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悠久、空が結ぶ。  作者: むい
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すれ違いの傘

「ただいま」

 テンション低く玄関の扉の開けた悠。声と扉が開いた音を聴いた母親がキッチンの出入り口から少し顔を出した

「悠、おかえりなさい……って、ちょっと」

 部屋に行こうとしていた悠を見て、慌てて呼び止め悠の右手の方を指差すと、悠が足を止め少し首をかしげながら指を指された方を見た

「傘は玄関に置かないとダメでしょ?」

「これはえっと……。これ怜から借りたやつだから。忘れると困るから今日は部屋に置いとく」

「借りたって今日、雨降ったの?」

「いや、降ってない。ただ借りただけ」

「降ってもないのに借りたの?」

 悠の返事に母親が不思議そうに聞きながら呆れた顔をする。その顔を一瞬見た後、部屋がある二階へと階段を上りはじめた

「もうすぐご飯だからね」

 後ろから聞こえてくる声に振り返らず頷くと、部屋に入った。バタンと部屋の扉が閉まる音が聞こえると母親がはぁ。と一つため息をついて、夕御飯の調理中だったキッチンへと戻っていった


「夢で会えたら返せるかな」

 部屋に入ってすぐ傘を見つめ一人呟く。鞄を床に投げ、窓際に傘をかけて置きベッドに勢いよく寝っ転がると窓から見える空を見た

「少し雲の流れが早い気がするな」

 ボーッと見ながら一人言を呟いていると、すぐに睡魔が襲い、いつの間にか眠ってしまった





「どうしよう……。どこに落としたの?」

 その頃、悠が傘を拾った公園では、女性が一人ガサガサと草むらの音をたてて傘を探していた

「あの子猫が遊んでどこか持っていったのかな……」

 そう呟いて近くにあったベンチに座って一息ついた。ふと空を見上げてみると、さっきよりも雲が多くなっていた

「晴れているけど、雨降るかなぁ……」

 少し流れが速い雲の動きにまた一人呟いていると、隣でにゃあ。とか細い鳴き声が聞こえてきた

「ねぇ君、私の傘どこにいったか知らない?」

 指の先をクンクンと匂い嗅ぐ子猫をつかんで問いかける。子猫は返事をする代わりに指をカジカジとかじって遊ぶ。前より少し痛くなった甘噛みを止めさせようと少し指を離した時、親指にポツリと水が当たり、空を見上げると顔にポツポツと雨水が当たった

「君も濡れちゃうね。今は傘を探すのを諦めて、一緒にどこかで雨宿りしよっか」

 そう言うと、子猫が濡れないようにぎゅっと抱きしめ段々と強くなっていく雨から逃げるように公園を後にした

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