全部話を盛っていくタイプのルームメイト
日本で一番高い山は?
そう、富士山である。
「ーーそれで、富士山の山頂で食べた弁当が人生で一番美味かったんだよなぁ」
聞き耳を立てていたのか、俺と親友の会話に反応したのは、隣の席のルームメイト。別に友達って訳でもない。
「あら、随分と残念な人生ね」
「なんだって?」
長い髪を耳にかけ、偉そうにフフンッと机に肘をついてこちらを見ている。
そんな仕草が気になる年頃の俺も、その言葉には少々イラッとくる。
「富士山から見える景色なんてたかが知れているわ」
「な、なんだって?」
彼女は人差し指を下に向け、言葉を続ける。
「私なら、観覧車ね。観覧車の天辺から蟻のような下々を眺めながら食べるお弁当が至高よ。週に一回はやっていますのよ」
観覧車で弁当を食べるタイプ!?
飲食禁止だろ!
聞かなかったことにしよう。
「ところで、お前最近朝練サボってんだろ? ジョギングくらい付き合えよ」
苦笑いをする親友に対し、またしても遮ってくるのは、隣の席のルームメイト。
「あら、トレーニングなのにわざわざ非効率なジョギングを?」
冷や汗をかきながら横目で見る。
「私なら、プールよ。プールと言っても泳ぐのではなく走るんですの。短期間で効果の出るアクアジョグは貴方にもお似合いよ? 私は週に二回はこなしていますわ」
ランナーかよ!?
聞かなかったことにしよう。
「……話は変わるけど。この間、散歩してたらマンションのベランダから紙飛行機が飛んできてな? なんとなく開いてみたら中には暗号が書かれていたんだよ」
「あら、その暗号なら我が家の執事『ジョバンニュ』が一晩で解いて、監禁された人も解放済みですわ。週に三回は解放していますのよ」
おかしい!
なんか会話がおかしい!
「っつかさっきからなんで俺らの会話に入ってくるんだ?」
すると隣の席のルームメイトは、なぜか頬を赤らめて目線を逸らす。
「……卒業まであと89日ですのよ? 日めくりカレンダーも残り僅か。私、貴方ともっとお話をしたくて」
隣の席のルームメイトはお嬢様。
こんなパンピーな俺と何を話したいって?
「ーーですので、今日から貴方は私の婚約者にします。週に四回で」
「寝言は寝て言え!」
読んでいただき感謝感激雨降らないで晴れて欲しいです!
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