとした。
「まさか…こんな可愛くなるなんて…自分でも想像つきませんでした…」
「ふふーん!!ウチの目に狂いはないからね!!!」
ウチは胸を張って、言った。
まあ、ウチだけの意見ではなくて、そう言うのにはやけに詳しいリュウくんと、いっつも、自分の髪を切っているウチの力があれば、まあ、こんなところだよね!!
リンネちゃんはずっと、まじまじと、自分の髪型を見てそして、嬉しそうな顔を浮かべている。
「機動性もアップしたし!これでメタルガールズも良い感じになるね!!」
「はい!!!」
リンネちゃんが元気に、満面の笑みで頷いたその時
トゥトゥトゥトゥトゥトゥ!!!!!!!!!
電子音が基地の中に響いた。
まるで、曲とかに使われてそうな、少し煩い程度の音。
普通の人だったら、びっくりするだけかもしれない。
だって、実際、リンネちゃんは、「な、何!?」と驚いているだけだ。
でも、この音が意味する事を、ウチは一瞬で理解した。
「さ、30m級!?」
そう。これは神の出現予想。それも、30m級の大きさの神の出現の時に鳴る特殊な警報だ。
「と、とりあえず、ウチらだけでも出撃しないと!!!!」
ウチはそういうと、更衣室へと向かう。
「は、はい!!!!」
そう言いながら、更衣室へ滑り込み、服をパパパっと脱ぐ。
そして、下着やらも、全て脱ぎ、裸の状態でその一枚のパワードスーツを着る。
いつも洗濯されているから、良い匂いが漂うが、ウチは少し癒されながらも、胸にマスターコアを嵌め込んだ。
緑色の光が、パワードスーツを巡り、ウチは、「よし!」と呟くと、先にパワードスーツを着ていたリンネちゃんが「行きましょう!」と言う。
そして、ホログラム式の通信機をつけ、リンネちゃんに向かって首を縦に振り、更衣室を出た。
「ケイ!!案内よろしく!!!」
通信機に電源を入れると、メタルガールズ専属AIのケイが反応し、
『了解しました。』と、メタルガールズ本部に響き渡る。
階段を降り、格納庫にしまってあるアーマーをパワードスーツの上から装着した。
腰部、腕、背中、胸にアーマーを装着すると、地下2階にある格納庫から地下3階へと落とされる。
レールに繋がれて、私はメタルガールズの格納庫の天井が開かれると、そこには夜空が広がっていた。
背中からエネルギーを放出し、力を貯める。
横では同じように、リンネちゃんも背中からエネルギーを放出し始める。
「ナンバー03!!古河ラン!!!!出撃します!!!!!」
ウチは口に出すと、足を押さえていたロックが外れ、一気に夜空へと打ち出された。
まるで流れ星のように軌道を残して、空を飛び始める。
同じように、後からリンネちゃんも打ち出され、夜空を駆け巡る。
「ケイ!!!目標の位置は!?」
『はい。目標の座標は56-29です。今回の神はエジプト神話に登場するセト神です。主な攻撃は風などを操る攻撃だと推測されております。』
「ランさん!!あれ!!!!」
通信越しにリンネちゃんの声が聞こえると、前方で、大きな爆発。
いや、竜巻が起こったように見えた。
「あれだ!!!!」
ウチは、背中から手持ち式衝撃発生機構メイスを取り出す。
メイスの頭部が真ん中から端へと移動し、起動する。
光を放ち、パワーのチャージが完了した。
「行くよ!!!!!」
確認すると、目の前に竜巻が迫って来て、ウチはそれを体を捻って避けた。
「ッ…!!!!!」
吸い込まれてしまいそうだが、竜巻の方向に向けて、ブースターを向け、放出し、反対側に逃げ込む。
「大丈夫ですか!?」
と、リンネちゃんが声をかけてくれる。
「うん!!!リンネちゃんは!?」
「わ、私は大丈夫です!!!!!」
「おっけ!!!!」
竜巻を避けたその先に、犬のような、はたまたオオカミのような、なんとも言えない耳の四角い被り物のような物を被った上半身裸の大男のような神が現れる。
街灯の光が反射して、左手に握る丸い取手のような物と十字架の融合したような飾りのような物と、右手には大きな杖。
瞳は被り物のように、目が描かれており、光を反射していない。
まるで死んだような目をしている。
「見えた…!!!!セト神!!!!!」
セト神は周りに聳え立つビルをその杖で壊す。
「 」
セト神は何かを言うと、今度は風を巻き起こし、大きな竜巻を起こした。
その竜巻は、ビルの瓦礫を巻き込み、大きな砂嵐へと変化した。
「く、来るよ!!!!!」
ウチは言うと、ブースターを噴出して、エネルギーを吐き出し、右へと20mほど移動して、回避。
どうやらリンネちゃんも回避できたようだ。
メイスの先端が青く光っているのを見ると、ウチは、両手で握りしめ、その身長ほどあるメイスを大きく振り上げて、ブースターを一気に噴き上げる。
「おりゃああああああ!!!!!」
叫びながら、両手に持ったメイスをセト神の頭部へとぶつける。
メイスの頭部が青く輝いて衝撃を発生させた。
バゴォォン!!!!!と衝撃が伝わり、頭が割れそうになったのか、少しだけ二、三歩ほどセト神は後ろへと退がる。
「今!!!!!」
ウチはセト神の頭部を蹴りつけ、空中へと戻りすぐに退散する。
そしてウチが退散したところで、地面に足をつけ、持っていた手持ち式のビームライフルを構えたリンネちゃんが引き金を引いた。
ちなみに、ウチがちょっと改造して少しだけ出力を上げてみたけど…
ドオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!
響くライフルの発射する甲高い音。
ビルに跳ね返って音が反響する。
緑色のレーザーが撃ち出され、セト神の腹部に命中。さらにセト神は後ろへと退がった。
爆発を起こし、さらに追撃を加えた。
ダメージが入ったのか、頭部とお腹辺りから血が流れ始めた。
「 …」
右手で頭を抑えたセト神は、杖を振ると、すぐに竜巻が巻き上がる。
それも、1つ、2つ、3つ、4つと、増えていき、その60mはありそうな竜巻がウチらの方向へと向かってきた。
まずい!!!!!
「リンネちゃん!!!!」
「か、回避します!!!!」
そういうと、リンネちゃんは、立ち上がり一度空中へと打ち上がる。
まるで花火が上がっていくかのように真上に上がると、リンネちゃんは、竜巻を避けつつ、両肩につけられたミサイルが発射される。
15mm弾の追跡型のミサイルが竜巻を避け、セト神へと突き刺さる。
リンネちゃんは、壁に張り付くとそのまま、走り、エネルギーシールドソードを起動し、軽やかなステップでビルの壁からセト神へと襲いかかる。
リンネちゃんのエネルギーシールドソードが喉元を切り裂き血が吹き出す。
ウチは上空から襲いかかって頭部を狙ってメイスを強く握りしめた。
青く輝いたメイスが月日に照らされて、ジェットブーストをフル起動。
流星群のようにして襲いかかるウチの姿がビル群の窓に映し出される。
「とりゃあああああああああ!!!!!!!!!!」
ウチのメイスはセト神の脳天に直撃し、青い光が放出し、追加ダメージとして雷のような電撃がセト神を走る。
ドオオオオオン!!!!!!!!と轟音がなり、セト神の頭を地面へとへばり付かせた。
「 !!!!!!!!!!」
血が噴水のように吹き出し、地面に倒れたままのセト神。
町中を襲っていた嵐が一気に全て止まった。
「倒せた…?」
30m級というのも、基本的には大きさは強さには関係しないと言われていて、大きいものに強い個体が多いだけということが多いということだけなので、まあ、普通に2人だけで倒せる30m級もいるんだけど…
「お、終わりましたか…?」
リンネちゃんは、着地したウチの近くに着地して、ライフルを構えるのをやめて、目の前のピクリとも動かないセト神を見て言う。
「どうなんだろう…ケイ、生体反応は?」
『消滅していません。復活します。』
そのケイの言葉に驚かされると、次の瞬間、先ほどまで動かなかった左手が動いた。
「「え?」」
その動いた左手には先ほどの丸いような形をしたものと、十字架のようなものの融合した物が握られていた。
まるでそれを示すように持ち上げられ、その左腕にしか今のところは力が入っていない。
そういえばあんなものを見たことがある。
確か、アンク…と言われた物…?だったはず…
生命の象徴だったはず…
そして、そのアンクと呼ばれるものが黄金色に輝き出した。
「まぶしっ!!!!!」
目を細めていると、そのアンクから発せられた光がセト神の傷を癒す。
「あ、あれって…!!!!」
そして、その黄金色の光が収まる頃には傷が治ったセト神が起き上がる。
そして、被り物が破れ、本当の口のようなものが現れた。
しかし、口の中は深淵となっていて、宇宙のような、暗い空間が広がっていた。
風が吹き上がる。
まるで大きな台風の中にいるようだった。
「な、なんかヤバくない…!?」
「や、ヤバいですね…」
と、次の瞬間、ウチらの周りの道路に獣に引っ掻かれたような傷跡が刻まれた。
「なんですか!!!!これ!?」
「も、もしかしたら…風の刃かも!?」
「そ、そんなものが!?」
「と、とりあえず!!!!!!ライフルで遠距離攻撃を!!!!!」
「は、はい!!!!!」
風が容赦なく襲いかかり、少し大勢が崩れそうなところで、リンネちゃんは膝を突き、30mm口径のエネルギーライフルを構える。
「チャージ完了!!!!!発射します!!!!!」
そして、リンネちゃんが引き金を引くと、エネルギーが放出された。
ドオオオオオオオオン!!!!!!!!
今度は最大出力のエネルギーを放出し、風を切り、逆に風を生み出し、セト神の腹部に突き刺さった。
そして、追加ダメージの爆発がセト神を襲った。
どうやらだいぶ効いたのか、台風のような風が治まった。
そして、セト神は退け沿ったような体勢になる。
しかし、足は付いており、またもや先程のようにセト神は左手を突き上げ、アンクを輝かせた。
アンクからの黄金の光が、そのセト神の腹部に空いた穴を塞ぐ。
「だ、ダメです!!!!!すぐに回復してしまいます!!!!!!」
そして、次の瞬間、またもや台風のような風が吹き始め、セト神は、退け沿った状態から体を起こした。
そして、セト神は声を出すかのように、口を大きく開けた。
刹那、ウチはいつの間にか吹っ飛ばされていた。
50mほど後ろのビルに打ち付けられていた。
衝撃が脳を迸る。
「ぐはっっっ!!!!!!!」
ウチは後から衝撃を受けた痛みが体から溢れ出る。
骨が痛い…多分、折れてはないだろうけど…それでも痛い…!!!!
もし生身で受けていたらと考えるとゾッとする。
マスターコアでエネルギーのバリアがなかったら今頃ウチは本当に肉塊になってたかも…
「ら、ランさん!!!!大丈ですか!?」
と、通信越しにリンネちゃんが心配する。
「大丈夫…ちょっとしばらく動けないかもだけど、骨折はしてないだろうし…大丈夫…本当に…こ、ここは一旦、退いて_」
コツン。コツン。
ハイヒールのような音が聞こえた。
そして、ウチの視界に奴が映った。
黒い目元の覆われたヘルメット。
ヘルメットのフロントには丸いラインが引かれており、青く輝く。
ヘルメットからは長い白い銀色の髪が溢れている。
背中に黒鉄の翼と、初期型のジェット方式のブースターを搭載している。
両足の太もも辺りから足の爪先までと、上半身の胸あたりと背中、そして、両腕と腰部がアーマーで包み込まれ、両足、両肩にミサイルを収納するボックスが取り付けられている。
右の太ももにはミサイルの入った鉄の箱の上に手持ち式エネルギーハンドガンが収納されている。
そして、片手に自身の身長と同じか、それ以上の大きさの手持ち式薙刀型エネルギー収束ブレードを持っている。
「あ、あの人は…!?」
次の瞬間、そいつは走り出すと、ブースターを点火させて、黒い鉄の翼を広げて赤い軌道を描きながら飛び出す。
風を切り、その流星は流れ、あっという間に上空へと打ちあがった。
薙刀の先端の刃が青く輝き、空間が鈍る。
もはや神と言われても信じられないほどに化け物じみた見た目のセト神。
口からは白い液が流れだし、杖を振り回す。
あちらこちらに嵐を発生させる。
そして奴は、空中を蹴るように、一気に薙刀を空中で舞いながら振り回し、刃をまっすぐ前に出す。
一閃の光が通ったと、形容するべきだと思う。
先ほどまで、上空に居たはずの奴は、いつの間にか、地面に着地していて、セト神は、アンクを持っていた、左手が切り落とされていた。
約5mほどはありそうなその左手が落ち、セト神のその左腕からは大量の血が溢れた。
セト神が月に向かって叫ぶように口を広げると、今度は、竜巻が四方八方に放たれた。
そして、その竜巻は追尾するかの如く、奴の着地したところへと移動する。
奴に向かって、道路を破壊しつつ向かったのだ。
しかし、奴は、それを見て、ピクリとも動かない。
今のままではやられてしまう。
「避けて!!!!!」
と、ウチは叫ぶが、もちろん聞こえていないのか、避けようと動く気配はない。
でも、その代わりに、のろりと、竜巻に向き直った。
そして、薙刀を片手で握る。
薙刀に青い光が宿る。
次の瞬間、その青い光は、赤く染まり、そして、薙刀を奴は振ると、奴の周りを囲むようにして迫ってきた竜巻が一瞬で打ち消される。
文字通り、奴は風を切った。
そして、奴は、またもや天空へと飛び上がると、今度は、くるりと手の中で薙刀を回し、逆手で持ち、そして薙刀を投げる。
まるで雷が放たれたんじゃないかって誤認してしまうほどのエネルギーを包んだ薙刀は、そのセト神の左腕を吹っ飛ばした。
いや、左腕じゃなくて、左肩を吹っ飛ばした。
そして、薙刀は地面に突き刺さる。
でも、奴は武器を持っていない。
もう、攻撃する手段が無いという風なのをわかったのか、セト神は、腕でも杖でもなく、その、己の口を使って、奴を殺しにかかった。
しかし、展開された黒い鉄の翼が、
雲と雲の間から現れた満月と重なった。
瞬間、翼を広げた奴は、右足をセト神に向け、一気にジェットブースターを吹き出す。
最初こそはほぼゆっくりだったように感じた。
でも、一瞬のうちに、セト神には、凛音ちゃんが開けた風穴以上の大穴を開けていた。
そして、キックをした勢いで、着地した奴。
右足の先端には、薙刀のエネルギー放出部分と同じように青く光っていた。
そして、着地した場所にあった薙刀を奴は握り、地面から引き抜くと、背後で再生能力を失ったセト神が膝から倒れ、追加ダメージとして爆発する。
『ミッションコンプリート』と、奴のヘルメットから機械音声のような心の無い音が発せられると、奴は、ウチらを置いて、黒い翼を広げて月光の照らす夜へと羽ば立つ。
「い、一体…あの人は…」と、通信越しに驚いた様子の凛音ちゃんが呟く。
「あいつは、この地区にだけ出現する非認定のメタルガールズ。部員でも無いのに、アーマーを所持して、そしてウチらが倒せないような強敵をあっさり倒して帰る、まさによくわからない人…なんだよね…」
ウチがそう説明すると、納得のいかない様子で、リンネちゃんは「なるほど…」と呟いた。
「ただいまー!!!」
メタルガールズ支部に僕の声が響き渡った。
今は夜の12時。
多分、ランも寝てるだろうし、僕の代わりに当番をやってくれていたリンネちゃんも帰ったであろう。
僕は自分の部屋にて、このすごい豪華なドレスを脱いだ。
そして、パンツ一丁で、背伸びをする。
「ああ〜!!!!自由〜!!!!!にしても、エリナも僕を着せ替え人形にしか思ってない気がするなぁ…それか大人のおもちゃか…」
僕はその場で派手に動けなかったので、反復横跳びをいきなりし始めて、再び、このドレスを着ていない状態がどれだけ自由なのか、改めて実感する。
「機動性がバカ高いなぁ〜!!!」
僕は思いながら、洗面所へと向かうべくパジャマに着替えて、扉を開け_
「あ、やっほ〜」と、開けた扉の前にはランが立っていた。
ランはパジャマ姿で、ボタンで止める感じの水玉模様のパジャマ。
ゆったりとした感じが可愛さを引き立たせている。
「あ、ラン!まだ起きてたんだね!!」
と僕は挨拶をすると、ランは扉をさらに開けて僕の部屋に入ってきた。
「あのさ…今日はありがとね。ウチのためにわざわざハッキングなんかさせちゃって…」
ランは俯きながら言う。
「なぁに。僕の仕事の一部にメタルガールズのメンタルケアもあるわけだし、そんなに大したことじゃないよ。」
「そんなことないよ!!!!実際ウチ、すごく助かったし!!!!それに…」
と、ランが言葉を一旦区切る。
「それに…?」
と、僕は言葉を繰り返した。
「好きな人もできたし…」
ランは小さく言った。
「え!?ほんと!?おめでとう!!!!!!実と良いね!!!!!」
と、僕は言った。
本当に安心した。
このまま前の彼氏に引きずられていたらどうしよう…なんて思ってたから…
「気づかないんだ…」
「え?何が…?」
僕は問うけど、ランからは何も返答が返ってこない。
「そ、そういえばさ!!!その好きな人に、プレゼントあげようと思うんだけど、何が良いかな?」
プレゼント?なんでプレゼントなんだろう…
まあいいか…
「うーん…そうだなぁ…飴…とか?」
「飴…?」
「うん!!プレゼントにあげると、意味合い的に好きって意味になるって聞いたことがある!!」
まあ、昔の知識だから合ってるかどうかわからないけど…
「飴…ウチはさ、ウチ自身がいいと思うんだよね…」
「え?どういうこと?」
ランが僕の座っていたベットの上に座った。
「ウチの体、男子ってそれで喜ぶでしょ?」
「え!?い、いや…でも…そ、そんな…男子が全員スケベってわけでもないし…」
まあ、僕はすけべなんだけど…
「じゃあ…さ、リュウくんはどう思うの?ウチの体がプレゼント」
「え?僕…?」
こう言うのって正直に言ったほうがいいのかな…
「え?ま、まぁ…そりゃあ、僕は嬉しいけど…」
と、僕が言うと、隣に座ったランの手が、僕の指に絡みつく。
簡単には解けなさそうだ。
「よかった…」
ランは呟く。
そして、ランはいきなりベットの上に寝っ転がる。
「じゃあプレゼントあげるね。」
そう言う彼女に視線を向けと、パジャマのボタンが外れ、下着もつけていないランの姿。
「え?」
つい口から漏れる。
「気づかない?ウチの好きな人、リュウくんだよ」
マジか…
「リュウくんなら喜ぶと思って、ブラも、パンツも履いてないよ…」
ランは握った僕の手を引いた。
そして、自身に引き寄せると、胸とその巨大な胸が触れ合う。
突起物のようなものの感触も少ししつつ、ランが、僕の手を自身のお腹に当てた。
「私のここに…欲しいな…」
と、耳打ちされて、僕は我慢の限界に達した。
「俺専用のプレゼント…なんだな…?じゃあ、いくら乱暴にしても構わなあわけか…」
そういうと、僕はランの両手首をベットに押さえた。
「うん…ランはリュウくんの奴隷だから…」
ランは顔を赤くして言った。
後日…
『おほッ!!!あああ…!!!ダメ!!!リュウくん!!!!もう、気絶すりゅ!!!あはぁ…!!!!ああああああ!!!!!!』
スマホを元彼氏に向けながら、昨日の夜に撮った動画を見せる。
「な、なんだよこれ…」
彼は呟いた。
「ま、そゆことだから。ウチ、リュウくんと付き合うから。よろしくね。」
ウチはそう言う彼を置いて、校舎裏から立ち去る。
「おい!!、裸の写真拡散したいいのかよ!?」
「できるもんならやってなよ」
と、余裕の笑み。
勝ったな。
さてと…今日はどんな激しいプレイかなぁ〜
ウチは思いながらも帰った。
なんか象形文字を打ったのに使えないって言われた
あとしばらく休載します。