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悠久、空が結ぶ。  作者: むい
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揺れる水面と思い

「ここなら、止むまで待てそうですね」

 パラパラと小雨が振るなか公園内を走り続け見つけた東屋の中に入った悠。体についた雨水を落とそうとバサバサと髪を振っていた時、右手をグイグイと後ろに引っ張られた

「あの……」

 声に驚いて振り向くと、悠に手を握られたままで、びしょ濡れの女性が立っていた

「あっ、すみません!」

「いえいえ」

 慌てて手を離し謝ると女性がフフッと笑い、服をバサバサと揺らして服や体についた雨水を落としはじめた。その様子を見ないように背を向け悠も服についた雨水を拭き払う

「風邪、引いちゃいそうだね」

 一通り雨水を払ったのか、東屋にあった長椅子に座りながら話しかける。その言葉を聞きながら悠もテーブル向かいにあった長椅子に座り、まだ雨が降り続ける空を見上げた

「そうだ、雨が止んだら、傘を取りに僕の家に来ますか?……」

 そう聞きながら隣の長椅子に座る女性に問いかけると、頬についた長い髪を取ろうとしていた

「あの……」

「はい、なんですか?」

「後で僕の家に傘を取りに……」

 頬についた髪を取り終え、ふぅ。とため息をつきながら聞き返されて、悠が恐る恐る聞き直すと、女性がうーんと悩んだ様子で空を見上げた

「そうですね、あの傘は悠さんの家にあるんですよね」

 そう言うと、驚いた顔で女性を見る。視線を感じた女性も悠の顔を見て今度はクスクスと笑う

「あれ?名前教えましたっけ?」

「ええ。君の名前、教えてくれましたよ」

「いつ、ですか?」

「教えない」

 手のひらに顔を乗せテーブルに肘を置き悠に返事をする。悠はそれを聞いて頭を搔き、いつ教えたのかを思い出す。その様子を見ていた女性がふと見上げてみると、すぐには止まないと思っていた雨がいつの間にか止んでいた

「雨がちょっと止んだみたいだし、傘は君とまた待ち合わせするために、今日は止めとこっか」

 そう言うと長椅子から立ち上がり東屋から少し出て悠の方に振り返る。少し濡れた長い髪がはらりと揺れてた

「えっ、はい……。次でもいいなら、それでも」

「よかった。じゃあ、またね」

 手を振り、わざと水溜を踏みバシャバシャと水を跳ねて走り去っていった。その後ろ姿をボーッと見ていた悠。ぎゅっと右手をつかんで、また雨が降りそうな空を見上げた

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