家族の危機っ?!
音を立てないように気をつける。まだ確信は得られていない。いつもより早くに終わったスイミングの習い事を終えて夕方、茜空を背に玄関を開けたカルボッナラには、そこが自分の家だとなんとなく思えなかった。何かが違う。差し込んだ暖かい光は、人生の最後を祝福するプレゼントにも見える。うっすらとした不安を抱えてゆっくりと進む。「お母さーん」いつもより小さい真剣な声で呼びかける。「お姉ちゃーん」次はもう少し大きな声で。トイレをすぎてリビングの戸を開けキッチンでいつものように手を洗う。ってあれ?感触がおかしいな。カルボッナラは気づく。見て見ぬ振りはできない。血だ。蛇口を握った手に少量の血がベッチョリとついている。暖かい光は無機質にも血を照らす。殺人鬼だ!この家に殺人鬼が忍び込んだんだ!恐怖で視界は狭くなる。玄関の扉に一直線に向かって走り出す。荷物は放り投げて慌てて外に飛び出した。
「あれー、カルボッナラもう帰ってたんだー」
「すまんな!もう少し遅いと思ってたんだが」
「カルボッナラったら、元気よく飛び出してきてどうしたの?」
母も父も姉も出かけていただけだった。じゃあ手についたこれは?よーく見てみるとただのケチャップだ。あっ!。そういえば横に作りかけのオムライスがあったのを思い出した。
暖かい光は僕の背中を讃えている。困難を乗り切ったご褒美には大好きなオムライス!