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悠久、空が結ぶ。  作者: むい
6/7

忘れ物を届けに

「もう、会えないのか……」

 傘を拾って数日、まだ返せず部屋の隅っこに置かれた傘を見て悠が、はぁ。とため息をつく。学校が休みで用事もなく、スマホを触りつつゴロゴロと過ごしている。特にスマホを触る用事もなくなり、ふと天気予報と窓を見て、またはぁ。とため息をついた

「やっぱり雨の日しか会えないのか」

 ガバッと勢いをつけ体を起こす。足取り重く部屋を出て階段を下ると、キッチンの方から良い匂いがしてきた

「やっと起きたのね」

 ボサボサの髪のままリビングに来た悠の姿を見た母親がため息混じりに言うのをアクビをしながら横目で見る。テーブルに並ぶ、お昼ご飯を見て椅子に座ると、その向かいに母親も座り、珈琲をコップに注いだ

「そういえば悠、怜くんに傘をいつになったら返すの?」

「……近々」

「近々って、毎日のように学校出会うんだから、さっさと返しなさいよ。暇なら今日でも返してきたら?」

 ご飯を食べながら返事代わりに頷くと、母親が悠の前に珈琲を入れたコップを置いて、テレビをつけた


「あら、お洗濯ものどうしよう……」

 母親がテレビを見て困ったように呟く。悠もテレビを見ると、先ほどスマホで見た天気予報とは違い、これから雨が降るという予報が出ていた

「ちょっと出てくる」

 食べ終えたお皿を片付けてすぐ玄関に行った悠。パタパタと聞こえた足音に、母親がリビングの入り口から過ごしていると顔を出して靴を履いている悠に声をかけた

「出かけるって、ちょっと傘は?」

 そう聞いたと同時に玄関の扉を開け出ていった。扉が閉まる途中、手ぶらで出たのを見て呆れたようにため息をついた







「……なんか、ちょっと太ったか?」

 家から出て行く所が特に無かった悠。なんとなく来た公園で出会った子猫と椅子に座り戯れる。グルグルと喉をならす子猫の背中やお腹を撫でて、時々指を甘噛されつつ遊んでいると、子猫が突然悠の肩に乗り後ろに向かってピョンと飛んだ

「この子が成長したって思ってくれると嬉しいな」

 突然聞こえた声に驚き振り向くと、長椅子の後ろに、さっきまで遊んでいた子猫を抱く女性が立っていた

「私がおやつをあげすぎた訳じゃないよ、子猫はすぐ大きくなるからね」

 そう言いながら子猫を撫でていると、突然手から離れ去っていった

「行っちゃった……」

 離れていく子猫の後ろ姿を見てしょんぼりしていると、椅子に座っていた悠が立ち上がり椅子の周りをあたふたと何か探しはじめた

「あ、あの……。すみません、傘を家に忘れてたみたいです」

 悠が頭を下げ謝ると、女性が首をかしげた。二人の間に少し沈黙が流れ、悠が恐る恐る顔を上げた時、頭にポツリと雨粒がついた。女性の手のひらにも雨粒がついて、空を見上げている

「濡れますよ、早く雨宿りを……」

「えっ、ちょっと……」

 悠に手をグイッと引っ張られ戸惑う女性。その間にも悠が手を引っ張り雨宿り先を探すため、パシャと水が跳ねる音をたてながら走り出した

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